第二の遺跡
アタシたちは遺跡の入り口に立っている。捜索メンバーはザッパ、アレフ、セリカ、そしてアタシの4人。大人数でいっても行動が制限されてしまうわけだし、このくらいの人数が一番丁度良いと思う。
そして、ここはセリカを保護した遺跡の右端の遺跡。六芒星を構成する、逆三角形の右の角の部分に当たる。はてさて、ここはどんなもんがあるのかな。
アタシは期待に胸を膨らませ、先頭に立って遺跡に入っていく。もちろん、帰還のための魔法陣はすでに入り口に描いてある。これがないと戻ってくるのが面倒だからね。
後ろにセリカ、アレフ、そして殿がザッパだ。こういうところは前のからの攻撃よりも後ろからの攻撃のほうが恐ろしいの。前方の敵と戦い、消耗したところで後ろから挟撃をかけられたら目も当てられないからね。だから、後方にも戦闘力の高い者を置くのは基本中の基本。
「この先はどうなってるかわからない。皆、気を引き締めてね」
振り返ることなくアタシは言う。遺跡に関してはアタシのほうが大先輩だからね。しっかりと言う事を聞いてもらうわ。
「了解しました、マスター」
「ええ、もちろんです」
「後ろは任せな」
各々から返事が返って来る。よし、それじゃアタシも気合いを入れていきますか。
久しぶりのパーティを組んでの遺跡探査にアタシは胸を躍らせて潜っていく。こういう部分は地下に潜っていくタイプの遺跡はどこも一緒ね。一直線に続く階段。これを降りきれば遺跡探査の始まりってわけよ。
そのまま真っ直ぐに進んでいくとやがて明かりが見えてきた。どうやら、通路にたいまつか何かが配備してあるらしい。ラッキー、こっちの明かりが浮くわ。割と高いのよねぇ、この明かり。
ふっ、と手持ちの明かりの灯を吹き消すと、バッグにしまった。
「さて、ここは割と広いわね。アタシが先頭。後ろにセリカとアレフは並んできて。ザッパは殿をお願いね」
陣形に若干の変更を加え、アタシは先へと進んでいく。この遺跡にはマナの流れがあるわね。でも、結界がある。なんで、結界なんてあるのかしら?
疑問だった。前の遺跡は魔導人形の製造工場なので、マナが遮断してあるのは納得できる。しかし、ここにはマナを遮断しているような形跡がないのだ。
「セリカ。ここはなんの遺跡かわかる?」
この中で最も旧時代に詳しいセリカに聞いて見る。なんせ、彼女は生き字引なのだから。
「申し訳ありません。その部分に関するデータは壊れてしまっていて呼び出し不能です。修復を試みたのですが、無理でした。残りの五つの遺跡に関しても…です」
なんか、素晴らしいタイミングね。でも、それならしょうがないか。とっとと最下層までいって結界をぶった切るのが手っ取り早い。
気合いを入れなおして、アタシは遺跡を進んでいく。
石でしっかりと造られた壁や床は老朽化している様子もなく、しっかりと昔のままの姿を今に継承している。どうやらここは、シューティングスターの攻撃からは逃れていたみたい。セリカのいた遺跡は、もろに攻撃を食らったみたいだし。
「…敵です」
前方を指差し、セリカが言った。アタシにはまだ気配は察知できていないけど。
目を凝らし前を見る。ダメだわ、アタシには視認できない。
「数は4匹。ガーディアンでなく、ここに棲みついた魔物です。種族はゴブリン2匹にオオコウモリが2匹です」
セリカの警告と共にアタシたちは戦闘態勢を取る。基本的にアタシがすべてを始末したいところだけど、せっかく仲間がいるんだしね。
「ゴブリンはアタシが引き受けるわ。オオコウモリはアレフ、お願い」
「わかりました」
アレフが杖を構える。いや、構えるという表現は正確ではないかもしれない。杖がアレフの右隣に浮遊しているのだ。彼女がすっ、と指を動かすと、杖もまた動く。
「マスター、私はどうしましょう?」
「セリカとザッパは何かあったときの援護をお願い」
アタシは剣を構えながら後ろの二人に言う。この程度の敵なら総力戦をやらなくても済む。温存できる戦力は温存しておかないとね。
「了解しました」
「退屈だけど、しょうがないな」
それでも、念のために二人は構えている。ザッパはいつでも飛び込める態勢。そして、セリカもマナの剣を作り出す準備をしている。
「来ました」
セリカのその言葉を合図にアタシは飛び出す。
「はっ!」
アタシのロングソードが一閃する。薄暗い空間内に銀色の光の筋が走る。その奇襲攻撃で一匹のゴブリンを仕留めた。上空を飛んでいたオオコウモリは予想通りに後ろに控えている仲間の元へと飛び、攻撃を仕掛けようとしている。
アタシはバックステップでゴブリンから間を離す。もしこの先にまだ敵がいたら、目も当てられないから。
カカッ! ズガァァン!!
