職業物語

 

  グラスハート

 

 

ずっと待ちつづけた。

風と共に。

大地となり。

 

日付はもう数えていない。

恐らくは三日、あるいは四日か。

 

ずっと同じ場所に寝転び、いつものように、常に代わらぬ位置に必要なものがある。

身じろぎ一つすることなく。

 

獣が通った事もある。

ディオーズがすぐそばを探って行った事もある。

それでも動かず、息を潜めて待ちつづけた。

 

待つことには慣れている。

 

そして、何度目かの夜が過ぎ。

朝もやが漂う青い世界の時に、待っていた一瞬がやってきた。

 

つばを飲み、慎重に構える。力を抜いていた腕が硬くなる。

「目標」は、共のものを連れてゆっくりと建物の影から姿を覗かせた。

小さなあくびを一つ。そして大きな伸び。

指先がピクピクと引きつるような緊張感の中、静かに、意識的に静かに。

自身を手のうちの道具と一体化させ、一瞬のタイミングをひたすら待つ。

 

どれほど待ったか。

実際には、数秒ぐらいのものだろう。

 

ようやく――来た!

 

指先に力をこめ――トリガーを引く!

 バシン!

弾ける音。

ひゅおうと風を切る音。

そして――「目標」が倒れる音。

 

「目標」は、額に、クロスボウから放たれたクォレル(矢)の輝きを宿し、ゆっくりと傾く。

どさり、と

聞こえないはずの音が聞こえた気がする。

「目標」からじわりと赤い絨毯が広がり。

ようやく主の死を知った、共の者が大きな叫び声を上げる。

 

にわかに騒がしくなる城内。

脇に転がった荷物を引っつかみ、中にクロスボウを押しこむ。

立ちあがり、走り出そうとして――よろめく。

久しぶりに立った世界は、ずしりと重かった。

 

木々の間を、滑る様に降りる。

これから、急いで逃げなければいけない。

自分の隠れ家について初めて、「仕事」が終わるのだ。

 

 

     ――アサシン

 

 


 

はいはい、職業物語(仮)、記念すべき第1回はアサシン(暗殺者)です。
いきなりアサシン!?てな感じですが、たまたまイメージが浮かんだのをメモしていたものを発見、ついでだから続きも書いちゃいました(笑)。
このコーナーを見てくれている人なら分かるでしょ?自分のモットーは?
…きまぐれです、はい♪