醜悪なる森の妖精
中編
洞窟の外で戦っているルーシアたちを残し、ハンス、カイル、ラッツを先頭に一足先に洞窟に潜入する。
中は一本の通路となっていて横幅は3人が並ぶのがやっとだ。
両壁にはろうそくが規則正しく並べられ炎をゆらゆらと灯している。
「静かですね」
剣を正面に構え、警戒した態勢でハンスに尋ねるラッツ。
「ああ、そうだな。だが警戒は怠るな。どこから出てくるか見当もつかない」
ハンスやカイルも各々の武器を構え、ゆっくりと進んでいく。
「シャァァァアア!!」
しばらく歩くと頭上からハングドマンの爪がハンスに向かって振り下ろされる。
それをなんなくかわすと、胴体と首を切り離した。
そのままドサリと天井から落ちる。
(さすがに強いな。奇襲をものともしてない)
それを見ていたラッツが思う。
さらに歩くこと数十分。奥に進めば進むほどゴブリンやハングドマンとの遭遇率が高くなってくる。
だんだんとやつらの巣に近づいているのだろう。
正面に立ちふさがったゴブリンを始末するとまた両の足を進める。
が、後ろに気配を感じ、振り返ってみると数十匹のゴブリンが剣や棍棒を持ち、こちらの様子をうかがっている。
さらに前方にも同様の数のゴブリンがこちらを観察している。
「ちょっと隊長。20匹なんて数じゃないですよ。
外と合わせると余裕で40はいますよ」
全員が背中合わせに立ち、壁をつくる。
背後を取られないためだ。
「ああ、そうみたいだな」
囲まれているというのにハンスは冷静そのものだ。
カイルも黙って剣を構える。
両者のにらみ合いを先に崩したのはゴブリン。
前後のゴブリンが一斉にハンスたちに襲いかかる。
一撃を剣で受け止めそれを受け流し体勢を崩したところを斬りつける。
ハンスの得意とするパターンだ。
ラッツは相手に攻撃される前に自分から攻撃を加えていく。
剣を巧みに操り相手に攻撃の隙を与えずに、徐々に体力を削いでいく。
一方のカイルはその体格の通り、一撃一撃に全力を込め、相手を粉砕するかのごとく剣を振るう。
その一撃はとてもじゃないがゴブリンにはガードできる代物ではないらしく、防いだ剣を押し通し、
そのまま剣と腕を切り落とす。
他のメンバーも奮戦している。
ゴブリン程度には負けるはずもない者たちばかりだ。
何匹かのハングドマンも襲いかかってくるがそれらは彼らの視界に入ると同時に絶命する。
「クソ!!切りがないですよ!突破しますか!?」
正面のゴブリンたちを相手にしながらラッツがハンスに叫ぶ。
「そうしたいのは山々だが、いかんせん相手が多すぎる。レムリアたちが応援にきてくれれば別だがな」
「ルーシア、ちょっと背中を見せて」
アクアネックレスが回りのゴブリンを抑えている間、レムリアがそう言う。
「ええ」
クルリとレムリアの方を向く。
「思ったよりは深くはないみたいね。アクアネックレス」
背中の傷を見ると精霊をこちらに呼ぶ。
その呼びかけに応じ、アクアネックレスがレムリアの側までくる。
「どうするんですか?」
「ジッとしてればわかるわよ。・・・・・・お願いね」
アクアネックレスにひとつの命令をする。
すると精霊はルーシアの傷に手を触れ、その回りを水で囲み始めた。
その行動を不気味に思い、思わず身をよじろうとするがレムリアに止められる。
しばらくしていると背中の痛みが無くなってきた。
「・・・・・これは・・・?」
レムリアに解答を求める。
「簡単な治癒魔法よ。完治するわけじゃないからこの任務が終わったらちゃんと病院にいくのよ」
それだけいうとアクアネックレスを従え、皆の指揮を取り始める。