アタシが着地するのと同時に魔法の音が響き渡る。恐らくはアレフの魔法ね。っというか、ここって空間内よ。なんで、雷系統の魔法が使えるの。
火と水を混合させ作り出す電撃とはまた違う。雷そのものを落とす高等魔法だ。しかし、それには空が見えないといけない。
「今はそんなことを考えている場合じゃないか」
ゴブリンの姿を確認できる距離まで再び移動する。魔物は剣を突きたてながら、こちらへともう突進してきた。アタシは冷静にその剣をさばくと、ゴブリンの首をはねる。それで決着はついた。後ろのオオコウモリもアレフの魔法一撃で片がついたみたい。
アタシは剣を鞘に収め、仲間たちの元へと戻る。
「そっちも片付いたみたいだな」
戻るとザッパが話し掛けてきた。アタシは頷いて答えると、さっきの疑問について聞く。もちろん歩きながらね。
「スパークのことですか。確かに普通では空が見えないと使えない魔法の一種です。でも、私は工夫で使えるようにしました」
「どういうこと」
「自分の目の前に雷の球を作り出すんです。それを使い、そこから雷を落とすという方法を編み出しました」
「……」
何も言えなかった。確かにそうすれば使用は可能だと思う。でも、雷の球を作り出すのには想像を絶する魔力が必要となるはずだ。いくら魔鉱石の補助があるとはいえ、おいそれと使える類の魔法ではない。スパークの魔法だってかなりの高等魔法なのに…。きっと空があるところならば、連発すらアレフは可能にするんだろうな。それを想像し、アタシはぞっとする。
「アレフの得意魔法だからな、スパークは」
ザッパがさらに恐ろしいことを言った。高等魔法を得意としているなんて、凄まじいまでの素質を持っていることになる。アタシの魔法なんて太刀打ちできないかもしれない。スパークなんて使えないし。
「他にはどんなことができるの?」
怖い物見たさってヤツかしらね。アレフの才は怖いけど、それでも聞きたくなってしまうのが人間ってものなのよ。
「そうですね、炎の魔法や氷の魔法、風の魔法。攻撃系は一通り扱えます。それに補助魔法だと、一時的に防具を強化する魔法や、魔法抵抗を上昇させる魔法。武器に魔力を付与させるエンチャントもできます」
正直に言うと聞くんじゃなかったって思ってる。半端じゃないわ、この人。まさに想像を絶する世界ってこういうことを言うんでしょうね。アタシの魔法がチンケなものに思えてきたわ。
もはや魔道士というレベルではない。大魔道と名乗っても恥ずかしくないだろう。
「それは凄いわ。頼りにしてるわよ」
動揺を表に出さないようにし、アレフに言った。
かなりの数の魔物、そしてガーディアンとの戦いを経験しながらも、アタシたちはかなりの階層まで降りてきた。ざっと10階層は降りたかしらね。でも、まだ底があるような感じ。かなり深いし、敵のレベルも高い。この分じゃ他の遺跡の攻略も骨が折れそう。
しかし、ここまで無傷でこられるのも仲間の助けによる物が大きい。
セリカはさすがに戦闘兵器だけあって、戦闘技術はかなりの高レベルに仕上がっている。物質化能力により、剣を作りそれで戦う。状況によって、槍やブーメラン等の武器の創造もできるので、地形や状況によって戦い分けできるのが非常にプラスになってる。
アレフは得意の魔法で持ってしっかりと援護してくれてる。魔法の威力もさることながら、命中率も凄まじく高い。どんな混戦状態にあっても、100%敵に命中させるから驚きだ。最初の時はさすがにびびったけどね。
