決着
「これが最初で最後のチャンスだ! 一気にいくぞっ!」
「はい、ザッパ様」
二人はセレスが渾身の一撃によりこじ開けた穴から、ベヒモスの大地の壁の内部へと侵入した。
「俺は眼球を狙う。セリカは喉だ。一撃を食らわしたら、マナを全開にしてやれっ!」
「了解」
ザッパは眼球へと狙いを定める。
セリカは喉元へと狙いを定める。
突然の出来事にベヒモスは反応できないでいた。いや、反応はできていたに違いない。しかし、彼の体内のマナは全魔力の半分にも満たない状態なのだ。そのせいで、彼らの攻撃に対する反応が遅れた。
「オラァッ!!」
ザクゥッ!!
「グワァァァオォォォ!!!!!」
ザッパの鋭い爪がベヒモスの両の眼球を切り裂く。噴水のように血しぶきが飛び散り、ザッパを赤く濡らしていく。
「いきます」
喉元へと到達したセリカは、静かにそう宣言すると己の右手の刃を、ゆっくりとベヒモスの喉に突き入れた。
ズブゥ!!
鈍い音と共に、セリカの刃が大地の魔獣の喉に突き刺さる。
「グワァァァァォォォオオ!!」
次に襲い掛かってきた耐えがたい激痛に、ベヒモスがこの世のものとは思えない絶叫を上げる。しかし、二人は怯むことなく攻撃を加えていく。
バババババババッッッ!!
さらにベヒモスの身体を電流のようなものが走る。魔獣の身体の表面に、ピンク色の雷光のようなものがほとばしる。セリカの放ったマナだ。
「ザッパ様、もう大丈夫です。あとはアレフ様に」
ゆっくりと剣を引き抜き、未だにベヒモスを切り裂いているザッパに、セリカは言った。
「よし、わかった」
二人は、ベヒモスへの攻撃を中断し、入ってきた時と同じようにして出て行った。
「ベヒモスの動きが止まった…。上手くいったのね。良し!!」
ゆっくりと浮遊している杖を、自分の頭上で回し、マナを練る。
やがて、アレフを中心に半径5メートルほどの魔法陣が浮かび上がった。
「我が名はアレフ。我、いま大地の精に願い奉る。かの魔獣・ベヒモスを我に従わせ給え。」
ゆっくりと、確実に契約の言葉を述べる。それは、美しい調べとなり、風に乗ってベヒモスへと届く。
ベヒモスの足元にも、アレフと同じ魔法陣が浮かび上がる。
ババババババババッッッッッ!!!!!
両者の間に凄まじい放電が始まる。契約の儀式だ。今は、アレフの強制力にベヒモスが抵抗している。この戦いにアレフが勝てばベヒモスはアレフの召喚獣に。負ければ、アレフはベヒモスに殺される運命にある。
(負けるものですかっ! 皆が死力を尽くして得たこのチャンス。ここで、私が踏ん張らないと)
さらに魔力を上げ、アレフは念じる。ベヒモスを屈服させるために。
ババババババッッッ………ババババ……ババババッ……。
やがて、放電が止んだ。そして、最後まで立っていたのは……。