キーシャ
自警団の受付でもらった入団に必要な書類の入った袋を抱えながら
ルーシアはあてもなく街中を歩いていた。
「さてと、どうしようかな?
このまま帰るのもなんだし、港にでもいってみるか」
港までの道のりは知らなかったが海に向かっていけばつくだろう、と楽天的に考え港に向かう。
途中、道ゆく人々に奇異の目を向けられる。
なんでだろう?、と原因を考えてみると当然の結果が浮かんできた。
(そっか、俺ってよそ者なんだよな。見なれない人間がいれば不思議に思うのは当然か)
回りの視線を集めながらルーシアは港へと続くであろう道を歩きつづける。
途中、何度か道に迷ったものの無事に港へとたどりつくことができた。
海の見える丘公園と同じように潮風がルーシアの頬をなでる。
空にはウミネコたちが元気な鳴き声をあげている。
いまは、貿易船がきていないらしく船着場には船はおろか水夫達の姿も見えなくてガランとしている。
目につくのは数人の人。恐らくルーシアと同じで海を見にきたのだろう。
(公園も高台にあって眺めがよかったけど、ここもこれはこれでいい眺めだな)
しばらく、水平線を眺めながら思いにふけていると、
「ちょっとくらい付き合ってくれてもいいだろう?」
「イヤです。お願いだから離してください」
「ん?・・・」
港のはずれのほうから誰かの声が聞こえてきた。
なにやら、いい争いのように聞こえる。
口調が少し気になり、ルーシアはゆっくりと声がしたほうへと歩いていく。
「そんなつれないこといわないでさ。
ちょっと楽しく話しをするだけだよ」
「私にはあなたと話すことはないです」
物陰からこっそりと様子を探る。
どうやら女の子が絡まれている現場らしい。
男はしつこく誘っているが女の子のほうはかたくなにそれを拒んでいる。
(黙って見てるわけにもいかないな。助けるか)
「おい、なにやってるんだ」
物陰から姿をあらわす。
「なんだ、てめぇは」
いかにも、という風貌の男がルーシアをにらみつける。
「別に。ただ、声が聞こえたからなにかと思ってね」
「ふん、正義の味方のつもりか。痛い目に会いたくなければとっととうせな」
凄みを聞かせてルーシアに詰め寄る。
「こんな現場に居合わせちゃそういうわけにもいかないだろう」
ルーシアの冷静な物言いが頭にきたのか男が突然殴りかかってきた。
それをなんなくかわすと男に足をかけ地面に倒す。
「おいおい、いきなり殴ってきたら危ないだろう?」
地面に倒れた男はすぐさま立ちあがりもう一度殴りかかってくる。
相手の拳をかわすと同時に顔面にお返しをする。
「ぐわぁ!!」
2.3歩後ろに後ずさるとちょうど積んであった木箱に埋もれてそのまま気を失った。
「大丈夫か?」
ルーシアと男のやり取りを呆然と眺めていた女の子がその言葉にハッとしたようになる。
「あ・・・・ありがとうございます」
緊張したような感じの小さな声で礼をいう。
「あいつが目を覚ましたら厄介だからとりあえずここを出よう」
女の子はうなずくとルーシアのあとをついてくる。
ところかわって港。
落ちつきを取り戻した女の子から事情を聞くことにした。
「なんでまた、絡まれてたの?」
「ええ、天気がいいからフラッと港に来て見たんです。そしたら・・・・・」
「なるほどね、それで絡まれたわけだ」
女の子は歳はだいたい17くらい。流れるような金髪。白のブラウスに赤のスカートといった出で立ちだ。
ただ、ひとつ他の誰とも似つかわない特徴があった。耳がとがっているのだ。
「あ、これですか?」
ルーシアの視線に気づいたのか耳に手を当てる。
「エルフなんです、私。でも、この街で耳をジロジロと見られたの初めてですよ」
「ゴメン、気を悪くしたなら謝るよ。
エルフを見たのが初めてだからついね」
