調べ物
自警団から出てきたルーシア。
「まさか、今日はいい、といわれるとはなぁ。
まあ、いいや。ちょうど調べ物もあったしな。図書館にいくか」
アクアから図書館の場所は聞いていたのでまっすぐとその方角へと歩き出す。
自警団と図書館は丁度、街の両端に位置しているので歩いてかなりの時間がかかってしまう。
相変わらず街の人々の注目を集めながら図書館へと足を進める。
目的地に着く頃にはすでに太陽は真上を少し下がったところまできていた。
「ふぅ、やっと着いた。馬車かなんか走ってないのかな?この街は」
あまりの遠さに少々、うんざりしながらも図書館の扉を開ける。
中は流石に図書館というだけあって広い。蔵書もかなりの数があるらしく本棚はゆうに10は超えていた。
机も大きめのものが20ほど。それに椅子が両側に10脚、備え付けられている。
目的の本がどこにあるかわからないのでとりあえず、受け付けで聞くことにした。
「あの、すいません」
「はい、なんでしょう」
なにかの作業をしていたみたいで、下に向いていた顔をルーシアに向ける。
「この街周辺に暮らしている種族が書いてあるような本ってないかな?」
「・・・・・はい、それでしたらここをまっすぐにいって、左の本棚に置いてあります」
受け付けの女の子は少し、考えてからそう答えてくれた。
「ありがとう、助かったよ」
「いえ、もし見つからなかったら遠慮なく、言ってくださいね」
ルーシアはいわれた通りの本棚に向かって歩き始める。
(しかし、すごいな。この膨大な蔵書を全部、暗記してるのか?あの娘は)
呆れるような感心するような感じでそう思う。
(おっと、この辺かな?)
本棚に貼られたシールを見ながらどのあたりにあるか確認する。
「あった、あった。どれどれ」
本棚から一冊、取り出すとそれを机の上に置く。
備え付けの椅子に腰掛けるとその本を開く。
「おっ、地図まで描いてあるのか。助かるな」
その本にはオルタネイトの街を中心にした地図が載っていた。
この地図によると街の北側にかなり大きな森――ジュンケの森というらしい――があり
そこにも数種の種族が暮らしているようだった。
「この街にはやっぱり、アクアの言う通り、人間とエルフが大半を占めてるみたいだな。
どっちかというと人間のほうが多いみたいだ」
街に置いていた目を今度は森のほうへともっていく。
「えっと、こっちの森にはなになに・・・・・・」
森に住んでいるのはウルフリングやフォックスリングなどがいるらしい。
「ウルフリング?フォックスリング?。
どれも聞いたことないな。当たり前だけど」
どこかにそれらの種族の説明がないか探す。
数ページをパラパラとめくるとありがたいことに、その種族の説明書きがあった。
「おっ、あったあった。どれどれ・・・・」
そこに書かれている説明書きによると
ウルフリングは簡単に言うと獣人らしく、その外見は狼に酷似している
戦闘能力は非常に高く、鋭い爪と牙を武器にする。
だが、その能力は自分達の住処を守るときにしか使わないらしい。
一方のフォックスリングはウルフリングと同じ獣人。違いはその容姿らしく
こちらは狼でなく狐らしい。
戦闘能力は高くはないが高い魔法能力を持っているのが数人いるらしかった。
「へぇ、いろいろといるんだなぁ。
結構、勉強になるな」
しばらくその本を読みふける。
どれくらいの時間が立ったであろうか。
ふと、館内にある時計に目をやるとすでに時間は4時を指していた。
「んっ、もうこんな時間か。今日はこの辺にしておくか」
読んでいた本を閉じると元の場所に返す。
(ちょいと、病院にいってからアクアのところに顔を出してみるか?)
次の行動を決定すると図書館をあとにする。
ガチャリ。
病院にたどりつくとその扉を開ける。
待合室は割と広く長椅子が3つほど置いてある。その周りにはいくつかの本棚。
その本棚や椅子をちょうどラムダが掃除をしていた。
「んっ、ルーシアか。どうした?」
掃除の手を休め、聞いてくる。
「ええ、記憶を取り戻す手段が見つかったかな?・・・・と」
「お前も随分と気が早いな。残念ながらまだ見つかっていない。
なにしろ、こういうケースは初めてでな」
「そうですか」
半分、予想していた答えであったのであまり落胆はない。
「ところで、医者の俺がこんなことをいうのもなんだが・・・・・」
「なんです?」
あまり、自分から話そうとしないラムダが珍しく話しかけてきた。
「もし、記憶が戻らなかったらお前はどうする?」
「えっ?」
突然、そんなことをいわれて少し、戸惑う。
(記憶が戻らなかったら・・・・・・)
考え込んでしまったルーシアを見て、
「すまん、忘れてくれ」
そういって謝る。
「いえ。それじゃ、また今度きますよ」
「ああ」
挨拶をかわすとルーシアは病院を出、ラムダは掃除に戻る。
(戻らなかったらか・・・・・考えたことも無かったな。
まあ、いいか。アクアのところにでもいこう)
ラムダの投げかけた疑問を拭い去り、水晶の森亭に向かう。
カラン、カラン
水晶の森亭に取りつけられたカウベルがルーシアを優しく出迎えてくれた。
「あっ、ルーシア。よかったぁ、助かったわ」
カウベルとの優しい音色とは反対に、アクアが助けを求めてきた。
何事かと思い、アクアのほうに目をやると、その原因がすぐにわかった。
「なんだ、お前かよ」
カウンタに座っていた青年がルーシアを睨み付ける。
そう、アルスだ。どうやら、またアクアにアプローチをしているらしい。
アルスのことはお構いなしにルーシアはカウンタ席に座る。
「コーヒー、お願い」
座ると同時に注文する。
承知した、というように微笑むとそそくさと厨房に引っ込む。
「どういうつもりだ?」
アクアが厨房に入ったと同時にそう切り出してきた。
「どういうつもりも、なにも、俺は注文しただけだろう」
いつも通り、冷静に受け答える。
「お前が俺を邪魔する理由はないはずだぜ」
声にドスを聞かせてそういったくる。
その声色に動じたふうもなくルーシアは返す。
「確かに理由はないな。でも、アクアが助けを求めてきた以上、俺は彼女を助けるぜ」
「ふん」
鼻をならすとつまらなそうに席をたつ。
「どうにもお前とは合わないな。俺は帰るぜ」
勘定を払うと店を出て行く。それを見計らったかのように厨房からアクアがコーヒーを片手に出てくる。
「ありがとう、助かったわ。ホント、いいタイミングできてくれたわね」
「いや、別にタイミングは狙ったわけじゃないけど」
差し出されたコーヒーを一口飲む。
「それにしても随分と早いのね、自警団って」
時計を見ながらそういう。
「今日は、部隊のちょっとした説明を受けただけだよ。
明日から本格的にやるらしいけどね」
「ふ〜ん、そう。頑張ってね」
「ああ、ありがとう」
後書き
オリジナル小説第8話掲載完了。
プロットはあらかじめ作っておいたから今回は割とすんなりと書けました。
内容が皆様のご期待に添えることができるかどうはわかりませんが。
今回、出てきた種族、ウルフリングとフォックスリングは、じきに出てきますのでお楽しみに。