最後にザッパ。彼のスピードははっきりいって人間じゃない。…いや、確かに人間じゃないんだけどね。とてもじゃないけど、目で認識できる速度じゃないと思える。気がつくと眼前から消えて、そして気がつくと敵の目の前。その後の魔物の運命は身体か首を切られてジ・エンド。
もしかしたら、この面子で一番弱いのはアタシかもしれないわ。剣も魔法も中途半端なように思えてくるし。少なからずショックだと思う。幼い頃に親を亡くして、生き残るためにつけたこの力に、多少は自信ってものを持ってたんだけど。
「…ん? 行き止まりですね」
アタシの思考はそこで遮られた。どうやら行き止まりにぶつかったみたい。アレフが壁を調べるようにしてさすってる。
「他に道はありましたか?」
壁を調べても無駄と思ったのか、手を休めると仲間に聞いている。
「いや、他の道はすべて調べたが行き止まりだったはずだ」
ザッパの答えにセリカも頷いて賛同した。そして、3人はアタシを見ている。
そっか、力及ばずともアタシにはこれがあるか…。
「ちょっと待ってね、調べてみるわ」
アタシが言うとアレフが壁から離れた。
とりあえず、基本ということでアタシは壁を叩く。音の変化がしないことから空洞になっているということはないみたい。
光を当てて見ても、スイッチのようなものはない。う〜ん……。
「あっ、なるほどね」
言って、アタシはブーツからダガーを一本取り出すと、それを天井に構える。
アタシの行動に対し、仲間は疑問の目で見るが、上を見て納得したようだ。
そう、スイッチは壁にあるとは限らない。天井に小さなボタンのような物がくっついていた。
「それっ!」
アタシの手から離れたダガーは、そこに吸い込まれるようにしてスイッチに刺さった。
ゴゴゴゴゴゴッッ!!
地響きの音と共に目の前の壁が崩れていく。かなりの厚さがそこにはあった。これじゃあ、音の変化はわからないわ。
「いきましょ。あと、5階層も下に行けば最下層のはずよ」
アタシは仲間を振り返って言った。そうね、今のアタシにできる事を精一杯やればいいか。遺跡に慣れているのはアタシしかいない。これを活かして、仲間を導いてあげれば。そう考えると幾分かは楽になったように感じる。
「しっかし、キリがないな」
あれから5階層ほど下に来るとザッパがそう言う。無理もないかな、ガーディアンの数が半端じゃない。普通の遺跡ならこれほどの数はいないはず。アタシたちの通ってきた道には必ずといっていいほどガーディアンと遭遇している。
「確かにこの数は異常ね。いままでいろんな遺跡に潜ったけど、これほどのは滅多になかったわ」
自分の足元に転がっているガーディアンの死体を見ながら言った。こうなるために生まれてきたわけじゃないように思える。命を奪っておいてこういうのもなんだけど、ごめんね。
「しかし、もう最下層は目前なのですよね?」
アレフが言う。彼女が一番体力がない。さすがに休憩なしでここまで戦いの連続だったせいか、少しばかり息が上がっている。確かにもう少しだし、ここらで休憩を取ったほうがいいかな? アタシはそう判断すると、休憩の準備を始めた。
「それはなんですか?」
アタシが取り出したワンドを興味津々といった面持ちでアレフが覗き込む。魔道士だけあって、魔法の道具はやはり興味の対象になるようだ。
「これは魔力のワンドよ。これを使って結界を張るの」
言いながらアタシはワンドを五芒星の形になるように配置すると、念をこめる。
やがてアタシの念に誘発され、ワンドが光り輝いた。