本当は見たことがあるのかもしれないが記憶がなくわからないのでそう言っておく。
「そうなんですか?でも、この街って私以外にもエルフはいるじゃないですか」
「そうみたいだね、でも最近この街にきたばかりだから。 えっと・・・・」
「名前ですか?キーシャといいます」
軽く微笑みながら自己紹介をする。
「俺はルーシア。よろしく」
お互いの自己紹介がすんだところで港を出る。
「あの、お礼をしたいんですけどいいですか?」
住宅街まで入ったところでキーシャがそういってきた。
「お礼?別にいいよ。お礼を期待して助けたわけじゃないし」
「いえ、そうでないと私の気がすまないんです。
ご飯をおごりますよ。水晶の森亭にいきましょう」
半ば強引にルーシアの手を取って引っ張っていく。
(この間もアクアに引っ張られたような気がするな。)
そんなことを考えながらキーシャのあとについていく。
カラン、カラン。
店にとりつけられたカウベルが優しい音色で迎えてくれた。
店内は割と広くカウンタに椅子が15ほど。丸テーブルが10あり、それに椅子が6脚ついている。
いまは、昼をまわったところなので客の数はそんなに多くなかった。
「いらっしゃいませ・・・・あら、ルーシアじゃない」
「よっ、頑張ってるね」
「まあ、仕事だからね。あら」
アクアがルーシアのとなりにいる女の子に怪訝そうな顔を向ける。
ルーシアもその視線に気づき説明をする。
「彼女は、キーシャといってね。港でからまれているところを助けたんだよ」
「はじめまして、キーシャです」
「あたしは、アクア。よろしくね」
自己紹介が終わったところでアクアが席に案内してくれる。
「注文はなににするの?」
「そうだな、コーヒーでいいよ」
「私はパスタをお願いします」
「はい、コーヒーとパスタね」
注文を確認するとアクアは厨房へと注文を伝えにいく。
「もっと、高いものを選んでもよかったのに」
「いや、あんまりお腹すいてないからさ」
「そうですか。まあ、いいですけど」
「そうそう、俺に対して敬語は使わなくていいよ。
呼ぶときも呼び捨てでかまわないからさ」
「えっ」
「堅苦しいの嫌いみたいなんだ、俺」
「?。うん、ルーシア・・・・でいいのね」
そんな会話をしているうちにアクアが注文を片手にカウンタ席にやってきた。
「はい、お待ちどう様。コーヒーとパスタね」
注文の品を彼らの前にコトリと置くと自分のルーシアの隣の椅子に座る。
「あれ、仕事は?」
「この時間は暇だから大丈夫よ」
確かに回りには客はいない。さらに昼を回っているのであれば暇だろう。
「それで、その袋はなに?」
ルーシアが持っている袋を指差す。
「ああ、これ?自警団の入団手続書だよ」
「へぇ〜、・・・・・・ってちょっと自警団に入団するの!?」
ワンテンポ遅れてから驚く。
「ああ、やっぱり仕事しないとアクアにも迷惑かけるからな」
「それはそうだけど、でも自警団にしなくても」
「あの〜・・・」
横から控えめそうにキーシャ。
「あ、なに?」
「二人だけで話してないで私もまぜてよ〜」
プクゥと頬を膨らませて文句を言う。
「ああ、ゴメンゴメン」
その後、キーシャの身の上話やルーシアのこと、アクアのことや
他愛のない話で盛り上がった。
後書き
ども、筆者のパンドラです。
なんとか第6話を書くことが出来ました。ってなんかいつもこの文から始まるような・・・・。
それはいいとして、今回また新しいキャラをつくりました。これと一緒にキャラ紹介もアップしてあるんで
そちらも参照してください。
今回の反省は後半部分が会話主体になってしまったことです。
もうちょっと状況描写も書ければよかったかな?
とりあえず、今回はこの辺で失礼させていただきます。