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けいじが本庁に戻って早二年。ブライアンと初めのうちはメールや電話で朝晩を問わず仕事中まで連絡を取り合っていたのだが、互いに多忙な身であり、いつしかそれは絶えていった。そして半年後には、彼はえみえみに似た娘と同棲するようになったのである。 (もともと俺は女の方が好きなんだよな〜。てゆか、本当にこんな娘いるなんてうはうはらっきいv) 下手をすると自分の娘でも通りそうな少女との同棲が、一年過ぎた頃。事件は起こった。 ある日のこと。彼がコンビニ弁当二つ抱えてーー彼女は料理をしないーー帰ってきたところ、机の上に一通の手紙ともいえないノートの切れ端とおびただしい数の写真が置いてあった。ノートの切れ無しに書いてあった言葉はただ一つ。 「さいてー」 おびただしい写真を見ると・・・。国際けいじとして暮らした数年間の、『輪ゴム口移しでちゅ〜』だの『褌でポロリ!運動会』だの『ブライアンとの旅行で撮った写真』だの、言い逃れの出来ないほどモーでホーな写真たちであった。どうやら、彼の部屋のビデオテープを整理中に発見したらしい。 「・・・・・。」 けいじは、自分でも忘れていたそれらの写真を目の前にして、彼女が去ってしまった事よりも写真に写る『どきどき』した表情の自分から目がはなせない事に驚いた。 「・・・俺、結局・・・。」 その時、彼の携帯がけたたましく鳴った。部下の大迅からの緊急の連絡だ。無意識に写真をポケットにねじ込み、彼は電話を受けた。 「俺だ。」 「先輩、例の取引が20時に廃ビルで行われるとの情報がありました。直ちに急行してください。」 「わかった。すぐ行く。」 「・・・割と平気なんですね」 「んん?」 電話はそこで切れた。部下の最後の言葉について考える暇もなく、けいじは現場に向かう。 取引の行われる廃ビルは、三ヶ月も前から彼らが目を付けていた場所だった。工事の資金が足りなくなり途中で放置されたそれは、上半分が赤く錆びた鉄骨がむき出しになっており、鳩の糞で水玉模様の怪しいモニュメントと化している。先に現場入りしていた大迅に近づいたけいじは、胸に妙な違和感を感じた。それはラザニアの臭い。料理が下手な彼女がゆいいつできる料理で、つきあい始めた頃は毎日食わされたっけ・・・・それが、大迅から臭っていた。 「お前、まさか・・・」 「彼女、相当へこんでましたよ。先輩が日本でヨゴレ芸人していたのしらなかったんですね。今も教えてませんけど。そうそう、さっきの電話のやり取りで、先輩に落ち込んだ様子がなかったんでふっきれたみたいで。はは。可愛いですね、彼女。」 「・・・・・。」 「荷物は適当に処分して置いてくださいな。あなたの臭いのついた者など、僕の部屋に置きたくありません。」 「・・・・くっ」 何か気を落ち着かせないと。けいじが煙草を捜してポケットを探ると・・・・でてきたのは、『ブライアンとおふろで赤ちゃんプレイv』という濃さ濃縮還元のあぶない写真であった・・・・ 「ごんぐぇーっ!!!」 「せ、先輩そこまで取り乱さなくても!!」 けいじの爆発ぶりに大迅も思わず慌てた。慌てて思わずそばの柱をぐっとつかむ!と、それはよほど痛んでいたであろう鉄骨の大黒柱で・・・まさか、それが原因でビル全体が崩れてしまうとは・・・・。 総ての責任は、けいじが負うことになった。 半年もの謹慎期間。これから、俺は何をするべきだろうか。落ちぶれた今の俺にあるのは、一人には大きすぎる3LDKのマンションと、ポケットの中にある・・・・いいや、考えないにしておこう。けいじは土手で空をぼうっと眺める。 「とりあえず腹筋でもするか」 いーち、にーい、さんまのしいたけ・・・・・途中から怪しい数え方になって、きがつくと夕方だ。こんな生活をひと月ほど続けた。 一方そのころ、あるアジトの一室。まるで双子の子猫のように、ブライアンとけんじはダブルベッドの上で丸くなっていた。 「どうしようか、オリジナル。」 