「さっ、このワンドの中に入って」
仲間が中に入るのを確認したあと、アタシは短剣を携え、魔呪文を唱え結界を張る。
「………オンッ!!」
気合いと共に短剣を床に突き刺す。すると、突き刺した短剣から淡い光が発生し、それは床に真っ直ぐに伸びる。やがて、ワンドに辿り着くとゆっくりと上昇し、小さな結界を形作った。
「…ふぅ」
結界が完成したことを確認するとアタシは息を吐いてリラックスする。結界魔法は精神力をかなり使うから疲れるわ。使うたびに年をとりそう…。
「凄い、こんなことができるんですね」
アレフは感心したように、結界を見つめている。アタシからすればアレフの魔法の才のが凄いと思うけどね。
「別にアタシの魔力のみで作っているわけじゃないけどね」
そう、この結果はワンドに込められたマナでアタシの魔力を増幅し、可能にしている結界だ。アタシ一人だったら、一人分を作るのが精一杯だろう。
「そんなことないです。私は結界魔法の類は全然できないんですよ」
言いながら彼女は床に座り込んだ。さすがに魔法の連発はこたえるらしい。他のメンバーも各々の場所で身体を休めていた。セリカはそんなに疲れている感じはしないな。当たり前かもしれないけど。
「ふ〜ん、やっぱり得て不得手ってあるものなのねぇ」
アタシはバッグから携帯用の食べ物を取り出すと食べ始める。もちろん、アレフやザッパにも振舞う。
「あとどれくらいで終点につくんだ?」
干し肉を頬張りながらザッパが言う。なんだか、妙にその仕草が似合うわ。ザッパを見てそんなことを思った。
「そうね、アタシの勘が確かならもうすぐよ。多分、一階層も下に潜れば結界の間に入れると思うわ」
一本目の肉を食べ終え、アタシは腰の水袋に口をつけ何口か飲む。疲れた身体に冷たい水が身体に染み渡るのを感じる。
セリカを除く仲間にも水を手渡す。ここまで飲まず食わずだったから、さぞおいしいに違いない。
セリカにも飲ませたいと思うところだけど、残念ながらそれはできない。感情と表情がないことを除けば人間とまるでかわらないので、時折彼女が魔導人形であることを忘れてしまう。
「最後には必ずガーディアンがいるはずです。今まで戦った敵とは比べ物にはならないと思われます」
皆が食べ、休憩している中セリカが言った。確かにね。それにここのガーディアンを見ると、ボスもかなりの強敵ということが予想できる。
「大丈夫。どんな奴が来ても私の牙と爪に敵は無い」
「私も魔法で出来る限りの援護はします。心置きなく前衛に徹してください」
二人が言う。心強いなぁ、強い仲間が一緒にいるということは。アタシもそれに答えることのできるように、一生懸命に頑張らないとね。
その後アタシたちはここが危険な遺跡ともいうことを忘れて、談笑に花を咲かせていた。
この先に待ちうける激闘を忘れたいがために…。
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 トレジャーハンターの小さな冒険・第六話「第二の遺跡」掲載完了です。
久しぶりの遺跡&戦闘描写。といっても戦いはほとんどないけど。そればっかじゃなんかイヤだしね。
とりあえず、メインに各々の戦闘能力について書いてみたつもりです。前回ではかなり強かった部類に入るセレスが……ってなことになってます。
この辺は基本性能の違いということで、ご了承ください。決して弱くはなっていないので。
今後の遺跡戦で各キャラの能力をしっかりと書いていきたいと思ってます。
では、次の後書きで。