「治癒魔法か・・・・・」
一言そう呟くと自分も戦闘の枠に入る。
外での戦闘はアクアネックレスの参戦で大きく自警団側に傾いた。
レムリアが命令をひとつ出すたびにゴブリンの命の灯が消えていく。
ルーシアやジャロムを始めとした団員達も奮戦し、ハングドマンやゴブリンを倒していく。
どれくらい戦いつづけただろうか?あたりにはゴブリンたちの死体が異臭を放っている。
自警団側も当然、無傷というわけにもいかず軽傷から重傷を負うものとさまざまである。
それらの怪我人はアクアネックレスによって応急手当が施される。
「だいたい片付いたかな?」
ジャロムが残り少なくなっている矢を確かめながら呟く。
「ええ、そうみたいね。それじゃあ、動けるものはすぐに隊長たちの応援に向かうわよ」
そういって洞窟の中に入っていく。
ルーシア、ジャロムを始め他数名の団員も中に突入する。
しばらく洞窟内を進んでいくと剣撃の響きと人の叫ぶ声、ゴブリンの断末魔の声が聞こえてきた。
「間違いないわ、きっと隊長たちね。すぐに援護に向かうわよ」
一足先にアクアネックレスを向かわせるとレムリアを先頭にして走る。
「お?あれはアクアネックレスだ!」
入り口のほうから近づいてくる水色の精霊を見てハンスが叫ぶ。
「ということは外はあらかた片付いたわけですね!」
「らしいな、いいタイミングできてくれた!」
アクアネックレスが水槍をゴブリン数匹にめがけ放つ。
それは前と同様にゴブリンの心臓を軽々と貫く。
それからしばらくしてレムリアたちが追いついた。
「グッドタイミングだ!レムリア!」
正面のゴブリンを切り払いレムリアに叫ぶ。
「遅れてすいません。予想以上に敵が多かったものですから」
「そんなのは後で聞く!とりあえずこいつらを全部倒すぞ!」
「了解!!」
それはあっというまだった。
アクアネックレスにレムリア、ジャロム、ルーシアが加わったおかげですぐに片がつく。
「これで、全部でしょうか?」
剣にこびりついた血を拭い、ラッツが尋ねる。
「わからん。レムリア、アクアネックレスに奥を探索させてくれ。
確か20mぐらいまで移動できたよな?」
「ええ」
そう答えるとアクアネックレスを奥に向かわせる。
「それじゃ、アクアネックレスが戻るまで休憩にしよう」
剣を鞘に収めると地面に腰を下ろす。
他のメンバーもそれに習う。
程なくしてアクアネックレスが戻ってきた。
「どうだ?レムリア?」
ハンスがレムリアに奥の状況を聞く。
「ええ、ちょっと待ってください」
また彼女は耳慣れない言葉でアクアネックレスと会話する。
どうやらそれは精霊語らしい。精霊を操るには生まれながらの才能がいる。
彼女はその才能を持っていて精霊語を話すことができ、そしてウンディーネを常に支配化に置いている。
「どうやら、まだ奥にいるみたいですね。
数もかなりのようです。」
アクアネックレスの持ってきた情報を隊に伝える。
「そうか、わかった。数分の休憩の後、動けるものは出発するぞ」
地面から立ちあがりハンスが部隊にそう告げた。
後書き
オリジナル小説第16話『醜悪なる森の妖精 中編』掲載完了。
なんとか中編まで書き上げることに成功しました。
自警団キャラは日常書いてると出番がないに等しいからこのバトル系の話で思う存分活躍してもらおうと書いています。
しっかりと活躍してくれているかどうかはわかりませんが、頑張って書いていきたいと思っています。
今回が中編なんでこの話はあと一話だけ続きます。
そろそろ書きあがるんでひょっとしたら今週中に掲載があるかもしれません。
でわ、また次回の後書きでお会いしましょう。