まんなかへん  さらにまんなか   最後の更新箇所  終わりのほう おまけ。

第一部最終章:『国際刑事・検事』

 深夜2時。渋谷のラジオ局からでてきたけいじとけんじは、雨の中を呆然と立っているフードコート姿のファランを見つけた。けんじはすぐに駆け寄り、その手をとってそばの電話ボックスに入る。けいじもその後に続く。もう夏だというのに雨に濡れたファランの指先も頬も冷えていて、けんじの低い体温でさえ吸い取られるようだ。二人の間に言葉はない。

「あの、お取り込み中悪いんだけど。何がどうしたの?」

けいじは電話ボックスの中に無理矢理入ってきて聞いた。

「。。。おれたちの真の使命、忘れたのか?」

けんじの剣呑とした目つきにけいじは後ずさりしつつ、答えた。

「一応覚えてる!三島プロと麻薬組織のつながりを調べ、あれば内々に組織を壊滅させる事、それが『国際刑事・検事』

の役割。でもよ、ファランは別に関係ないだろ。。」

けんじはフェイスタオルで雨に濡れたファランの前髪そして首筋を拭いながらこう言った。

「。。。。俺が三島にゆかりのあった白師匠に頼んで中にいれてもらった密偵なんだ。歳が近いので三島の孫のジンとくまされると見越してな。。。三島に勘付かれないよう、(先輩にも)秘密にしていた。すまない」

「お前は念には念を入れるタイプだもんな。でも、ここにファランがこうしているって事は、それが裏目にでたッてこと?」

「。。。。。。。済まない、俺が、俺が。。。」

「。。。いや。。。この人数で三島プロと麻薬組織を潰そうとする事自体、無謀だったんだ。ごめんな、ファラン。お前が喧嘩っぱやい事を知っていながら、密偵をさせた俺が悪いんだ。」

ブライアンが謝っている。ファランは首をふり、これから起こるであろう惨劇に恐怖している。もっと、こう、『こうなったら全部破壊してやるぜ!』とか、『。。。裁きの時が来たな』とかいうと思ったのに。予想もしない光景にけいじはなんだかこの世の終わりが来た気がした。

「なあ、反省はおいといて、これからどうするよ?」

「。。。海外に一旦逃げるか。」

けいじ、けんじの首根っこを掴んで叫んだ。

「なあ?!なんでお前らそんなに弱気なんだよ?!!いくら麻薬組織とつるんでいるとは言え、相手は高々一企業だろ?」

それにファランが答える。

「国内だけでなく世界中のマスコミとも、つるんでんだよ!逆らったメディアには三島プロのアイドルも芸人も貸さないって条件でな!その上、警察のトップとも癒着していやがる!」

それをきいても、けいじは落ち着いている。

「そんなのは承知の上だろうよ。なあ、けんじ、いや、ブライアン!麻薬組織だろうがなんだろうが一人で突っ込んで行ったお前はどこにいっちまったんだ?!……目を背けるな!」

ファランのといに答えつつもけんじ。。。いや、ブライアンの事しか意識していない。襟を掴んだまま顔をぐっと引き寄せる。ブライアンの顔にうっすらと汗が滲む。ちがう。俺の知っているブライアンはこんなやつじゃない。もっと不敵で無口で何か企んでいる曲者だったはずだ。けいじは、急に顔を無表情にし、呟いた。

「……お前、もしかしてブライアンの替え玉?」

ブライアンは気が抜けたように壁によっかかりながら、答えた。

「。。。正確に言うと、俺『ブライアン』なのだ。。」

「?どういうことなんだ?」

ファランは震える『ブライアン』の手を握りながら二人のやり取りを聞いている。

「。。。ブライアンのレプリカなのだ、俺は。魂までコピーした試作品第一号なのだが。。。衛星放送を普通のビデオテープにダビングしたように、オリジナルより思考力などが劣っている。。。。」

