失われた記憶
「大丈夫なんですか?」
自分のすぐ近くなのか遠くなのかはわからないが声が聞こえてくる。
「ああ、軽いコブになっているだけだ。」
「そうですか・・・」
また、声が聞こえてくる。だんだんと意識が戻ってきたルーシアは目を開け体を起こす。
とたんに後頭部に激痛が走りたまらず頭を抑える。
「あっ、気がついたんですか。よかったぁ」
声のほうにゆっくりと頭を向けるとそこにはルーシアと同じ位の年齢の女の子が立っていた。
どこかで見たような覚えがあるのだが一向に思い出せない。
その隣には白衣を着た男が立っている。恐らく医者だろう。
「・・・・・ここは?」
まだもうろうとしているが、喉から搾り出すように声を出す。
「私の家です。あなた、オーガーに投げ飛ばされて気絶しちゃって。
それであたしがここまで頑張ってつれてきたんです」
それから少女はアクアと名乗った。
「オーガーに?」
なんのことかよくわからないルーシアはアクアに聞き返す。
「覚えてないんですか?あたしをオーガーから助けてくれたじゃないですか」
「俺が君を・・・・・?」
思い返してみるがなにも思いつかない。
「ねぇ、本当に大丈夫なんですか?」
心配になったのだろうか、アクアがルーシアの顔を覗き込む。
隣にいる医者もなにやら心配げな顔をしている。
「気がついたなら軽く質問でもさせてもらうか」
ふいにアクアの隣にいた医者が喋り出す。
「お前の怪我の事は彼女から聞いた。お前はどこから来た?」
「どこからって・・・・・」
必死に考えるがなにも思い出すことはできない。
それどころか自分の名前以外なにも思いだせないのだ。
「どうした?」
なかなか答えようとしないルーシアを催促する。
「分からない。俺は一体・・・・・」
そこまでいって頭を抱え込む。その様子を見て医者はハッとしたようになる。
「自分の名前はわかるか?」
「ああ、それならわかる。ルーシアだ」
「そうか」
納得したように頷く。一方のアクアはまだ状況が呑み込めていない。
一体なんのことだろう?とルーシアと医者を交互に見やる。
そんなアクアの態度に気づいたのだろう。医者が説明する。
「記憶喪失だ。恐らく木にぶつかったショックだろうな」
「ええ!!」
アクアは驚きの声をあげる。ルーシアも声にこそださないが驚きは隠せないようで表情が変わる。
「お前、金は?」
医者に聞かれてルーシアは自分のであろうバッグの中を見る。
中には携帯用のテントやランプ、そのランプに使う油などが入っているが残念ながら金の類は入っていなかった。
ルーシアは医者の方を見ると首を横に振る。
「そうか、俺のとこの病院はいま一杯でな。お前はこれからどうする?」
「どうするっていわれても・・・・・」
記憶がないのではどうすることもできない。ルーシアは途方に暮れてしまった。
「私の所でよかったら住んでもいいですよ。ちょうど裏にある小屋が開いてますし」
アクアがそう提案する。
「え、でも・・・・」
ルーシアは戸惑うが
「いいんです。助けてもらったのも何かの縁でしょうから」
「・・・・ありがとう」
ルーシアは素直に礼をいう。
「どうやら、話はまとまったみたいだな。俺は帰るぞ」
話がまとまったみたいなので医者が部屋の出口へと歩き出す。と、扉を開ける手を止めルーシアのほうを振り返る。
「俺はこの街で医者をしている、ラムダだ。なにかあったら尋ねてくれ」
自分の名前と病院の場所を告げると部屋を出て行く。
「それじゃあ、小屋に案内しますね。立てますか?」
「ああ、大丈夫」
ゆっくりとベッドから起き上がる。流石に足元がふらつくが時間がたてば元に戻るだろう、とルーシアは考えそのまま歩く。
そばにあったバッグとバスタードソードを手に取りアクアのあとについていく。
歩くこと数秒たらずで小屋に到着した。アクアはポケットから鍵をとりだすと鍵穴に差し込む。
それを回すとガチャリという音とともに扉が開く。
「どうぞ」
部屋に明かりをつけルーシアを招き入れる。
中は結構広くベッドからタンスまで必要なものはほとんど揃っていた。
掃除も行き届いているらしくほこりは見当たらない。
「ここ、好きに使って構いませんから」
部屋の窓を開けると太陽の光が入り込んでくる。
ルーシアはとりあえず荷物を床に置くと手近にある椅子に腰掛けた。
「ルーシアさん、これから街でも案内しましょうか?」
窓を開け終わるとルーシアのほうにクルリと振り向きいった。
「ああ、お願いしようかな。それから敬語はいいよ。それにさんづけもしなくていい」
敬語やさんづけは堅苦しいと思ったのだろう、そうアクアに注文する。彼女はそれに笑顔で答えると
「それじゃあ、ルーシア。街を案内するね」
後書き
さてさて、オリジナル小説の第2話を書きましたがどうでしょうか?
記憶喪失という設定は書いてる途中に思いついていいかな?と思ったので使ってみました。
多分この街にしばらくいつくことになるんでしょうね。
次回はいったいどういう話になるんだろう。筆者にもわからない。