「・・・どうしよう」 褌運動会のあと、アベルは平八の家に入り浸るようになり、いつの間にか同棲状態になっていた。体のメンテナンスのこともあり、アベルに電話を取り次いでもらったのだが。 「ふーんだ そんなときにしかアベルのことかまってくれないぶらちゃん嫌い〜!」 ・・・・どうやら、秘密基地に置き去りにしていたのが気に入らなかったらしい。 「俺の体はともかく、オリジナルは半生だから細かくメンテナンスしないと駄目になってしまうな。。。。」 「・・・ああ。そうなったら・・・・また、死ぬ事になる。なんとしてもアベルに戻ってきてもらわないとな」 「。。。。アベルだけで、いいの?」 けんじの言葉にブライアンはごろっと背中を向けた。 「。。。ごめん。俺もさ、徴兵された花朗からもう1年も連絡が無くて・・・気が立ってた。」 ブライアンはまだ背中を向けている。線対称に、けんじも寝ころぶ。 「なんだか、俺、本当にオリジナルのクローンだって今実感しているんだ。こんなに不器用なところとか・・・諦めきれないところとか・・・嫌になるくらいそっくりで。ねえ、笑おうよ?オリジナルが笑えば、僕も笑えて、きっと総てうまくいく。」 「・・・アホか」 オリジナルはけんじの後頭部をデコピンした。 「・・・子供は難しいこと考えてないでさっさと寝な。」 「。。。うん」 二人が無言になったとき、今まで気がつかなかったテレビの音が急に耳に入ってきた。 『鉄拳ON AIRハイビジョンバトル!面白ければプロアマ問わず!優勝者には三島プロ社長の座をプレゼント!!!!』 「「これだっ」」 静かな部屋に、柏手の音が二つ同時に響いた。 「俺けいじに電話してみる」 けんじは立ち上がろうとしたが、オリジナルはそのズボンの裾をにぎり、悲しそうな笑いでそれを制す。 それはもうすべて、終わったことだから。 「鉄拳ON AIRハイビジョンバトル?」 上司の大元からの久々の電話の内容は謹慎の解除ではなく特殊任務の説明であった。 「そう。例のごとく三島プロが怪しいことをしているのでお笑い芸人に復帰して調べて欲しい。」 「・・・・また、けんじと組んで潜入か?」 後ろめたい様子のけいじに気を止めるでもなく、大元は話を続ける。 「今回は、さるイギリス貴族の子息の護衛をしながら潜ってこい。」 「貴族の子息?なんじゃそりゃ」 「ぼくですぅ〜!!!!」 窓をぶち破っていき追いよく登場した水色の物体に、けいじは一瞬ブライアンの面影を見た。よくみるとなんえことない、けつあごってだけだったが。金色の針ネズミ頭に水色にピンクの薔薇模様というきてれつな格好のその青年は図体のでかさの割に無邪気な顔で自己紹介を始める。 「こんにちはっ!ボクはスティーブ・フォックス21歳。ミドル級世界チャンピオンですっ!ウーロンさんの活躍はちっちゃい頃から知ってます!よろしくおねがいしまっす★」 「はあ、よろしく。」 (ミドル級世界チャンピオンかあ・・・俺の護衛いらないんじゃあ) 「ボク、世界中のマフィアに命ねらわれてま〜す★」 「おい。」 「・・・・そういうわけだ。彼を三島の影響でマフィアの影響の少ない日本に連れて行き、守りながら彼の本当の両親を捜しつつ鉄拳ON AIRハイビジョンバトルで優勝してこい。」 「あのー大元さん。やること多すぎるとおもうんだが・・・。せめて鉄拳ON AIRハイビジョンバトルだけでもなくしてくれないか?」 「駄目だ。ボクシング以外の世界でも有名にならなければ、彼の本当の両親は見つからないだろう。よろしくたのむ。」 「ボク、ウーロンさんのこと信じてます!何だってします!だから協力して下さい〜」 もういいっス。 ウーロン、もとい国際けいじは、長いものに巻かれることにした。 そのころけんじは、新しい相方探しに奔走していた。じぶんは恐い顔でぼけだから、どちらかというとファニーフェイスでつっこみの人間はいないものか。 |
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