WORKING MAN


WORKING MAN
前編


「おはようございま〜す」
自警団第2部隊室のとびらを開けルーシアが入る。
中にはすでに数人の隊員が集まっていた。
「お、来たな」
そう言ってきたのはラッツだった。彼はすでに自分のアーマーをみにまとっている。
ルーシアもすぐに準備をしようと自分のロッカーへと向かおうとする。
「ちょっと待ちなよ。そろそろ隊長が来るから、準備はそれからのほうがいいよ」
その声に足を止める。忠告をくれたのはレムリア。
彼女もラッツ同様、すでに準備はできていた。
その忠告に従うと自分も椅子に腰掛ける。
レムリアの言う通り、待つこと数分でハンスは部隊室へと姿を現した。
「よ〜し、みんな集まってるな。今日の訓練内容をいうぞ」
そう切りだし、一日の予定を発表する。
レムリアとジャロム、他数名の隊員は森での森林戦の訓練。 
ラッツとカイル、同じく他数名の隊員は自警団内の訓練場で稽古。
ルーシアは当初の予定通り、街の巡回ということになった。
「なにか、質問はあるか?」
「あの・・・・・」
「なんだ?ルーシア?」
「巡回が終わった後、俺はどうすれば」
「そうだな・・・・・・とりあえず自警団内の訓練場にきてくれ。
 それから巡回にはきっと午前中いっぱい、かかると思うからどっかその辺で昼飯、食ってきていいぞ」
「はい、わかりました」
「他には質問はないか?」
そう言って、隊員を見渡す。が、誰からの質問もないようだ。
「よ〜し、質問もないようなので今日の朝礼はこれにて終了とする。
 各自、それぞれの場所にいってくれ」
ハンスの合図に隊員が自分達の持ち場に移動する。
一人残った第2部隊室でルーシアはアーマーを身にまといはじめる。
それは鎧のように全身をガードするものではなく、胸当てのようであった。
(こんなんで大丈夫なのかな?)
いちまつの不安を感じるがたいして気にする風もなく、ルーシアも街の巡回に出かけた。

「う〜ん、今日もいい天気だぁ」
自警団から出ると空から太陽の恵みが降り注いでくる。
その光を浴びながら大きく伸びをする。
「さて、とりあえず北区のほうからいこうかな?」
北から南へと順番に見ていくことに決め、オルタネイト北区へと向かった。
北区の西側にはコロシアムや美術館、劇場などの娯楽施設が立ち並んでいた。
今も、コロシアムではなにかが行われているようで中から大歓声が聞こえてくる。
そのコロシアムを一回りする。が、さすがに、外周が長く一周するのに30分以上もかかってしまった。
「ふぃ〜、つかれた」
少々、くたびれたものの、まだ、休むわけにもいかないのでさらに北区を東に向かって移動する。
美術館、劇場と順番に見て回る。
その間、相変わらず街の人々からの視線を集めてはいたが、自警団のアーマーをきているせいか
以前のようにジロジロと見られることはなくなった。
(やっぱり、このアーマーのせいかな?)
そんな住人の変化の違いに気づき、そう思う。

北区の見まわりが終わり、今度は東区から中央区、西区へと見まわりを続ける。
東区には海の見える丘公園があり、そこから回ることにした。
時間が早いせいか、以前きたときより人の姿はまばらだった。
とりあえず、公園を一回りする。
「う〜ん、異常なしか。まっ、異常があったら困るんだけどな」
「あれ、ルーシア?」
ふいに後ろから声をかけられた。
そちらに振り向くと流れるような金髪と、とがった耳の少女が立っていた。
「やあ、キーシャ」
「どうしたの?こんなところで?」
ルーシアの行動が気になるらしく聞いてくる。
また、服もいつもと違うのでジロジロと見てくる。
「俺?仕事中だよ」
「仕事?こんなところを歩いてるのが?」
「おいおい、歩いてるわけじゃないよ。街の見回りさ」
そのルーシアの答えですべてがわかったような顔をする。
「あっ!そうか。自警団に入団したんだっけ」
「そういうこと」
「ご苦労様。せっかく会ったんだから、ちょっと歩かない?」
脈絡もなく突然いってきたので、ルーシアは一瞬、言葉につまる。
「・・・・あの、俺・・仕事中なんだけど・・・・・」
「大丈夫よ、見まわりのコースを歩きながら話せばいいんだし」
と、なかば強引にルーシアを連れて行こうとする。
(そういう、問題じゃないと思うんだけど・・・)
そう思うが、例によって断り切れずキーシャとともに見まわりをすることになってしまった。

