WORKING MAN 後編
WORKING MAN
後編
北区、西、中央、東区の見回りが終わり今度は南区の港にやってきた。
以前、来たときと同じくウミネコたちが空中で鳴き声をあげている。
船もきていないようで相変わらず水夫の姿も見えない。
「いつきても、人の少ないところだなぁ。船がくればかわるんだろうけど」
とりあえず、船着場から倉庫、灯台のあたりを一回りする。
「この間のようなハプニングはないみたいだな」
キーシャと初めて会ったときのことを思い出す。
念のためもう一回りほどするがやはりなにも変わったことはない。
「よし、大丈夫みたいだな。そろそろ次にいくか」
ここでの巡回を打ち切り次に向かう。
港から出て、街を西に向かって歩いていく。
ここの通りは道の両端に木が植えられてなかなかいい感じになっている。
その木々が、ときおり風で揺すられカサカサと声をあげる。
「いいな、この通り」
その木々の創り出す影や、ざわめきがすっかり気に入った様子で思わず笑みがこぼれる。
その木と木との間をゆっくりと歩いて通り抜けていく。しばらく、歩くと学校らしき建物が見えてきた。
「ここが、キーシャの通ってる学校かな?」
建物を軽く見る。学校というだけあってかなり大きく、そして立派な建物だった。
塀のところにプレートがあり、それには『オルタネイト学園』と書いてあった。
その隣には学生寮と思われる建物もあった。
「こっちは寮かな?さすがに、中に入るわけにもいかないよなぁ」
回りをウロチョロしていると怪しい人間と思われるので軽く回りを見渡すだけでその場を離れる。
学園と寮を見終わるとさらに西、自警団のある方へと戻っていく。
戻る途中、ベンチが何気なく設置されていたのでそこに座り少し休憩を取ることにした。
「ふぅ〜」
大きく息を吐き、また吸い込む。
「隊長のいった通り、この街は広いなぁ。出てきたときはまだ太陽は東のほうだったのに、
もう、真上から少し西にいっちゃってるよ」
手で影をつくり太陽を眺める。
「相変わらずいい天気だなぁ。これだけ天気がいいと眠くなってくるなぁ・・・・・」
先ほど食べた昼食と陽気のせいでまぶたが重くなってくるのを感じる。
「!。おっと、寝ちゃまずいな。まだ仕事中だ」
頬を2.3回叩き、目を覚まさせる。
何もしないでいると寝てしまいそうなのでしばらく周囲の人達を眺めることにした。
よく見るといろいろな人達が自分の目の前を行き来している。
仕事なのだろうか?せわしなく、小走りに通りすぎていく人。散歩なのか、ゆっくりと回りを眺めながら歩いている人。
他にもさまざまな人を見つけることが出来た。また、こうして注意深く見ているとエルフの姿も見える。
いままでは、女性のエルフとしか接していなかったルーシアだが当然、男性のエルフもいた。
「ホント、いろいろな人がいるなぁ。この人達と街の平和を守るのが俺の仕事か・・・・・・。
休んでる場合じゃないかな?」
改めて、自分の仕事の重要さに気づきベンチから腰を上げると自警団のほうへと帰っていく。
ガチャリ。
見回りを終えて自警団に戻ってきたルーシア。
受け付けには数人の住人がなにやら受付嬢と話している。
自分にはあまり、関係のないことなのでその横を通ると部隊室とは反対側の通路、すなわち、訓練場のあるほうへと向かう。
訓練場のとびらの前まで来ると中からは剣撃の響きが聞こえてくる。
皆、気合をいれて訓練しているのが音からわかる。
ひとつ、深呼吸をしてから訓練場の観音開きの扉を開ける。
部屋に入る前の剣撃の響き通りに自警団員が汗を流していた。
入ってきたルーシアにハンスが気づく。
「おお、来たか、ルーシア。早速で悪いがカイルの相手をしてやってくれ。
いま、あいつ余りなんだ」
そういって場内の椅子に腰掛けているカイルを指差す。
「はい、わかりました」
承諾すると模擬刀を取にいく。が、ハンスがそれを止める。
「ちょっと待て。お前の摸擬刀はこれだ」
そういってどこから出したのか一本の剣を差し出す。
