新天地
後編



「私の案内したいところねぇ?」
人差し指をあごにそえて考え始める。
(他に案内するところっていえば、北区くらいだよねぇ。
 でも、あそこも繁華街みたいにゴチャゴチャしてるからなぁ。
 この公園内でも軽く散歩しようかな?)
考えがまとまりあごにそえていた指を離すとルーシアに向き直る。
「案内っていうわけじゃないけど、この公園内を少し歩かない?」
「ああ、それで構わないよ」
ルーシアのその声に笑顔でうなずくと彼の隣までいき、歩き始める。
遊歩道の脇から気持ちのいい潮風が彼らの顔をなでる。
その潮風によって巻き上がる髪の毛を押さえながら笑顔で海をみつめるアクア。
ルーシアもつられて一緒に海を眺める。
「そうそう、ここがこの公園のメインで、海の見える丘よ」
思い出したかのように、この場所の名前を教えてくれる。
「確か、ここって港町っていってたよね?」
海を見ていて思い出したのか不意にアクアに聞く。
「うん、そうだよ。どうかした」
「いや、当然、港ってあるんだろ?」
「うん、もちろんあるよ。他の大陸や街との交易が盛んなの、ここは。
 見にいってみる?」
「いや、いまはいいよ。また今度ね」
「そう」
そのまま、二人は海沿いの遊歩道を歩いていく。
その間にこの公園内などの説明を受けながら。
いろいろと話をしながら遊歩道を歩いていると公園を一周してしまったのか
また、出入り口に戻ってきた。
「あれ、戻ってきちゃったね。これからどうする?」
公園の出入り口近くにあるベンチに腰掛けてアクアが尋ねる。
「そうだなぁ、・・・・・・他にどっかない?」
何も思い浮かばなかったらしく、頭をポリポリとかきながら逆に問い返す。
「はぁ、まっ、まだこの街にきて一日目だからしょうがないけどね。
 もうひとつ小規模の公園があるんだけどいってみる?」
「そうだな、そこしかいくあてがないんならいってみよう」
「うん、わかった。ついてきて、こっちよ」

海の見える丘公園を出ると、もと来た道を戻る。
来るときには気が着かなかったが高級住宅街と繁華街の間にも公園があった。
アクアの案内でその公園に入っていく。
「到着、ここが中央公園だよ」
「ここが?」
思わず疑ってしまうルーシア。
確かに公園といえば公園にも見えるが海の見える丘公園と比べると地味に見えてしまう。
「しょうがないじゃない。ここ、公園とはいっても、フリーマーケットとか
 ちょっとしたコンサートに使われるんだから」
ルーシアの疑問に答える。
「なるほどね」
アクアの説明に納得する。
「おやぁ、アクアじゃないか」
ふいに後ろからアクアの名前が呼ばれる。
それに二人が振り向くとルーシアと、さほど年齢が変わらないくらいの青年が立っていた。
「あんたか、何の用?」
その青年の姿を見たとたんに、アクアの口調と表情が変わる。
(あんまり、いい印象を持ってないのかな?)
突然のアクアの表情と口調の変化にそう考える。
「おいおい、なんだよその態度は。つれないなぁ」
頭をポリポリとかきながら苦笑する、青年。
ふと、その青年とルーシアの視線が合う。
「おい、アクア。こいつ誰?」
(初対面なのに、こいつかよ)
心の中では不満に思うが、あえてそれを表に出すようなことはしない。
「今日から、私の所に居候するルーシアよ」
「よろしく」
アクアからの紹介が終わると簡単な挨拶をする。
「よろしく。俺はアルスだ
 にしても、アクアのところに居候だと、どういうつもりだ?」
多少、語気を荒げつつルーシアに言う。
「彼、記憶喪失なの。お金もないし、彼には助けてもらったからお礼として
 私のところに住んでもらってるのよ」
ルーシアの代わりにアクアが答えた。
「ふ〜ん」
納得しきっていないという感じであるが、アクアの様子からこれ以上
聞くのは無理と思ったのか質問を止める。
「もう十分でしょ。いこ、ルーシア」
早くここから離れたいらしくルーシアの手を取って足早にアルスの元から立ち去る。
後ろのほうでアルスが、何かを言っている様だがアクアはそれを無視する。

中央公園から出ると、アクアは手を離す。
少し息が切れているようで肩を軽くはずませている。
「なんなの?あいつは?」
当然の疑問をアクアに投げかける。
「うん、アルスっていうんだけどね。私にしつこくつきまとってて困ってるのよ。
 今日は、ルーシアがいてくれて助かったけど」
息を整えてからいつも通りの口調で喋る。
「へぇ〜、モテるんだ」
半分、からかうような感じでいったのだがアクアの反応は
ルーシアの想像をはるかに超えていた。
「冗談は止めてよ!!こっちは迷惑してるんだから!!」
怒鳴ってしまったあとで、小さくゴメンと謝る。
「いや、俺のほうこそ悪かったよ。そこまで嫌ってるなんてな」
まずいことを言ったと思い自分からも謝る。
アクアは言葉で伝えるかわりに笑顔で意思表示してくれた。
「さて、気を取りなおしてと。これからどうする?」
「え、まだいくの?」
今日は、もう一日中街を歩いている。その疲れがそろそろ足に出てきた。
が、一方のアクアはまだまだ余裕のある顔をしている。
「なに?もう疲れちゃったの?だらしないなぁ、男でしょ」
母親が子供を諭すような口調で言う。
「そんなこといったって、疲れたもんは疲れたんだよ。
 まだ、病み上がりだし」
「あ、そういえばそうだったね」
「おいおい、忘れてたんか?」
「ごめんごめん、ルーシアがあまりにも元気だからもう大丈夫かと思っちゃった」
「まったく、少しは気を使ってくれ」
「だから、ゴメンってば。それじゃあ、家に帰ろうか?」
「ああ、案内はまた今度頼むよ」
「うん、わかった」
こうして、ルーシアのオルタネイトでの一日は過ぎていった。



後書き
ども、筆者のパンドラです。前回から更新が随分と開いてしまいまして申し訳ありません。
と、まあ、今回の話は前回の続きということで街の案内から始まりました。
まだ、スポットはあるんだけどやるとキリがないのでこれからちょくちょくと書いていきます。
それでわ、このへんで失礼させていただきます。


1999年 11/8 パンドラ

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