「本人は?」

「。。。麻薬組織にマシンガン片手に単身で乗り込んでいる。南のルートはもう壊滅させたそうだ。。。」

「あいつらしいな。」

「。。。。俺が、向こうに行けばよかったんだ。俺の替えなら幾らでも作れるし、暴れるのなら俺だってできる。。」

『ブライアン』の震えは止まらない。ファランは手を握っているだけでは不安なのか、後ろから抱き着いて震えを押さえようとしている。

「でもよ、あいつは『けんじ』にはなれなかっただろ、たぶん。」

けいじの言葉に、『ブライアン』ははっとする。

「ま、潜り込んだ時点で三島プロはおろか東京中火の海だな。やっぱりこの作戦はお前が適任だったんだよ、けんじ。」

「。。。。。。。。ありがとう」

 3人は、アベル博士の日本のアジトに移動した。大雨の中電車と貸し自転車をつかい、なんとか痕跡を残さず無事に辿り着く。

「あー!俺、汗だくだ〜。着替えとかある?」

「。。。。俺のならあるが。」

ファランもけんじも、体を動かしたら気がはれたのかいきいきとしている。けいじはほっとした表情で二人を見ていた。

「よかった。シャワーあるよね?ちょっと借りるよ」

「。。。いっそのこと風呂に入ったらどうだ?その間布団をしいておく。」

そういったあと、けんじはけいじのほうをみた。

「。。。。体力が落ちているから、まず休養をとろう。」

「ホントに休養するの?」

「。。。。。。。。。。。。。。。。。」

双方目で合図しつつ無口になる。けいじは、深い事を考えるのを止めた。

「俺は一番向こうの部屋で寝るわ。おやすみ〜」

 万が一(?)休養しなかったら、隣の部屋では睡眠どころではなくなってしまうと思い、けいじは最も入口から遠い部屋で休む事にした。その部屋はベッド以外何もない。つかう事があまり無い部屋なのだろうか?けいじはひさびさに運動して疲れたのか、倒れ込むようにぐっすり寝てしまった。

 バチッ

けいじは頬に鈍い痛みを覚え、うっすらと目をあけた。そこにはコートから何から何まで全身黒のレザーの衣装を見に纏ったけんじが。

「おや〜、SMプレイ?」

ゴキッ

「……俺のベッドに勝手に寝るな。」

容赦ないげんこに、けいじは確信した。

「ブライアンか。」

「わかっているのなら3度は言わない。……俺のベッドに勝手に寝るな。」

完全なる無表情。能面だってこんなに冷たい顔はしていない。けいじはベッドから起き上がると、ブライアンに抱き着いた。

「よっ!本物、久し振りだね〜」

ブライアンはそれを忌々し気に振り払う。

「……俺はお前が嫌いだ。お前も俺が嫌いだったはずだ。なぜ抱き着く?」

「いやさ、ここんとこずーっとけんじと一緒でさ、なんかその顔に慣れちゃった。」

「……俺はお前のそういう図太い神経が嫌いだ。」

罵られながらもけいじはどきどきしていた。大っ嫌いだった頃のブライアンそのままで、懐かしかったからだろうか?彼の小言一言一言が棘のように心に刺さるが、昔と違って、心地よく感じられる。

「……抱き着くな。」

気がついたらけいじはブライアンの腕に抱き着いていた。

 ただならぬ気配に気付いたファランとけいじは拳銃片手にレイの入った部屋のドアを挟んで立ち、2度ノックしてから突入した。

「……久し振りだな。」

そこにはストマックブローを喰らったと思われるレイ(気絶中)と、ブライアンの姿が。

「。。。ああ」

「レプリカントのわりには、二人並ぶと似て無いッすね。」

ファランはしげしげと二人を見比べて行った。

「……人間の顔なんて結局表情だからな。ところで、お前ら、その格好はなんだ。」

「コミケのコスプレの衣装試着していた所だったんだよ〜!わりいかよ!」

「。。。私達はサイズが特殊だから、手直ししないと着られないのでな。この服はわりと誰でも着られるが、ちょっと局部が目立ってしまうので前掛けの布に芯地を貼って表に響かないようにしようかと考えていた所だ。」