それを見てルーシアは驚いた。
いつの間に作ったのか、それは自分の使っている剣となんら、かわりがなかった。
違いといえば当然、刀身が丸みを帯びていることだろう。
「驚いたか?お前の入団と同時に街の刀鍛冶に速攻で作らせたんだ」
驚いているルーシアの表情がおかしかったのか、軽く口元をおさえ笑っている。
「おっと、すまん」
笑ったのが悪いと思ったのだろう、謝る。
「なぜ、同じのを?」
「決ってるだろう。自分の剣で訓練している感じを出すためだよ。
摸擬刀と自分の剣とでは当然、刀身の長さや柄の握り具合などが変わってくるからな」
「なるほど」
渡された摸擬刀を握り具合を確かめる。
確かにそれは自分の剣とほとんど違いがなかった。
「よ〜し、そんじゃカイルの相手を頼むぜ」
ルーシアの背中をポンと叩くとまた訓練場の中心に帰っていった。
「さてと、俺も訓練するかぁ」
軽く伸びをするとベンチに座っているカイルに話しかける。
「よかったら相手をしてくれますか?」
「ああ、いいぜ」
そういってベンチから立ちあがると訓練場に向かっていく。
ルーシアもその後ろに続く。
以前、ラッツと試合をしたときと同様に互いの剣を中央で交差させ、構える。
先に動いたのはルーシア。
素早く、縦、横と剣を振るう。
カイルはその斬撃すべてを剣で受け止める。
これ以上、攻撃しても仕方ないと思ったのかルーシアは一瞬緩める。
その隙をついて今度はカイルが攻撃を仕掛けてる。
一撃一撃が非常に重く受け止めるたびに手に痺れが走る。
(クッ!なんて力だ。このままじゃ剣を落としちまう)
なんとか、受け止めながら打開策を考える。
(かわすとしてもこんなに連続して剣を振られちゃかわしきる自信はない。
かといってこのまま受け止めてもいずれは剣は落としちまう。
こうなりゃ、いちかばちかだ)
次のカイルの攻撃に合わせ、受け止めるのではなく自分からも剣をぶつけにいく。
ガキィィィィン!!
すさまじい大音響が訓練場内に響き渡る。
しばらくの場内の沈黙の後、2本の剣がクルクルと空中を舞い、地面に突き刺さった。
ルーシアとカイルのふたりは両手を押さえている。
恐らく凄まじい衝撃で痺れたのだろう。
「おいおい、無茶するなぁ」
ハンスとラッツの二人が両者の側までやってくる。
「だけど、いい度胸してるな。カイルの馬鹿力にまっこうから勝負するなんて」
そうハンスがいう。
「いや、あのままじゃいずれ剣を落として負けてただろうし、それならいちかばちかでやってやる、って感じでしたけどね」
まだ、痺れている手を押さえながらルーシアが答える。
「見てくださいよ、隊長」
ラッツが突き刺さった剣を抜いて彼らのもとにやってきた。
「うお!?これは・・・・・」
その剣を見てハンスは驚きの声をあげる。
普通の剣より頑丈に作ってある摸擬刀にヒビが入っていたからだ。
もしこれが真剣ならあっさりと折れていただろう。
「いやはや、信じられないな。摸擬刀にヒビが入るなんて」
2本の剣を見比べる。まだ、信じられないという顔をしている。
「とにかく、これじゃ稽古にならんな。この摸擬刀は修理に出しておくから、とりあえず予備で稽古を続けてくれ」
2本の摸擬刀を片付けるとハンスがそう二人に告げる。
「はい」
そう返事をすると二人は稽古の続きをする。
その二人の稽古の様子を見て、
「あいつ、とんでもないヤツだな」
と漏らした。
「え?なにかいいました?」
「いや、なんでもない。ほれ、俺たちも稽古の続きをやるぞ」
「あっ、はい」
その後、ルーシア、カイル、ハンス、ラッツは剣の稽古に汗を流した。
後書き
オリジナル小説第10話『WORKING MAN 後編』の掲載完了。
WORKING MANといってもこの話はなんか剣の稽古がメインになってしまいました。
前編、後編にわけた結果、仕事の話だけにすると7Kまでいってくれないんで半ば強引に文をつくってしまいました。
結果的にうまくまとまったとは思うんですが、いかがでしょう?