ぼーん、ぼーん
柱時計が、時を寂しく告げる。
誰も聞くもののいない、時を………
炎
全てを燃やし尽くす炎
炎の燃え盛る中、彼女はいた。
吹き抜ける黒い風が、彼女の長い髪を舞い上げる。
彼女の目の前にあるのは、ちぎれた人形。
もう、誰も遊ぶものの無い、玩具。
そっと、彼女はその手に力を込める。
その手の中にある、温もりを少しでも逃さない様に……
理不尽な力で奪われた、小さな命の炎を逃さない様に
炎は巻き起こる
また、別の時、別の場所
いまだ、炎は巻き上がる、血と憎しみに満ちた炎が……
彼女は、また炎の中立ち尽くす。
守れなかった、一つの命の前で………
理不尽な力で奪われた、一つの命のために。
どんな大義をかざそうとも、かまいやしない。
大陸の統一を望むのも罪な事ではないのかもしれない。
でも、なぜ、ここで命が奪われた。
何故?
こんな無力な者を殺さねばならない。
何故?
なぜ?
ナゼ?
ナゼ?
香るのは血と硝煙の香り
激しい音
ぶつかり合う無表情な鉄の塊
炎は巻き上がる、あの火、あの時と同じ炎が……
鉄の塊が一つの家を踏み潰す
空を舞う鋼鉄の鳥が炎を降らせる
炎の中、燃え上がる家の中、ボタンで出来た瞳を持つ人形は何を思うのか。
焼け跡に佇む熊のぬいぐるみの瞳は何を思うのか。
もはや、遊ぶ人のいないそれらは何を思い、何を見るのか。
炎はまた上がる。
今度の望みは何?
千年王国の建設のため、王道楽土の建築?
だけれども、その名の下に命は消えていく。
無力な小さな命が……
何故?
なぜ?
ナゼ?
何故奪われなければいけない?
その信じる神によって
属する国によって
民族によって
何が違うのだ?
光
太陽のような光
数瞬の後、巻き起こる炎
何が起こったのか分からぬまま消える命
生きながら炎に包まれる、人
何故、このような事が起きた。
彼等の国は他国の人を同様に踏みにじったのかもしれない。
命をまるで虫けらのように奪ったのかもしれない。
されど、なぜ、なぜ、なぜ?
同様に何故、命を奪わねばならない?
なぜ?
問おう、光と炎の饗宴の前。
眼下で無邪気に遊んでいた、子供に罪はあったのか?
問おう、再度?
汝等は言う。
より多くの命のための必要悪だと。
問おう?
同様にされ、光の中、炎の中散っていって。
汝等は同様に言えるのか?
問おう、再度?
祖国の統一のため?
神の王国の建設のため?
正義のため?
千年王国、王道楽土の建築のため?
何故、ナゼ、ナゼ?
そして、復讐。
その国の王は言った。鉄の鳥を操りし、悪い魔法使いを倒すまで、我々の騎士団は引き返すことはない、と。
そして、巻き起こるは、正義と、言う名の虐殺劇。
騎士達が使いし、火の槍は、人を焼き、家を打ち崩し、更なる悲劇を世界に蒔く。
王は言う、まだ終わらない。
まだ終わらない、と。
悪の魔法使いを倒すまで、我らが正義の剣は留まらない、と。
王よ。
王よ問おう。
汝、それが本当に正義だと信じるか?
王よ、何故気がつかない。
王よ、何故鏡を見ない。
鏡を見れば解ること。
鏡を覗けばわかること。
王よ、汝の探し人は、鏡の向こうにいる。
少女はただじっと、空を見上げていた。
蒼い、蒼い空を………
ふと思い出した、小さな命の事を思い起こしながら。
炎の中、理不尽な力により、消えていった命を思い起こしながら。
「シャオ?」
背後からかけられた声に、少女は振り返る。
そこに少年がいた。
心配そうな表情を
「あ……」
「どうしたんだい、泣きそうな顔、してたけど」
「ねえ、太助様……」
少女は少年に何かを尋ねようとした。
でも、止めた。
代わりに少女がしたのは………
「少しの間だけ、ですから」
少女の柔らかい感触が、 少年の腕の中に広がった。
甘い良い香りと、暖かな温もりと共に……
少年は何かを言おうとしたが、止めた。
ただそっと、少女のその長い髪を梳いてあげた。
瞬間、堰を切ったように零れる涙と、鳴咽。
あの日と同じ、蒼い蒼い空の下、少女の涙がただただ零れ落ちる………
後書き
月天作品を書いた中、一番重い作品を書いてしまった……
でも、一言だけ言いたかったから。
何故、消えねばならなかったのか、と?
ここに書いたのは、甘い意見なのかもしれない。
間違っていると思う人もあるかもしれない。
でも、書きたかった。
だから勢いに任せて書いてしまいました。
なんか、上手く言葉は出ませんが……
こんな、作品に最後まで付き合ってくれた貴方に感謝します
それでは……
再録にあたっての後書き
はい、八月という理由じゃないですけど、僕の書いた中で、もっとも異色な作品“祈り”、少々の加筆を加えて再録です。
加筆と言っても、昨年起きた事件を踏まえて、もう少しだけ自分の意見を加えただけですけどね。
ま、とりあえず不満でも、反対意見でもなんでも聞かせてくれると嬉しいですね。
ま、不満、反対意見があっても、きっとイデオロギーの問題にかかわると思いますから、僕とその人の意見はずっと平行線をたどるような気がしないでもないですけどね(苦笑)
ま、それでも、僕は意見を聞いてみたいと思いますけどね。
それでは、またいつかどこかで別の作品でお会いしましょう。
PS どんな怪談よりも、幽霊話、怪奇現象体験よrも、僕個人としては生きている、アメちゃんの大統領の方が怖いと思う今日この頃(苦笑)
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