遭遇
チュンチュン。
夜明けとともに小鳥たちのさえずる声が街中に響き渡る。
部屋のベッドで寝ているルーシアもさえずりと窓から差し込む朝日で目が覚める。
「おっ、もう朝か・・・・」
寝ぼけ眼をこすりながらベッドから出る。
服を替え、顔を洗うために部屋を出た。
ルーシアの借りている小屋とアクアの住んでいる家とでは徒歩1分とかからない距離である。
軽く扉をノックしてから玄関の扉を開ける。
中に入ると朝食を作っているらしくこうばしい、いい匂いがルーシアの胃を刺激する。
「おはよう、アクア」
台所のほうにそうこえをかける。すると奥から、
「あっ、おはよう、ルーシア」
と返ってきた。
その返事を確認すると椅子に腰掛ける。
「お待たせ〜。はい、どうぞ」
朝食が完成したらしく、お盆に乗っている料理をルーシアの前に置く。
「う〜ん、いい匂いだ。今日もうまそうだな」
「ふふ」
軽く微笑むと自分も椅子に座って朝食を取り始める。
「今日ってさ、ルーシア仕事休みでしょ?」
ルーシアが自警団に入団してからそろそろ一週間になる。
街の警備を主な仕事にしているので、街の住人達にも顔と名前を覚えられてきた。
「うん、今日は非番だけど。それがどうかした?」
「ううん、ただ、薬草やハーブが切れちゃったから取りに行くのに付き合ってもらおうかなって」
「そっか、いいよ。一緒にいってあげるよ」
その言葉を聞いたとたんに顔が明るくなる。
「ホント!ありがとう。じゃ、早速いこうよ」
「え!?だって、まだ朝飯も食べ終わってないよ」
と、自分の皿を指差す。
「あ、そうだね。エヘヘ、ゴメン」
ということで、二人は朝食を終えると街の北にある森、ジュンケの森へとやってきた。
ここには、疲労回復を初め、毒消しや精神安定などの効能のある薬草、ハーブがたくさん群生している。
また、魔物も滅多に出てこないので水晶の森亭などて使われている薬草、ハーブ類はすべてここから取られている。
「ふんふんふ〜ん♪」
アクアは鼻歌まじりでかなり御機嫌のようだ。
「どうしたの?アクア?」
そんな彼女の態度がわからないらしく思わず聞いてしまう。
「え、だってルーシアとお出かけなんて久しぶりだから、嬉しくて」
彼のほうを振り返り相変わらずの笑顔で答える。
(そっか。ここんとこ仕事が忙しかったからなぁ。俺も、アクアも)
と、今週を振り返る。
ルーシアのほうは一週間ずっと街のパトロールと剣の稽古。アクアも当然店で働きっぱなしだった。
そんな仕事からの解放感も手伝って二人はいつも以上にテンションは上がってる。
「よしっと。これくらいかなぁ?」
薬草、ハーブ類をかご一杯に詰め込んでルーシアに見せる。
かなり量が多くビックリしたが、
「うん、こんもんじゃないかな?」
と答えておく。
ポツポツ
ふいにルーシアは背中に冷たいものを感じた。
上のほうを見上げるといつのまにか雲が空を覆い雨を降らさんとしていた。
「いっけね!アクア、雨が降ってきた。どっかで雨宿りしないとびしょ濡れになるぞ」
「ええ!?ホントに」
ルーシアもアクアも二人して雨宿りができそうなところを探す。
探すこと数分でちょうどいい洞窟が見つかり、二人はそこに飛び込んだ。
まだ、本降りではなかったのでびしょ濡れとまではいかなかったが、多少は降られたようだった。
「ふぅ〜。しかし、参ったな。どしゃ降りになってきたぞ」
洞窟の外を見る。
「ホントだ。しょうがないよ。しばらくここで雨宿りしよ」
洞窟の中は結構、広くできている。また、奥にもまだ先が続いている。
「・・・・・・・グルルル・・・・・・・・ルルルル・・・・」
しばらく無音であった洞窟内になにかのうめき声が響いてきた。
「なに?いまの?」
アクアが心配そうな顔で少しルーシアに身を寄せる。
ルーシアにもその声は聞こえ、腰の剣に手を伸ばす。
「ちょっと見てくるからさ。アクアはここにいて」
「うん、気をつけてね」
アクアに見送られるとルーシアは単身、洞窟の奥へと向かっていった。
分かれ道などは一切なく、ずっと一本道。
歩くこと数十分ほどで洞窟の最深部までたどり着くことが出来た。
そこは広いホールのようになっており、目の前にひときわ高い段差があった。
「なんだ、なにもいないじゃないか。気のせいだったのかな?」
と、警戒を緩め柄に置いておいた手を離す。
するとそれを合図にしたかのごとく段差の上で何かがうごめいた。
すぐに柄に手を伸ばしソレを凝視する。
「何用かな?若いの」
そしてソレは喋り出した。
「あんた、何者だ?」
ルーシアの声が洞窟の最深部に響き渡る。
「礼儀を知らんな。人の事を尋ねる前に自分を名乗ったらどうだ?」
「わかった。俺の名はルーシア。オルタネイトの街で暮らしてる」
「ハッハッハッ。正直なやつだ。いいだろう、わしの名はルドラ。この洞窟で隠居しているドラゴンよ」
ドラゴンという名を聞き、素早く剣を抜き、構える。
「おいおい、警戒するでない。わしはお前さんを殺す気など毛頭ないわ」
「それを信じると思うのか?」
声に威圧感を込めて話す。
「ふむ、もっともな話だな。ならばそのままでもいい。わしの話でも聞かんか?」
しばらくどうするか考える。
(俺だけでドラゴンを倒すのは無理だな。とりあえず言うことをきいたほうがよさそうかな?)
