最近シンジは考え込むことが多くなっていた。

それも、アスカの様子のことで・・・
 
 
 
 

それは、11月も終わりのある日・・・

突然アスカが、

「なんでこの家には、クリスマスツリーやリースがないの?!」

と騒ぎ出した。

シンジの

「三十路前の女の人が1人クリスマスなんてする分けないよ」

というフォロー(?)も虚しく・・・

家の中は、アスカがクリスマス道具を探し回った後で東京夢の島になっていた。

その片付けをしているシンジに、

「ないなら買いに行くまでよ!」

と言いだし、シンジは、街へとクリスマス用具一式を買いに(荷物持ち)にかり出されたのだ。
 
 

その、クリスマスのための買い物も一通り終わった後にアスカが、

「アタシはちょっと用事があるからあんたは先に帰ってなさい!

帰る途中で壊したりしたら承知しないから!」
 
 

その日の2・3日後からアスカの様子がおかしいかった。

夕方は帰りが遅い。

夕飯の後はすぐに部屋に入って行ってしまう・・・

時々その部屋の中から、

「もーうっとおしい! なんでこんなに複雑なのよ!」

という声も聞える。

 今日も夕飯を食べ終わったかと思うと部屋に入って行ってしまった。
 
 
 
 
 
 

        一方アスカは部屋の中で・・・
 
 
 
 
 

「はぁ〜まったく難しいわね!」

とぶつぶつ言いながら忙しく手を動かしマフラーを編んでいた。

なぜ、マフラーを編んでいるかと言うと

シンジと買い物に行く一週間前のヒカリの部屋で・・・
 
 

アスカはヒカリにシンジへのクリスマスプレゼントのことで相談した。

「ねぇ ヒカリ もうすぐさぁ〜クリスマスじゃない?」

「そうね・・・ 何?碇くんにプレゼントするの?」

「そ そ そんなわけないじゃない! 誰があんなバカシンジに!」

「アスカ・・・ いいかげんに止めれば?」

「・・・うん」

「碇君にプレゼントあげたいんでしょう?」

アスカは無言で頷いて

「そうなんだけど・・・ 今まで人にプレゼントなんてあげたことないから・・・
                                どんな物を上げればいいのかな?って・・・」

「う〜ん そうね・・・ やっぱり手編みのマフラーじゃない?」

「でも ヒカリ〜 アタシ編物なんて出来ないよ」

「大丈夫! 私が教えてあげるから! それにアスカは飲み込み早いから大丈夫よ!」

「そうかなぁ〜?」

「アスカって碇君のことになると途端に弱気になるよね?」

「・・・うん アタシ頑張る!」

「それじゃ さっそく・・・ 道具は貸してあげるから」

「えっ ヒカリは鈴原の分はいいの?」

「う〜ん 実はもう作ってあるの(ぽっ)」

「ふ〜ん」(しらけ目)
 
 

そういうわけで、アスカはクリスマス用具一式買いに行った時にシンジには先に帰ってもらい毛糸を買出しに行っていたのだった。 

そして今、せっせこマフラーを編んでいる。
 
 

そんな事をシンジが知るわけもない・・・

「どうしたんだろう? アスカは・・・ もしかして僕といるのが嫌になってしまったんじゃないのか?」

などとお皿を洗いながらぶつぶつと独り言を言っていた。
 
 
 
 
 

 クリスマス・イヴを一週間後に控えた夜だった
 
 
 
 
 
 
 

5日経ってもアスカは、学校が終わると

「シンジ今日も寄るところがあるから先に帰ってて!」

と言われてしまった・・・

そんなシンジを見たトウジは

「センセー何かあったんかいな?」

すると欠かさずケンスケが

「どうせシンジがデリカシーのないこと言って惣流を怒らせたんじゃないか?」

と言った。

すると、すかさずシンジが反論した。

「そんな事はないと思う・・・」

がこれは説得力に欠ける・・・

「ここは、クリスマスにプレゼントを渡してぱっと仲直りしてまえや」

とトウジが口を出した。

「・・・そうしようかな。 でも何を上げればいいのか分からないんだ・・・」

と、シンジが俯きながら応えた。

「そんな事ワイらに聞かれても困るわ

  さしよりセンセーがもらって嬉しい物がいいんとちゃうか?」

というトウジの言葉を受けシンジは学校の帰りに商店街に寄ることにした。
 
 
 
 

 街の中を見渡しながら歩いていると、シンジはショウウィンドウに飾ってある、腕時計が目に入った。

赤い文字盤の腕時計・・・

「これをアスカがつけると似合うだろな・・・」

そう思ってシンジは店に入っていった。
 
 

 

   その頃アスカは部屋の中で懸命にマフラーを編んでいた。
 
 

「だいぶ 上手くなってきたかな?」

と独り言を言っていた。

「このアタシがあんただけの為にこんなに努力してんだからね! ちゃんと喜びなさいよ! しんじ〜(はぁと)」
 
 