ファランもけんじも、とんがり帽子を被り、全身タイツに前掛けがついたような格好をしていた。強いて言うならばさるぼぼに似ている。

「……お前ら、現在自分が置かれている状況が把握できていないのか?」

「もち!」

二人は力一杯返事する。

「何やっていいからわかんねーから、とりあえずもう予定に入っちゃってる物から片付けようと思って。」

「。。。本の方はもう印刷所に出してあるからな。当日会場で受け取ればいい。あとはグッズ作りか。。。」

ブライアンは不意打ちストマックブローで二人を撃沈、皮手錠でけいじも含めて1人づつ拘束室(個室)に縛り付けた。

「……性格が歪んだ分、計画を修正しないとな。」

ブライアン(不幸)、徹夜決定。

 なにごともなく(?)朝は来た。本当ならこの時間、けいじとけんじはお笑いウルトラクイズに、ファランはアイドル雑誌のグラビアの撮影にいっているはずなのだが、まだ一同は寝ている。そんな中、ブライアンは今後の計画を練っていた。

(……マシンガンは念のためあと3丁欲しいな。防弾チョッキは俺とコピーは必要無いが、あの二人には必要だろう。もう二人突入隊員がいればより確実にしとめられるのだが、外部とどう接すれば、足がつかないだろうか?)

訂正。はなから突入しか考えていない彼は、三島プロの奇襲計画を練っていた。PHSも携帯も、逆探知されてしまったら元も子も無い。こんな大事な話は直接あって説明するべきだろうが、みつかってしまったらその時点で計画は挫折だ。

(コピーのやつがあんな腑抜けだったとは。。。計算外だ)

コピーの事で、彼は外部との接触方法を思い付いた。

三畳ほどの大きさの拘束室。皮手錠でけんじは壁に括りつけられていた。

「お早う、コピー。目覚めはどうだ?」

「。。。。。。。最悪だ。」

「……俺も最悪だ。それはさておき。日本国内にスペアのボディーは無いか?」

「スペアか。。。。。」

けんじ=コピーには、心当たりが一つだけあった。しかし、それについてオリジナルは何も知らない。はたして、言ってもよい物か?

「……何でもいい。心当たりがあるなら言うんだ。言わないのならば、記憶を逆読みするだけだ。」

「わかった。。。それならけいじの部屋にある。。。」

「了解。俺はこれからそっちに意識を飛ばす。その間体の管理を頼む。」

けんじの手錠を外すと、ブライアンは地図を見てけいじの部屋との位置関係を調べ、印のような物を結ぶと、床に崩れ落ちた。

「。。。。。。。いっちゃった。」

けんじはけいじとファランの手錠を外して寝室に運んだ。こんな状況でも熟睡している彼等はいったい何ものだろうか。

 ふかふかのお布団、ふわふわのまくら。ブライアンは意識の転送に成功した事を確認すると、ゆっくりと目を開けた。天井の鏡に移っている姿を見て、流石のブライアンも動揺した。

「……ウーロンの変態めが。」

全裸の美少女と化したブライアンは、徹夜の疲れもあったためかふて寝してしまった。

 一方その頃。けんじはごはんを作っていた。ふぁらんもけいじもまだ寝ている。オリジナルが帰ってくるまで寝ていてくれた方が都合がいいかも、などと考えながら茄子のみそしるとみそやんきをつくっていると、匂いにつられて二人が起きてきた。

「う〜す。」

「やんき?今日のは梅干し入れて無いよな?」

ふたりはもくもくもりもりやんきを食べ出した。まだ、オリジナルについては誰も何もいっていない。一同は、御飯を食べ終えた。

「んじゃ、一休みしてから運動するわ。おやすみ〜」

「俺達は便せんの絵でも書いてよっか?他のグッズ類はコンビニコピーで前日でも間に合うしな。」

あの、オリジナルについて何も言わないの。。。?けんじは心の中で呟く。もしかして、夕べの事は夢だとでも思っているのだろうか?

