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番外ボーナストラック 『ライター好き。』
玄関の所で判子を持ったまま、けんじは宅配物がくるのを待っていた。もうかれこれ何時間、彼はこの体勢でいるのだろうか。
ぴんぽーん
かんぱつ入れずにドアが開く。腰の引けてる宅配のおにーさんに「ごくろうさまです」というと彼は光の早さで判子を押し荷物と供に中に消えた。
ニッセ*の通販のヤケに立派で大きい箱の中には、クリスタルグラス製のライター陳列ケースが入っていた。後ろに鏡をつけて、ライターを前から後ろから眺められるという逸品である。けんじは人前では絶対にしないハミングをしながら、あらかじめテーブルの上に用意してあったお気に入りのライターを並べはじめた。
順番を考慮しながら並べたためか、小一時間も陳列にかかってしまった。ホームセンターで買ったカクテルライトで照らすとケースは虹色に輝き、彼のコレクションを幻想的に引き立たせる。ぼけーっとそれを三時間程眺めていた。しかし、明日も仕事があるのでいつまでもこうしているわけには行かない。けんじはライターの入っていた箱を片付けはじめる。
箱の中から、銀の天使の像が出てきた。
これもいれないと。けんじは天使をケースの中央に入れようとするがはいらない。しばらく試行錯誤したが、どうやっても入らないので箱に戻す事にした。箱に戻った天使は、ライターのあった空間を眺めている。そこになにもないのに、百合の花を差し伸べて微笑んでいる。
天使とと対になっていたライターをケースに戻した。そこには天使ガブリエルとマリア様の、受胎告知の図が出来上がる。俺は、いままで何をやっていたのだろう。けんじはすべてのライターをそれぞれの箱に戻した。
目玉焼きをたべながら、ファランはけんじに聞いた。
「ずいぶん豪華な調味料入れですけど、料理好きなんすか?」
「ああ、ちょっとな。」
終 劇
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