「へぇ、今日が一日目なんだ」
海の見える丘公園を抜けて、中央公園、高級住宅街の見まわりを終え、今は繁華街にいる。
「仕事を始めたのがね。昨日は説明だけだったし」
「ふ〜ん、そうなんだ。 で、どう?仕事、大変?」
「大変もなにもまだ二日目だからなんともいえないよ」
「あは、そうだね」
失敗した、という感じで笑う。
「そういえばさ、お昼ご飯、食べた?」
またも、脈絡もなく突然、聞いてくる。
「いや、まだだけど」
「じゃ、食べよ。ちょうど、水晶の森亭の近くだし」
すぐ目の前の看板を指差す。
「そうだな、昼飯は食べてきていいっていってたし。・・・・そうするか」
「うん!」
ルーシアが承諾してくれたのが嬉しかったのか満面の笑顔を向けてきた。
カラン、カラン。
カウベルが優しい音を立て、ルーシアとキーシャの来訪を告げた・・・・はずだった。
ちょうど、店が混み合う時間にきたらしく、誰も二人に気づくことはない。
仕方ないので空いているテーブルに腰を下ろす。
「あっ、いらっしゃい」
ようやく、気づいたらしくアクアが注文を取りに来た。
「俺は、日替わり定食で。キーシャは?」
「私は、前と同じでパスタをお願いします」
「は〜い、わかりました」
そう返事をし、厨房に小走りで消えていった。
「だけど相変わらず、すごいね。ここって」
キーシャが回りを見渡しながらそう漏らす。
「いつも、この時間はこんなんなの?」
昼時に来たのは初めてなので、これだけ混むというのはルーシアは知らなかった。
「うん、そうだよ。ここって安くておいしいって評判だもん。
 昼以外にも夜もすっごく混むんだ」
「ふ〜ん、それじゃあ、アクアも大変だな」
彼女がいま、働いているであろう場所、厨房のほうを眺めながらいう。
「そういえばさ」
厨房から視線ををキーシャに変え質問する。
「ん、なに?」
「キーシャっていま、なにしてるの?」
「私?私は学校にいってるよ」
「学校?にしては、今日昼間から出てるけど」
「うん、今日は学校、休みなんだ」
「なるほど」
その答えに思わず納得してしまう。そうこうしているうちにアクアが注文の品を持ってテーブルにやってきた。
「お待たせ」
それだけいうと、テーブルに定食とパスタを置き、また別のテーブルに注文を取りにいく。
(ホントに大変そうだな)
定食に手をつけ、改めてそう思う。
「どうしたの?」
一口食べただけで後は手をつける気配がないのでキーシャが尋ねる。
「ん、いや。俺の仕事も忙しくなるのかなってね」
「なるんじゃないの?やっぱり。なんていっても、この街を守る仕事だもんね。  それに忙しくない仕事なんてないよ」
「なるほど、ごもっともだな」
まさにその通りなので思わず苦笑する。
その後は二人でいろいろと会話をしながら昼食を楽しんだ。

「ご馳走様」
ふたりは勘定を払うと水晶の森亭から出る。
「それじゃ、私はいくね。仕事の邪魔しちゃ悪いし」
「そう?それじゃまた今度ね。」
「うん、バイバ〜イ」
手を振りながらキーシャは繁華街の人ごみの中に消えていった。
「さてと、俺も見まわりを続けるか」



後書き
オリジナル小説第9話、掲載完了です。
今回はルーシアの仕事内容と『新天地』で書ききれなかった街の設備などをちょっと書いてみました。
書いたといっても『コロシアム』や『美術館』、『劇場』くらいですけど。
でも、食事のところはホントに脈絡ないですよね? 自分でもあの部分はか〜なり納得してないです。
ちなみにこの話『WORKING MAN 前編、後編』にベースソロ入れる?と友達と冗談めいて話してました。
流石にネタが分かる人いるかどうかわかんないし、これだけ特別扱いというのもなんですから止めましたけど。


1999年 12/23 パンドラ

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