 オリジナルは10分ほど昼寝したのち、服を探すため箪笥の中を漁っていた。メイド服だの尼さんだのマニアックな服だらけで選ぶのに一苦労したが、最終的にセーラー服で妥協した。

「……くそったれ」

仲間に引き込む予定の人物は三名。ファランの師匠『ホーク白』、そして『女同士』の二人である。得に女同士の二人の持つ暗殺術は計画をより確実にするために欠かせない。はっきり言って今の自分の格好は嫌だが、おっかけの女子のふりをして接近できるので便利だ。ラジオ局の関係者入口で張ってみることにする。

「おや?あなたは。。。(さわやかに)」

そこには、変装しているつもりの仁がいた。

「……」

まさか気がつくはずは無い。そう判断したオリジナルに耳もとで仁がささやく。

「けいじ先輩のダッチワイフですね?(さわやかに)」

ブライアンは脳天を打ち抜かれたような気分になった。な、なんで知っている?

「詳しい事はあそこで話しましょう(さわやか?)」

そこは。。。。。目黒*ンペラー石庭?!

「…ちょっとまった」

「ついてこないと騒ぎますよ(さわやかねっとり)」

オリジナルの手を引き石庭に向かう仁。オリジナルの頭の中ではサイモンアンドガーファンクルの名曲『早く家に帰りたい』がぐるぐるまわっていた。

 石庭は、日本最古のラブホテルである。出来た当時「おとうさ〜ん、あそこのおしろにつれてって」と数多くの子供に言わせたという曰く付きの建物だ。

「……何分ぐらいで終わる?」

「すぐですよ(さわやか)」

権之助坂の隣の行人坂を、手を引かれながらおりるブライアン。手のひらに汗をかいている。はたから見ていると、急な坂を支えあって下るカップルに見えるかもしれない。

「始まったら、俺は意識を別の体に飛ばすから……好きにしてくれ」

「?」

坂をおりると、そこは石庭の三軒先のアパレルメーカーの倉庫だった。

「それでは中に入りましょう(さわやかに)」

「……俺の考え違いか。」

「?」

「いや、一寸な……。」

だれもいない事務所を突っ切って倉庫に入ると、そこには白と女同士がくつろいでいた。

「あら?新人さん?」

マニキュアを塗りながらアンナが聞いた。

「……まあ、この姿では解らないか。ブライアンだ。」

一同、彼に視線を集中させる。そして目を見合わせた。

「いくらかかったの?」

「やっぱりモロッコで手術かしら?」

「『身体髪膚 これ親より授かる』!儒教の教えに反してまで何故女性になりたがるのか?私には解らない。」

「……全くお前ら相変わらず最高すぎる……。」

ブライアンは、危険度が高くとも自分1人で突っ込んだ方がよいのでは無いかと悩んだ。

「類友ですね(さわやかに)。」

「……それだけは言わないでくれ。」

流石のオリジナルも疲労のため表情が崩れてきた。彼の頭の中で演奏されている曲はサイモンアンドガーファンクルから山本正之に変わっていた。

 オリジナルはまだ帰ってこないけど、何かあったのかな?けんじは洗濯物を乾燥機に入れながら考えた。あとの二人が散らかし魔のため、家事全般は彼の仕事だ。もう夕方なのに、けいじは寝っぱなし、ファランはグッズの原稿は上がったからTVアニメ『ノートン博士の素敵なこむら返り』のコピー本を作ろうと言ってしこしこ漫画を書いている。昨日のコスプレはノートン博士の助手のサルボボール氏だったりするが、この小説には何も関係が無い。閑話休題。けんじは、待つ事に飽きはじめていた。こうしているあいだにも、オリジナルに何か起きているかもしれない。家事もそこそこにし、武器庫に向かう。

 この武器庫に保管してある銃火気類は小さな国の軍隊並みの量がある。超音波をつかった最新鋭のものから拳銃までありとあらゆるものが揃っていたはずなのだが。。。

「。。。。。。。。。。。」

そこには、がら〜んとした空間と、『差し押えました:佐倉税務署成田市部』とかかれた赤い札が落ちていた。けんじはオリジナルの部屋に走った。そこでは死体のように寝ているオリジナルが。どうやっておこそうか?いや、おこさないほうがいいのか?

