黄昏の湖

鷹のコーディーリアは大空を飛翔していた。
眼下には戦に明け暮れる人間どもが軍議とやらを開いている。どうやらマルス率いるアリティア軍の面々のようだ。しかし、そんなことは鷹には関係ない。 コーディーリアは大空を大きく旋回し…それが唯一の過ちであったのだが、どこからともなく飛来した矢につらぬかれ、炎上し、バーツの大口に落ちていった。

さて、軍議の様子である。
皆が整列している前で、マルスとジェイガンは何故か爆笑していた。
マルス「ぷっはーぷっはー、奴の面ときたらまったくもって爆笑じゃ」
ジェイガン「いかにも、私もあれ程おもろい面をしたモノを見たことがございませぬ」
マルス「うむ、予としてはこの面白い体験を皆に話さずにはおれぬ。皆の者聞きたいかー!」
ブラボー(拍手喝采)
マルス「よし、分かった。ジェネラスマルス、つまり寛大な予としては皆の期待に添わなくてはなるまい」
マルスの話によると、そいつはこの陣地から北に僅かばかり行ったところの湖の底に沈んでいるという。 好奇心の旺盛な者たちは我先に湖に向かっていった。

1.オグマとナバール
オグマ「おいナバール、今から一緒に行かないか」
ナバール「ふっ、俺はいい。行くなら一人で行け」
オグマ「ちっ、連れない野郎だぜ、全く」
マルス軍きっての英傑オグマは、ナバールに誘いを断られ、一人で見に行くことにした。
湖のほとりに到着するオグマ。
オグマ「え〜と、なになに。確か湖に沈んでいるとか何とか言ってたな。しかし一体どこらへんだ」
とりあえず近くの水面をのぞき込むオグマ。
オグマ「あ…」
オグマは背後にナバールの気配を感じたという。

2.マチス
マチスは愛馬クレーベとともに颯爽と湖に現れた。
マチス「よっしゃー、赤い流星マチス、トップでゴール!」
しかし、それには何の意味もない。
マチス「と、ともかく奴を捜さねば。え〜と、グハァッ!この広い湖のどこにいるのかさっぱりわからん」
すると、どこからか叫び声が聞こえてきた。
「アヒー!ヘルミイフユーキャンアイフィーリンダーン」
マチス「む、もしやあれがそうか。ちょっとまってろ、今すぐ行くぞー」
声のする方に走りゆくマチス。
マチス「むっ、あれはビラクン。プハー、即ち爆笑面とはお主のことか!」
ビラク「おっ、マチスいいところにきた。助けてくれ」
マチス「ははは、おやすいご用だ。何しろ君は我が部下の一人、こんなところで失うわけには行かぬ」
マチスとビラク、彼らは互いの友情を確認し、帰路に就いた。

3.狼騎士団
ザガロ「お、ジョルジュとロシェじゃないか。今から湖に行くのか」
ロシェ「いや、僕たちはこれから警備なんだ」
ザガロ「ふーん、そうか。ところでビラクは見なかったか?」
ロシェ「いや、見てない。あいつの馬もなくなってたから大方マルス殿の言うことを真に受けて…」
ザガロ「なにっ、奴め抜け駆けする気か。早速俺も行って来る。帰ってきたら教えてやるから楽しみに待ってろよ」
言うやいなやザガロ、愛馬に乗って一目散に走り出した。
ロシェ「あ…」
ジョルジュ「ははは。まあ、土産話とやらを楽しみにしていようぜ」

ザガロが湖に着くと、ビラクが湖畔でなにやらやっていた。
ザガロ「おっす、ビラク。例の奴はいたか」
ビラク「ああ、もちろんだとも。ほら、そこの深みの所だ、覗いてみたまえ」
覗き込むザガロ。しかし、そこに移っているのは自分の顔だけだった」
ザガロ「おい、ビラク、どこにもそんな奴いないぞ」
ビラク「え、何々そんな馬鹿な。拙者はしかと見たが…プアッハー(爆笑)これは珍事だ。なんと爆笑面とはザガロ殿のことだったのかー!」
ビラク、爆笑。怒ったザガロはいきなりビラクを蹴り飛ばし、ビラクは湖につっこんでいった。

