no title
それは、街の食堂でいつものように昼を食べていた時だった。
突然、思い出したように、ウルフが持ちかける。
「なぁ、ヴァッシュ・・・食事っつうのは、・・・SEXと変わらんって知っとるか?」
今まさに昼飯のスパゲッティーを、口いっぱいに頬ばった瞬間だったヴァッシュは、目を白黒させている。
「・・・何?突然言ってるのさ・・・君は・・・」
ようやく、口の中のモノを飲み下したヴァッシュは、その昼飯に合わない話題に、あからさまに抗議した。
「本能に忠実な行為やんか?」
「はぁ・・・」
要領の得ない顔をしたヴァッシュを後目にウルフは淡々と続ける。
「オンドレがな・・・こう・・・食べ物を食べるとするやん?」
「・・・う、うん」
ご丁寧に身振り手振りまで付けて、何だかこの男が楽しそうな時はロクな目に会わない事を段々と思い出してきたヴァッシュはこの場を逃げ出したい気分にさせられた。
「そないするとな・・・昨日の夜にな・・・飲ませたのを思いだすんや」
「え?何を?」
一瞬何を言われたのか、真剣に分からなかったヴァッシュは止せばいいのに聞き返してしまう。
「ワイのや・・・忘れたんか?『もう、飲めないよぉ・・・』って 泣いてたん、オンドレやんか♪」
「・・・・・・?!」
とたん、昨夜の事を思い出して耳まで真っ赤になってしまったヴァッシュは、俯いて顔を上げられなくなってしまう。だが、ウルフの意地悪は止まらない。
「オンドレも考えへんか?ワイがパンを口に入れる時に、オンドレの・・・・って思わへんのか?なぁ?なんで答えへんの?」
答えられる訳が無い。それでなくても、そういう事に免疫の少ないヴァッシュがこんなに人の多い場所で、そんな話題に付いていける訳が無い。
だが、そんなヴァッシュを余所に、ウルフは上から下まで舐めるようにヴァッシュを見つめる。下を向いたヴァッシュにまで分かるような・・・
うなじから、肩・・・そして脇腹を降りて・・・その先は・・・。
「止めてよ!!」
突然の大声に、食堂のざわめきが一瞬止まる。自分の声が予想外に大きかったのに、自分で驚いてヴァッシュも凍り付いてしまう。
「えろう、すんませんな・・・気にせんといてや♪」
今までの夜の瞳が嘘のように、満面の笑みで周りの人々に愛想を振りまいて、ウルフはその場を納めてしまった。
「・・・・ずるい・・・」
「なにがや?」
その後の言葉を続けられなくて、ヴァッシュは唇を噛んだ。
「君は・・・ずるいよ・・・」
同じような言葉しか続けられないヴァッシュを、ジッと見つめていたウルフは突然席を立った。
「ほな、行こか?」
「え?!どこに?!」
突然の行動に付いて行けなくて、ヴァッシュは顔を上げた、とたん、ウルフと目が合う。
「オンドレが素直になれるトコや♪」
「・・・こんな昼間から・・」
後を付いて歩きながらポツリとこぼしたヴァッシュの言葉を、ウルフは聞き逃さなかった。

「何、言うてんねん♪ワイら『新婚さん』やないか♪」
「・・・・・・!!」

一番、言われたくない言葉を天下の往来で、大きな声で宣言されて、今度こそ、ヴァッシュの時は止まってしまった。

確かに、昨日ウルフはヴァッシュに『結婚してくれへん♪』と、言ったのだが、いつもの冗談としか受け取らなかったヴァッシュは返事をしていなかったのだ。もしや・・・、とウルフに尋ねる。
「もしかして・・・・怒ってたの?」
「何がや?」
「だから・・・僕が・・・その・・・」
言いにくそうなヴァッシュの唇に、ウルフは指を当てる。
「ええから・・・黙っとき・・・この後、『嫌っ』ちゅう程言わせたるわ」

「ワイの嫁さんになるてな♪」

からからと、笑うウルフに、この後何をされるのか蒼白になるヴァッシュが
だが、大人しく後ろを歩く姿は注目の的であった。

この後・・・めでたく二人は『新婚さん』になれたらしい?


ともやさんとこのウルフはいつもながら口が上手いと思うの〜♪
無理言って頼んだ甲斐があったというものですわ!ありがとう、ともやさん!

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