「鏡コント?」

気がつくと背後にけいじとファランがいた。

「いや、もう夕方だしオリジナルを起こさないといけないなと思って。。。。」

いま、このなかに魂が入って無いとばれたら、とんでもない事になるかもしれない。少なくともセーラー服は着せられるだろう。

「昨日の夜の事って本当だったんだな〜。おれ、夢かと思ってた。」

ファランはそう言いながらオリジナルの頬に手を当てる。

「。。。。。。」

「いやさ、昨日けいじ先輩も言ってたけどけんじ先輩はけんじ先輩だし。オリジナルのブライアンには何もしないよ!信じてくれ!」

「。。。。。。(あせ)」

「けんじならなにかするの?」

「そこ!突っ込まないでさっさと話を流す!」

「。。つっ込み入らないならぼけるなよ。」

「。。。。。。まずい。どうやら俺達には芯までぼけつっこみがしみこんでしまったようだな。」

一同、無言で目を見合わす。

「ところで、三島が麻薬組織と繋がっているって話、裏は取れたのか?」

「明後日の夜、豪華客船「オベロン号」の上で取り引きするらしいぜ。」

「おべろん?「真夏の夜の夢」か?なんとなく名前が薬物っぽいな〜」

「真夏の夜の夢?」

けんじは何かの暗号か隠語と思い聞き返した。

「むか〜しむかし、オベロンとティターニアって妖精がいてな、それが仲が悪くって、ある夏の。。」

「けいじ先輩ってメルへン星人?」

「。。。メル変星人。。。?」

「あほ!「真夏の夜の夢」は文学作品だよ!」

こぶしを握って言うが、普段が普段のためけいじに説得力無し。

「。。。すると、明後日までに武器とクルーザーを調達しないといけないのか。」

けんじがため息をつく。

「大丈夫!オベロン号は豪華だけど横玉港に停泊してるから武器さえあればなんとかなるぜ!」

けんじ、ますますため息。

「ため息をする度に幸せが逃げるぜ?どうしたんだ?」

それでもため息。

「…又ため息をつくのなら、その口を俺で塞ぐぜ?」

「はい、そこそこー!本気でヤラないならそこでおしまい!!話を戻すッ!」

「。。。はい」

めずらしく強気なけいじの突っ込みで会話が本筋に戻る。けんじは、先ほど武器庫で拾った税務署からの通知を二人に見せた。

「俺達に武器なんて必要無いんじゃないか?」

「武器なんて無いほうが身軽でいいじゃん。」

二人ともお気楽ご気楽なお返事だ。けんじの精神疲労はさらに増した。

「私はともかく。。。二人とも生身だから鉄砲相手では流石にそんな悠長に構えられないだろう?」

「だいじょうび!人間弾よけがいるから!」

ぽんとけんじの肩を叩く二人。

「。。。ひどい。。」

けんじ、ちょっと涙目。

  その頃オリジナルはどうなっていたかと言うと。。。。

「は〜い、次はこれ着てみて(はあと)」

「……俺で遊ぶな。」

女性陣の着せ替え人形と化していた。

「けんじ先輩のほうは自分から率先してやってくれますよ(さわやか)」

「……そういえば、何故三島の孫のお前がここにいる?」

スパッツの上に男物のワイシャツをざっくり羽織ったノーブラのブライアン(ルリルリ風)はいぶかしげに仁を眺めた。

「ファランが脱走したあと、僕が情報を漏らして逃がしたといって、祖父にヘリコプターにのせられ、上空2500Mからつきおとされました(さわやかに)」

「……よく生きてるな。」

「父さんと母さんの血に助けられました(さわやか)」

そういうと共に仁の背中が盛り上がり、紫がかった黒い羽がマントのように広がった。いつの間にか額には怪しい紋様が浮かんでいる。

「体を覆う黒い羽は父の抱擁として……額のこれは女性器を表しているのか?」

「いきなりフロイト心理学を持ち出されても困ります(さわやかでない汗)」

