|
入試まで後一週間。試験内容は体力テストだけなので、鉄拳大会レベルのブライアンには余裕である。焼肉屋に住み込みで働きながら日本語の勉強をし、その日がくるのを数えていた。
この焼肉屋の向いの公園には桜並木があって、この季節は花見の客向けに宴会の席で焼き肉を焼くサービスをしている。調理師免許が無いのにこんな事していいのかと思いつつもブライアンは肉を焼く事に専念していた。
ファランが肉の追加に店と公園を16往復した頃には、すっかり夜桜になっていた。桜の花の幽かな甘い匂いなど微塵も無く、自己主張の激しい肉の匂いが当たりに立ち篭めていなかったら月に呼ばれそうな美しい夜。肉奉行ぶりが板についたブライアンは交代要員を待ちながら、ファランと公園の隅で立ち話をした。皮肉な事に、公衆便所の脇にあるここの場所が、一番桜の色と匂いを楽しむ事ができる。水銀灯に照らされた桜とその間に覗く月と二つの光に照らされる青白いファランを見ながら、ブライアンはこの光景を以前どこかで見た、と思った。あれは大学の頃。
その公園には桜並木があった。昔、日本と国交ができた時に友好の印に送られて来たのだという。三船に誘われて夜の公園を一緒に散歩した。確かに綺麗だったが始めて行った夜の公園はあんなかんじやこんなかんじで公園のなかはある意味昼間より盛り上がっており、公衆便所の方に向かったら、そここそ盛り上がりの総本山で、もうちょっと居ようという三船の意見を制してほうほうの体で帰って来たのだ。
『。。なあ、ファラン。夜の公園を散歩する二人、というのはどうゆう付き合いだと思う?』
「ホテル代が無くて外で済まそうとする二人。」
『。。。。。。こんなふうに公衆便所の脇にいく二人は?』
「やった後水道で洗って帰る二人。。。。。まさか、ブライアン」
身構えるファラン。少々腰が引けている。ブライアンはため息をついた。
『。。。。。。俺にはその気は無い。だが、かつて俺をこのような所に誘った奴がいた。』
「。。。それが、三船か?」
『そうだ。』
「いや、でも、ブライアンに精子バンクのことを話そうとしていたのかもしれないし。日本人だから危険に鈍感だったのかもしれないし。な?」
一生懸命明るい方に話を持って行こうとするファラン。
『どちらでもいい。奴が真実を話してくれれば俺はそれでいいのだ。』
「そうか。。ところで」
『なんだ?』
「その三船って、俺に似てたの?」
ブライアンは頭をかきながら、月を見て答えた。
『東洋人の顔は皆同じに見える。。。』
「ふんだ。」
『強いていうなら、ファランの方が綺麗だよ。』
「。。。。。。。?!」
『。。。。。。。。。。。』
「なあ、ブライアン。」
『。。。。。。。。』
「桜と月の下で遭うのは止めような。。。」
ほどなくして交代要員が来た。ファランは公園の前の店の寮に、ブライアンは電車で一個先の駅前にある店の寮に帰って行った。帰りの道のりでブライアンはこんな事を考えていた。
『サク@なんとかっていう風にサク@がつく名前の馬って、モ@ンボンの持ち馬なんだよな。。。もしかして桜肉のさ@らからとっているのかな?』
まだ日本語の下手なブライアンは、言葉に奥の意味まで無かった。
一方ファランは夢でうなされた。
|