う〜ん それにしてもいつ渡そうかしら・・・

クリスマスパーティーの後・・・

月の出たベランダで・・・

「ありがとう 僕のアスカ」

な〜ん て言ってくれたりして・・・きゃー
 
 

と妄想の中を旅していた。

自分の手元で着実に長くなっているマフラーにも気付かず・・・
 
 
 

翌日、放課後の教室では・・・
 

「ねぇ 今年も皆でクリスマスパティーしない?」

という、ヒカリが提案した。

「それじゃあ家するわよ! いいわよね? シンジ!」 というアスカに押されシンジは何も言う間もなく頷いた。

もとから、シンジに断る気はなかったが・・・

「それじゃ 私もお料理を少し作ってくるね」

少し遠慮気味にヒカリが言った。
 
 
 
 

その後、アスカはシンジを1人で帰らせマフラーの包装を買いに言った。
 
 

一方シンジは学校のあと例年行なわれるクリスマスパーティー(もといバトルロワイヤル)の為の買出しに行っていた。

「えっと・・・ ミサトさんとリツコさん加持さんに・・・あっ 父さんもくるかな? それじゃあ もっと買っとかなくちゃ・・・」

とぶつぶつ言いながら買い物をしているシンジには、もう立派な主夫のオーラが漂っていた。

 

 家に帰って来たシンジは早速、その日のパーティーの準備に取り掛かった。
 
 

「洞木さんも料理作ってきてくれるって言ってたから・・・量はっと・・・」

もうここまでくると少し哀れである。
 
 

時間はあっという間に過ぎクリスマスパティーが始まった。
 
 

始まるなりさっそく役割分担が決まっていた。

トウジ、ケンスケ、アスカは料理消費役

ミサト、赤木博士、指令、副指令は酒消費担当

加持は酔っ払いのお守り担当

レイは・・・位置付けが難しいが一応傍観役

もちろん、シンジ、ヒカリは生産役にまわっていた。
 
 

一通り暴れまわった後で、ミサトの
 
 

「二次会へ行こう!」
 
 

コールと共にこの家での、パーティー(もとい宴会風バトルロワイヤル)はお開きになった。
 
 

その後、粗方部屋の方付けが終わり、リビングでテレビを見ていたシンジはベランダにいたアスカに呼ばれた。

「ねぇ シンジ こっち来てくれない?」

「えっ なんで?」

「うっ なんででもいいじゃない! いいから来なさいよ」

「分かったよ・・・でも少し待ってよ」

と言って、シンジは自分の部屋に入っていった。

少し経って部屋から出てきたシンジとアスカはベランダで、どちらとも話さないまま5分近く経とうとしていた。

その時、アスカから

「ねぇ シンジこの前は1人で荷物持って帰らせてゴメンね」

と俯きながら言った。

「ねぇアスカ サンタクロースって世界中の子供にプレゼント配ってるのに、疲れないのかな?」

アスカは頭に?を浮かべながら

「なに? いきなり・・・」

「いいからさぁ」

「サンタなんていないわよ!」

「そんな事言わないでよ。いたとしたらだよ」

アスカが首を傾け考えていると、シンジが

「僕はこう思うんだ・・・ 
サンタクロースの袋の中には思いが詰まってるんだと思うんだ。プレゼントはそれが形になっただけなんだと思う。
だから思いを世界中に配ってまわっているサンタクロースは疲れないんじゃないかな?
 だから・・・ 
アスカの楽む顔が詰まってるクリスマスの道具を運ぶ事なんて全然つらくなんてなかったよ。」

それを聞いたアスカは、口元を緩ませ

「ばかシンジ・・・」

と呟いたあとで、

「実はね・・・ あの後この材料買いに行ってたんだ・・・」

といって、青いラッピングがしてある包みを取り出した。

「初めてだから上手くはないけど・・・ その・・・ 受け取ってもらえないかな?」

と自信なさげに言った。

シンジは何も言わずに受け取ると、アスカの前に小さな箱を取り出して、

「それじゃ これお返しだよ。 本当は最近アスカが変だったからその理由を聞こうと思って買っ

たんだけど・・・」

アスカも無言で受け取った・・・

 
      沈黙が2人を包む・・・
 
 

          でもそれは

    

     心が満たされるような・・・

    

       
 
 
 

突然、シンジが口を開いた。

「これ開けてもいいかな?」

・・・コクン・・・

アスカは無言で頷いた。

シンジが、包装を破らないように気をつけながら開ける。

初めてとは思えないほど目の細かく揃ったマフラー

が・・・

シンジがそれを広げてみると・・・

ちょっと長い・・・

「初めてだから・・・」

ともう一度アスカが呟いた。

すると、シンジは

「そんな事はないよ アスカ」

              
 
 

そのシンジの言葉の通り、アスカが夢中になりすぎて長くなってしまったマフラーは、
寒空の下の2人にはちょうど良かった・・・