淡々とした一同に、仁はちょっと腰が引けている。鉄拳Q(人海戦術系お笑い集団)は驚いてくれたのに。

「その話はまたこの次するとして……俺のアジトに行こう。全員で段取りをきめなければ。」

淡々どころか気にも止めていない様子でオリジナルは話をすすめる。

「いや、せっかくふたてに別れているのだ。見つかる危険を侵すのなら、このまま突っ込むべきで無いか?」

影の薄い白が、毅然とした声で言い放った。

「……俺は、この体ではとても戦闘は出来ない。」

「それもそうね。でも、白さんの言う事も一理あるわ。あなたが人間トランシーバーになって向こうとやり取りして、最終的に向こうの体で突入すればじゃ無い?」

アンナがブライアンの髪を三つ編みしながらいった。ニーナはラメピンクのマニキュアをブライアンの手に塗っている。

「……それもそうだな。一寸向こうに報告してくる。」

再び印のような物を結ぶと、ブライアンのからだはくたっとくずれた。

「マニキュアくづれた(怒)」

ニーナはぷりぷりしながら除光液で爪を拭った。またつけ直す気のようだ。

  

ぼこっ

寝ているとおもっていたオリジナルに頭をいきなりぶん殴られ、ウーロンはベッドの上から転がり落ちた。そう、先ほどからの会話はベッドの上に正座をして行われていたのだ。起きたブライアンはのびをしたあと首を鳴らし、自分の体にもどった事を再確認した。

「……三度目だ。俺のベッドに乗るな……」

「まだ覚えてたのかよ〜」

ウーロンは頭を押さえながら睨み付けた。

「。。。向こうはどうだった?」

「……白と女同士、そして仁がいた。あいつらはここに来ないで直接向こうにいきたいそうだ。」

「???」

まだ説明されていないウーロンとファランは目が点だ。

「。。。客船に突入する話だ。オリジナルが幽体離脱して外の連中と段取りを決めているのだ。」

「幽体離脱〜?オカルトめいて来たな〜」

「……永久機関のデータが手に入らないので、現在は黒魔術も応用してこの体と魂を維持している。オカルトと言われればそれまでだ。」

「そのほうがすごいじゃん!!」

けいじとファランのつっこみ。

「……大量生産にむかないのが難点だがな。それに、魔術を使うと感情ができるので、物事に対して応用が効くが使い捨てには向かなくなる。」

「軍隊向けにはやっぱり永久機関か〜。」

「……使用者の好みがうつろい易い愛玩用やセクサロイドも永久機関のほうがいいな。感情を持つと……辛くなるから。」

一同、無言。

「セクサロイドって何?」

お前が持ってるやつじゃー!!!」

けいじの発言に一同まじげんこ。

「あ、えみえみのこと?動くように改造してもらえるの?いくらかかる?」

「……お前には人間の女だけでなくレプリカントも所有する資格が無い……」

オリジナルはかなり疲れているようだ。さきほどまでそのセクサロイド(えみえみ)に入っていたのだから仕方ないが。

「。。。すると、向こうは向こうでやるって事だな。。。。」

「さっきの発言だけど、「所有する」ッて所、婦人団体からクレーム来ないか?」

「。。。今は放送中じゃ無い。。。」

けんじとふぁらんは今までの話を台本のように校正しながらまとめていた。同人誌のネタにする気なのだろうか。

 決行の日の朝。けんじが夜中にオベロン号に侵入するための荷造りをしているときのこと。派手に地面が揺れ、食器棚が、本棚が、酒瓶が床に散乱した。睡眠時間を調整していたけいじも飛び起きたといえば、その大きさが解るだろうか。ファランが『逆探知されるかもしれないから見るな』とオリジナルにいわれていたTVを思わず慌ててつけると震度4、との文字が。

