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第七段

 二人で店を手伝って2時に部屋に上がった。六畳の部屋にはギターとコンポと2段ベッドがある。2段ベッドの下の段は今は使われていないらしく、下着や着替えでごちゃごちゃになっていた。

「ごめん、今片すから。」

そういうとファランはそのうえにマットレスを被せた。ブライアンの基準では片した内に入らないのだが文句は言えない。

『。。。。。。ありがと』

礼をいうブライアンをまじまじと見るファラン。いきなり、その手にそばにあったローションを塗ったくった。

『?』

そして、ブライアンの首を絞めるくらいにきつく撫でる。

『???????!!!!』

ブライアンはくすぐったいような気持ち悪いような変な感覚に捕われた。されるがままにしていると、ファランの手がぴたっと止まる。

「あ、やっぱり。」

その手には、ブライアンの入れ墨。。。。

『きゃる〜ん?!』

ブライアンの目が点になった。これは確か兵役の時になんとなく彫床で彫ったもののはずなのに。。。

「もいっちょ」

顔や胸なども満遍なくローションでマッサージ。すると、傷や銃痕までもがぽろぽろと取れていくでは無いか。

『う、うにぃ?!』

「よーし。シャワー浴びてきな。」

いわれるままに浴びてくると、ゆで卵のようにつるんとしたブライアンが湯気を纏って現れた。ブライアンは、意外に落ち着いていた。

『この体は作り物だったね、そういえば。。。』

第八段

 シャワーから出て来たブライアンにファランはこんな提案をした。

「変装して三島高専に入学しないか?武器科だったら週に3時間研究所の研究者が先公しにくるし、ゼミをとったら研究所にも入れるんだ。」

『と、歳に無理があると思う。。。。』

「あの高専は結構歳いっても入れるから。ダイジョーブ!俺に任せな」

ファランはにやりと笑うと、手に持ったポリ袋を切りはじめた。

「取りあえず髪を染めないとね〜」

 次の日の朝。シャオユウはケータイで呼び出されて、寮からわざわざファランの下宿まで来ていた。朝の飲み屋街はなんかすっかい臭い(ふと思ったがもしかしてこれ方言か?!)がする。下宿のドアが閉っていた。ケータイで呼ぶとお金が掛かるのでカーテンのしまった窓に小石を当ててファランを呼んだ。バンドのロゴをカッティングして貼ってある窓が少し空く。

「今いく。」

ほどなくして降りて来た二人を見てシャオユウは、困った。

 同じオレンジの髪でふかわりょう張りのターバンはめて方や上が夏服下が冬服そしてもうひとりはその逆。足の長さが違うからズボンがつんつるてん。どっからどうつっこんでいいものやら。

「あれ?傷と入れ墨は?」

なんとかつっこんだ。

「なにー?!もうばれたか?!」

『。。。だからよそうっていったのに〜』

「。。。。。。。アホ増量セール中。。?」

朝からやなもんを見た。シャオユウの目は確かにそういっている。

「だったらお前、どうすりゃこいつがうまく変装できるっつーんだ?」

「とりあえず、眉毛書かなきゃ!」

ぺしゃんこな鞄からお化粧セットを取り出し、まゆ墨でブライアンに眉を書く。

「。。。。。。。。。」

「。。。昔あった『まゆげ犬』思い出したぜ。。。」

そう、もともと眉毛が生えるべきところに眉毛の痕跡さえ無いため、その姿は『まゆげ犬』以外の何ものでもなかったのだ。

「。。。。。。。。。ごめんね」

『あやまらないでよ〜。。。。悲しくなるから』

 結局、眉毛と変装セットはアベル博士に送ってもらう事にした。

第九段

 眉毛と眼鏡と焦げ茶の髪をつけたブライアンは、見た目は普通の人になった。ネルシャツにジーパン、背筋がいいのを通り越してそっくりがえった背を曲げると、白人なのになぜかそのへんの予備校生みたいだ。

「びん底眼鏡かわい〜」

「これでブライアンとは解らないな。次は名前だ。なんて名前にしようか?」

『呼ばれてもとっさに反応できるのがいいな』

「でも、あまり本名と近いとばれちゃうよ」

「なんかあだ名とかあるか?」

ブライアンは小首をかしげて考える。

『ジャノメ。。。』

「訳すと間が抜けるなあ。人名っぽく無いし」

「親兄弟はなんて呼んでたの?」

シャオユウの問いに、ブライアンは無言になる。(もしかして親兄弟のいない身の上だったのでは)と二人が思った時、彼の口はゆっくりと開いてこういった。

『。。。。。。。ぴょこたん』

「ぴょこたん?!」

『昔の絵本に出て来たウサギの名前でね、わたしッてほら、色白でしょ?だから、そんなあだながついちゃった。。。』

「。。。血色が悪いだけじゃん?」

「その歳でぴょこたんはな。。」

ヤングな二人は冷静だ。しかし。

『ぴょこたんか。。。』

当の本人は結構気に入っているようだ。だがファランとシャオユウが反対し、協議の結果、ロシア人『ジッポスキー・ピョコタノフ』とブライアンは命名された。

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