醜悪なる森の妖精
後編
「よし、そろそろいくぞ」
15分程の休憩のあと、ハンスが立ちあがると隊にそう告げる。
「はい」
怪我を負ってないものや軽傷の者たちがハンスに習い立ちあがる。
重傷の者は連れていっても大した戦力になりそうもないのでアクアネックレスで治療しここに置いていくことにする。
20数名のうち動けるのは10名ほど。
この戦力で戦うのはかなり無理がありそうだ。
だがここで退いてしまうとゴブリンたちが街に攻めこんでくるという危険性がある。
ハンスとしても不本意なのだろうがこのまま攻める命令を下した。
洞窟の最深部に入るまでには一匹のゴブリンとも遭遇することはなかった。
最深部で総力戦を仕掛けるつもりなのだろう。
分かれ道のないずっと一本道を歩くこと数十分で最深部に到着する。
当然すぐには踏みこまずに壁際から中の様子をうかがう。
中はかなり広いホールのようになっていて、天井まで5mほどありそうだ。
「岩などの遮蔽物がまったくないからバックを取られないようにすること。
また単独では攻めこむな。必ず2人か3人でチームを組むこと」
ホールの地形を見定め隊員に作戦を告げる。
そしてハンスのを先頭にし一斉にホール内へと突入する。
突然の奇襲にゴブリンたちはひるみ、武器を取って応戦しようとするものや逃げ惑うものなど反応は様々だ。
チャンスとばかりに攻撃体勢を整えないうちにできるかぎり数を減らす。
ゴブリンが体勢を整える頃には数十の死体が地面に転がっていた。
ハンス、カイルが組み次々とゴブリンを倒していく。
テクニックとパワーという両極端な二人だがハンスが体勢を崩させたゴブリンをカイルが止めを刺すという連携プレイで、
どんどん数を減らしていく。
ルーシア、ジャロムも彼らに負けじと戦いを演じている。
ジャロムは矢がすべてなくなってしまったようで腰に携えていた剣で応戦している。
さすがに剣を専門としているわけではないので他の者と比べると見劣りするがゴブリン相手では十分な腕前である。
またルーシアもそんな彼をうまくカバーし負担がかからないようにと頑張っている。
ときおり大きく剣を振りジャロム側のゴブリンに牽制を与える。
そのおかげでジャロムはかなり楽に戦いを進めることができた。
最後はラッツ、レムリア、そしてアクアネックレスだ。
レムリアはもっぱらアクアネックレスに命令を出すことに専念している。
彼女もジャロム同様に矢がすべてなくなっている様子で片手にダガーを握っている。
たが、アクアネックレスが周囲のゴブリンを抑えているのでその出番はないだろう。
アクアネックレスに負けじとラッツも奮戦している。
彼はアクアネックレスが仕留めきれなかったゴブリンに留めを刺している。
どれくらい戦いつづけただろうか。全身にゴブリンの返り血を浴びながらルーシアがそんな事を考える。
ふと回りを見渡してみると最初のほうこそたくさんいたゴブリンの数が半分以上に減っていた。
「いたぞ!あれがボスだ!」
どこからかハンスの声があがる。
反射的にそのほうを見ると一段高くなっている段差の上に他のゴブリンとは明らかに違う容姿の魔物がいた。
全身は緑ではなく赤。身体もゴブリンより一回り大きいだろうか。
まがまがしい赤い瞳がまっすぐにこちらを見ている。
ホブゴブリンだ。
その姿を確認すると同時にルーシアは走り出すが生き残っているゴブリンたちに阻まれる。
それらを薙ぎ倒しなおも進んでいくがやはり行く手を遮られる。
他のメンバーも同様で道を阻むゴブリンを倒しながら進んでいく。
最初のその場にたどり着いたのはハンスだ。
彼は得意の剣技で相手を圧倒していく。
他のメンバーはハンスの邪魔にならないように周りのゴブリンたちを相手にする。
半分以上、切り倒したはずなのだが以前それより減る気配がない。
一体どこからこれだけの数があふれ出てくるのか彼らにはまったくの見当がつかなかった。
ただ、倒しつづければいずれ殲滅できると信じひたすらに剣を振りつづける。
ホブゴブリンをハンスが発見してからどれくらいの時が流れただろう。
5分?いや30分かもしれない。
そんな時間の感覚がなくなってきているところでハンスの叫びがあがる。
「討ち取ったぞ!!」
その声に自警団、ゴブリン側が瞬時にその場を見る。
そこには首と身体が切り離されたホブゴブリンが横たわっていた。
その様子を目の当たりにしたゴブリンは主を失い蜘蛛の子を散らすようにその場から四散する。
「・・・・終わった・・・・・・・?」
ルーシアが小さくそう呟くと同時に糸の切られたマリオネットのように地面にペタンと座り込んでしまった。
他のメンバーは座り込むことはなかったがやはり安堵のため息をもらしている。
カイル、ラッツは剣を鞘に収めハンスのもとへと歩いていく。
ジャロム、レムリアも同様に。
一方のルーシアはすぐに我に帰りその後を追う。
ホブゴブリンのいた高台ではすでに剣をしまったハンスが彼らを出迎える。
「みんなご苦労だった。みんなのおかげでこの洞窟内のゴブリンは退治することができた。
明日は一日休みをやる。ゆっくり休んで体力を回復し、傷を癒してくれ」
ハンスはそう言い終えると高台からみんなの間をすり抜け降りてきた。
そしてそのまま洞窟の出口へと歩いていく。
隊員たちもその後を追っていった。
後書き
オリジナル小説第17話『醜悪なる森の妖精 後編』掲載完了。
今回でバトル系の話は終了となります。
それに伴いひょっとしたら自警団キャラは今後の話に出てこなくなるかもしれません。
いやぁ、難しかったです、この話は。
状況描写がメインになるし、本来なら2話構成だったのが
もうちょっと活躍させたほうがいいかな?
と思ってしまい、急遽3話に予定変更。
そのせいか後編はちょっと短めになってしまいました。
各自警団キャラがどれだけ活躍できたかはわかりませんが、この3話でこのキャラたちを覚えてくれた嬉しいですね。
でわ、また次の後書きで。