「おもったより小さかったな。」

ステテコ姿のけいじが目を擦りながら画面を眺める。次の瞬間、一同は目を疑った。

『横玉 震度6 引き続き情報がはいり次第お伝えします』

「ブライアン!ジン達に向こうの様子を聞いてくれ!」

ファランが叫びながら振り向くと、そこにいたのはけんじだった。

「オリジナルは?」

「。。。。ここにいないの?」

 もうすでに横玉入りしていたジン達は、オベロン号の見えるホテルの庭に避難していた。正確にいうと、ホテルの従業員に無理矢理誘導されてしまっていた。

「ねえ、ジン。目立ったらまずいんじゃ無い?ココは一旦カラオケボックスにでも逃げて。。。」

アンナがえみえみを白の背中にのせながらいったが、返事が無い。

「…ジン?」

どこにも彼の姿は見えない。

「とんでった」

ニーナの声は、ただ淡々としていた。

 「ながぐそかな?」

呑気なけいじの発言を聞きながらニュースを食い入るように見る。震源地に近い横玉がうつった。横玉港の映像には、まっぷたつに割れたオベロン号が。

「。。。。まさか、向こうの連中がどさくさまぎれにやったのか?」

次に、赤いヘルメットに青いジャケットをはおったジンとブライアンが写った。

「ぼへっ」

アンナ達一行、そしてけいじ達はテレビの前で仰け反った。テロップには、

『当局で現在放送中の29時間テレビの出し物『スターぽっきり(秘)TV』の締めを夜からここで生放送するはずだった 若手お笑いコンビ『パンチキッヅ』の風間仁さんと、『国際けいじ・けんじ』のけんじさんのオリジナルさん』と。。。。。。

「半年も伏線貼っていたのにまさか自然災害でダメになるなんて思っていませんでした(超さわやかに)。」

……子供の時からプラカードを持って突っ込む事を夢見ていたのだが、まさかこんなことになるとは。はっきりいって悔しい。」

。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。

『なんじゃそりゃー!!!!』

このとき、アンナ、ニーナ、白、けいじ、けんじ、ファランの心が一つになった!仁とオリジナルの話はまだ続く。

「ヘリコプターの望遠カメラや隠しカメラの前で演技するのは大変でしたが、とてもいい勉強になりました。(汗がプリズムになるくらい爽やか)」

……調子に乗って結構視聴者の方をどきどきさせる発言をしてしまった事もあったな。(照れながらも負けずにさわやか)」

アンナがはっと気がついてえみえみをしらべると、えみえみ自体がカメラでマイクだった。

けんじが自分の体を調べると、首の所から発信用のアンテナが出ていた。

 一同は、自分が今すべき事を一瞬に理解した。

「。。。。横玉港に、なぐりこみに、行くぞ。。。」

「もっち!わかってら〜!!!」

「俺ももちろんいくぜ!ジンのやつに一発蹴り入れねーときがすまねぇ!」

 「姉さん、ハリセンあるよね!」

ばこっ

「あたしじゃなくて、ジンに使ってよ〜!!」

「いわれなくても みんなやっちゃう。」

「…再教育だ!ジンなんて教育した覚えは無いが再教育だ!」

みんないきいきとした表情で武器を手にとり、表に踊り出す。

「電車だと間に合わないな。けんじ、なにでいく?」

「。。。明日はどさくさ演芸場で仕事だから、車庫の事務所の車で高速に乗って行こう。」

「そだな、今日はこれから横玉、明日はどさくさ演芸場。明後日は渋野のwest…いそがしいなあ!楽しいなあ!」

「。。。ああ、楽しいな。。。。。」

そういったあとけんじは口の中で呟く。

「。。。。嬉しいな。」

(第一部 完)

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