4.アリティア宮廷騎士団
カイン「おう、アベル。どうだいっちょ王子の言ってたやつを見に行かないか」
アベル「いや、俺は遠慮しておく。行くなら別の奴と行ってくれ」
カイン「しかたないな。おーい、ゴードン、一緒に行かないか」
ゴードン「あ、僕もちょっと…」
カイン「おいおい、何だよ。せっかくマルス王子が教えてくれたのに。それならドーガはどこだ」
ゴードン「ドーガさんならもう既に行きましたが」
カイン「なに、奴め。行くなら一声かけて行けよな、まったく」
そういうとカインもまた、湖に行くのであった。

カイン「えーと、この辺か。どれどれ。グハァッ!」
なんと、湖の底にはアーマーナイトが沈んでいた。
カイン「なんてこったい、こいつは笑い事じゃないぜ…しかもあれは遠目にも分かる、ドーガ!」
慌てて湖に飛び込むカイン。何とかその巨体を助け上げ、ドーガは一命を取り留めたとさ。

ラスト.ミネルバと三姉妹
エスト「あ、ミネルバ様。お姉さま。今から一緒に見に行きませんか」
ミネルバ「さて、どうしようか。なあ、パオラ」
パオラ「ええ、そうですね」
エスト「え〜、どうしてですか。マルス王子がそれはもう面白いって行ったたんですよ。後悔しませんって」
カチュア「はぁ、エスト。よーく考えてみなさいな」
エスト「えっ、なに。湖の底に爆笑男が沈んでるんでしょう?」
カチュア「うーん、湖の中といったら…ねえ、パオラ姉さん」
パオラ「そうそう、水面に映るのは他ならぬ自分の顔ってことよ」

さて、こちらマルスとジェイガン。二人は湖を望む丘の上に小屋を建て、ことの子細を窺っていた。
マルス「そろそろ終わりだな。で、ジェイガン、やって来たのは何人ぐらいいる?」
ジェイガン「えっ、王子。一緒に見ていたのでは…」
マルス「うむ、しかし途中で敵らしき面影を発見したから警戒しておったのじゃ。それよりも早く言え」
ジェイガン「はっ、まず始めにドーガ」
マルス「なにっ、ドーガ。あの重装歩兵でのろさも我が軍トップが何故一番に」
ジェイガン「おそらく転がってきたかと。それはともかく、奴は何故かそのまま湖に落下。おそらくあまりの早さにブレーキが利かなかったのだと思います」
マルス「プハー(爆笑)ったく、間抜けな奴だ。まあよい、次」
ジェイガン「その次はビラク。奴はなにやら探していたようですがいつの間にか水遊びに発展しました」
マルス「グハァッ。訳のわからん奴だ、奴の知能は幼児並か」
ジェイガン「しかも、その後にやってきたザガロに蹴り飛ばされ湖に落下しました」
マルス「プッハプッハー(爆笑)」
ジェイガン「続いてマチス、あやつは溺れているビラクを救出してそのまま帰っていきました。 おそらく、マルス様の真意に気づかずじまいだと思います。 続いてオグマ、敢え無く撃沈…」
マルス「なにっ、オグマ。あの馬鹿、一軍のくせして、この程度の策略にかかるとは笑止千万」
ジェイガン「はあ、彼はナバールに後を付けられていたようで。ナバールが少し離れた林で爆笑しているのを見受けました」
マルス「まあよいわ。それで他には誰がいるのじゃ」
ジェイガン「続いて登場したのはボアとウェンデル。 奴らは湖のほとりでなにやら大騒ぎした後、そのまま湖に落下。川の方に流れていきました。 あの時の慌てようから判断するに奴らは本当に何か見たのかもしれませぬ」
マルス「予は、ただ単にボアが吐血しただけだと思うがな」
ジェイガン「え〜、続きましてボア・ウェンデル・トムスミシェラン・さらにはカインめもおりました」
ジェイガンの説明は延々と続いた。日が昇り、日が傾き、日が沈み、月が出るまでそれは続いた。

ジェイガン「…とまあ、こんなもんでございます」
マルス「ふぁ〜、よく寝た。しかし、なんたる多さだ。 我が軍はあほの集まりか、特に二軍などは腰を痛めていたバヌトゥなどを抜かしてほぼ全員がやって来とるではないか」
ジェイガン「はあ、しかし由々しきことは一軍の中にも引っかかる者がおったということですな」
マルス「よし、とりあえず二軍の馬鹿どもはオトリとして重用する。 一軍のくせにやってきたウルトラ馬鹿者どもはわし自ら説教部屋で鍛えてやるからその旨を伝えておくように」
ジェイガン「はっ」

こうして、長い一日は終わった。この日の抜き打ちテストの結果は、後々まで重宝されたという。