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第4段

 カーラジオからは80年代のアイドルの曲が流れている。くわえ煙草のブライアンは不思議そうにそれを聞いていた。

(へた、なのだろうか。。。。。。)

彼は今、日本の高速道路で渋滞に巻き込まれている。どうやら三船は日本にいるらしい、という情報を得たので偽造パスポートでやって来たのだ。多分今、彼は医者になっているはずだ。取りあえず実家に向かってみる。

 三船の家は開業医だ。ドアをあける前に怖がられないようにタートルネックの服で首のタトゥーを隠す。日本語は三船に習ったのである程度出来る。

ゆっくりドアをあける。受付兼看護婦らしい年輩の女性と目があった。

『あら?明の友達?』

『は〜い、ぶらいあんといいますぅ。あきらちゃん、ここにいますかあ☆(そうです。ブライアンといいますが、明さんは今こちらにいらっしゃいますか?。。。といったつもり)』

看護婦の顔がこわばった。日本語のスラングで何か危ないことでもいったのか?とブライアンが悩む。

『あなた、うちの明の何?』

どうやら、三船の母親らしい。

『ともだちいじょうこいびとみまんってかんじ〜(親しくさせていただいておりました。。。といったつもり)』

ブライアンは、おばはんマッハパンチで追い出された。

第五段

 軽いがなかなかいいパンチだった。ブライアンはファーストフードで思い出しながらハンバーガーをかじった。どうやら三船は今、三島の研究所にいるらしい。向いの八百屋のおばさんが教えてくれた。(もしかしたら、何かとんでもない研究をしていて、家族から勘当されているのかもしれない。)自分の日本語が怪しいことに気付いていないブライアンはいつでもまじモードだ。それにしても、よりによって三島の研究所とは。。。。俺は鉄拳衆に命を狙われているのに、その本拠地にいかなければならないのか。

 「おいしい?」

突然の声にブライアンはハンバーガーをくわえたまま振り向いて構える。そこには制服姿のシャオユウとファランがいた。

「ビ*グマックをくわえたままデトロイトスタイルなんて器用だな〜」

「意外と口おっきいんだー。」

二人は同時にそういって、睨み合う。

「何よ、あたしが先に話し掛けたんだからー!」

「お前の話には中身がねーンだから黙ってろ!」

「ファランのだってただの感想じゃない!むっかー!」

口論が始まった。ファランは確かに口喧嘩が強いが、それは男性相手の場合であって、女性の天性の口喧嘩の強さには及ばない。試合は2分30秒、シャオユウの

「Cmだけの癖にロックだって粋がってる男ってやーねー」

が決め技だった。その間ブライアンは周りの客に謝っていた。

 「でさー、なんで日本にいるの?」

シャオユウはシェイクを飲みながらブライアンに聞いた。ファランは店の隅で真っ白な灰になっている。ブライアンは日本語がうまくできないので英語でもいいかと聞いたが、シャオユウが解らないというので日本語で話すことにした。

『三島の研究所にいるあきらちゃんにあいたいのー。でもぉ、わたし鉄拳衆に追われてるじゃない?どうしよっかなーって、なやんでたとこ。』

「アキラちゃんってどんな人なの?」

『わたしの友達以上恋人未満の人なの。』

店内にみょーな空気が流れる。

「でも、なんで会いたいの?そんな危険侵してまで。」

『私の子供が今どこにいるか知りたいの。。。』

「ブライアン、お前まさか女だったのか?」

ファランの突っ込みに二人は目が点だ。

『もしかして話、上手に伝わってないのかしらぁ。。。』

「そういえば男性にしては胸の当たりの肉の付き方がつるッとしてるし色白だし意外とまつげ長いし口びるピンクだし。。。」

ファランは隅っこでぶつぶついっている。

「アホは放っとこ。」

第六段

 場所を変えて話す事にした。このままここで話をしては足がつく。場所はタクシー会社の駐車場の向いにある焼肉屋『ミョンドン』。ファランが住み込みでバイトをしている店だ。

「要するにだ」

本拠地に戻ったのでリラックスするファラン。

「人工受精した相手の住所を三船が消したのかもしれないからぶちのめしてきこうって話だろ?」

『ぶちのめすってほどじゃないんだけどぉ。。。。なにかしってたらおしえてほしかな〜って。ね?』

「そうそう、もう気付いてると思うけど、ブライアンの日本語ってあたしのよーな女子高生見たいな喋り方だよー。ニュースとか見て直さないとね」

『うん、そうするわぁ。シャオユウちゃん心配してくれてありがとね。』

にっこり笑うブライアン。ファランとシャオユウは固まった。

「なんかさー、人間丸くなって無い?大会終わってからそんなにたって無いのに」

『自分でももう何がなんだか解らないから。せめて、いつ出会ってもいいようにニコニコしてようと思って。。。。』

「そんなにガキッていいもんか?」

『会った事無いからわからないけど。。。考えてるだけでどきどきするから、きっといいものだと思うよ。』

「お待たせしましたー、ミョンドンお勧め焼肉盛り合わせ5人前です」

三つ編みの女性が大皿をもってやって来た。

「お、ありがと梨花ちゃん。ガスの方は俺がやるから向こうのお客さんの相手してて」

「はーい。」

 ファランが脇のスイッチを入れると、ぼっという音と共に青白い火が網の下にともる。

ヘッドを菜ばしでさしてすっと油を引いた。甘い牛の油の匂いがする。

「いい肉だから、そんなに火を通さなくても大丈夫だぞ」

肉奉行ファランはカルビを網のうえに並べる。並べ終わった端から裏返すと、網目がついているのに中まで火が通っていない。実に美味しそうに焼けている。

「ほら、こっちからたべな」

もりもり。。。

はみはみ。。。。

はひはひ。。。。

なぜ人は蟹と焼肉を食べている時は無口になるのだろうか。深淵なりけり。

 「なんだ、もう8時じゃん。今日は泊まってきな。」

皿は、五人前用の焼肉皿は、不安になる程山積みになっていた。格闘家3人寄ればざっとこんなものだ。

「あたしは帰るね〜」

『。。。。うに。』

ブライアンは好意に甘える事にした。

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