「わかった、聞いてやる」
「それでは、なにを話すかの?・・・・・よし、お前さんの警戒を解く意味でわしが人を喰らわくなったわけをはなしてやろう」
そしてドラゴン・ルドラは語り出した。
「わしもその昔はたくさんの人間を殺し、喰らったものだ。だがな、そんなことを繰り返しているうちに・・・」
「ルーシア〜。どこ〜」
ルドラの話の途中で洞窟後方からアクアの声が響いてきた。
「なんだ、連れがいたのか?」
「ああ、ちょっと待っててくれ」
すぐにアクアのいるほうへと戻っていく。
「あっ!ルーシア!」
ルーシアの姿を確認すると駆け寄ってきた。
「アクア、なんできちゃったの?」
「なんでっていわれても。待っててもルーシア、帰ってこないし。心細かったから」
「そっか。んじゃ、しょうがない。一緒にヤツの話でも聞くか」
「ヤツって?」
「ああ、なんでもこの洞窟で隠居しているドラゴンだそうだ」
ドラゴンと聞くと同時に恐怖の表情がアクアに浮かび上がる。
「ウソでしょ!なんでこんなところにドラゴンが!?」
まるでアルスを追い払うかのような強い口調でルーシアにいう。
「いや、そんなこと俺にいわれても知らないよ。これから本人に聞くところだったんだ」
「本人っていったって・・・・食べられちゃうんじゃ・・・」
かなり不安そうな顔をしているアクア。
「ドラゴン自身には人を食べる気はないらしいけどね」
「まさか、信じてるの?」
「それはわからないさ。まっ、なんでもかんでも悪と決めちゃなんだからね」
「わかった、あたしも一緒にいく」
不安な表情と恐怖はどこにいったのか、今度は強い決意の表情が読み取れる。
「でも・・・・・・・」
アクアの顔を見る。
その表情は強く、断ってもついてきそうな感じだ。
「わかった」
半分、あきらめた感じでそう言う。
「ありがとう」
「待たせたな、ルドラ」
「いやなに、こちらかね?お連れは?」
そういってアクアをチラリと見る。
瞬間、アクアの体がこわばる。
「安心しなさい、お嬢さん。わしは人を食べるつもりはないからの」
「・・・・そうですか・・」
少しは安心したのか身体からある程度の力が抜ける。
「こちらのお嬢さんにも自己紹介をしておくかの。わしの名はルドラ。よろしく」
「あっ、はい。私はアクアといいます」
あまりにも礼儀正しく自己紹介されてしまったので反射的に挨拶を返してしまう。
「自己紹介はそんなもんでいいだろう。話の続きを」
ルーシアがせかす。
「わかっておる。それでは話してやるか」
改めてドラゴン・ルドラは自分のことを話し出した。
後書き
大変長らくお待たせしました。オリジナル小説第11話『遭遇』の掲載完了。
またまた新キャラ登場。今度はドラゴンですね。なんか、もうなんでもありって感じになってきちゃいました。
次の話でこのルドラの過去の話をチョイチョイと書いていきたいと思っております。
新キャラ出したはいいけど、どう話に絡ませるか実は考えなかったりします。どうしよう?
ちなみに終わり方はちょっと次回に引っ張る形にしてみました。
前のを読んでみると一話完結っぽいのが多かったから。