殺人国家


MURDERS’ISLAND (殺人国家)



「人は誰も、殺意を理性という仮面で隠している」

オレは、人を殺してみたいと何度も思った事がある。
人を傷つけたい、苦痛を与えたい、
そして、その儚い命を奪ってみたいと・・・。
人は本能に、殺意の衝動を持っている。
それは決して、おかしいことではないのだ。
理性、常識、そして法律・・・
これらの論理が俺を殺人とは無縁に遠ざけていく。

事実、人間の歴史は殺戮に成り立っている。
戦争という名の大義名分で、それらは事実から被い隠されている。
所詮人という生き物は、殺さずには生きられないものなのだと。

オレがその広告に目を止めたのも、押さえ切れない殺意が
敏感に反応したからかもしれない。

『人を殺したい、他人を傷つけたいと思ったことはありませんか?
そんな悩みを解決致します。秘密厳守 電話○○○−××××』
新聞広告の隅に綴られた、たった2行の文章・・・
その文字の羅列が、オレをその世界へと導くきっかけだった・・・

おそるおそる携帯のボタンを押す・・・
コールが一回、また一回と鳴る度に、心臓の鼓動が高まっていく。
5回、6回、7回・・・出ない・・・
やはり悪戯だったのか、そう思って切ろうとしたその時、
プツッ、という音と共に、冷ややかな男性の声が返ってきた。

『はい、もしもし』
「あ、あのっ」
一瞬返事に詰まる、何と話し掛ければいいのか
『新聞記事をお読みになりましたか?』
「え、あ、はい」
『解りました、では後日、お伺い致します』
「え?、あ、あの、それはどういう・・・」
『それでは後程・・・』
プツッ、という音と共に、その会話は打ち切られた。
僅か1分足らずの会話・・・
その会話が何を意味するのか、今の俺にはまったく解らなかった。

それから3日が過ぎた。
あの時の電話の返事は何もない。それはそうだ。
こっちからは何も喋ってないのだから。
バイトの帰りがてら、コンビニに寄って食事を買う。
そして帰路に付き、狭いワンルームで食事を取る。
そんな毎日の繰り返しの日々がまた戻ってくる。
そう、ほんの数秒前までは・・・。

ピンポーン
チャイムの音が鳴り、来客を示す。
また新聞か、それとも悪友でもやってきたのか。
「はい、いまいくよ」
しかし数センチ開けたドアの向こうには、オレの期待した答えはなく、
そこには見知らぬ男が立っていた。

『藍月 慎也さんですね?』
「はい、どちら様ですか?」
『数日前、お電話を頂いたでしょう?、貴方から』
俺はしばし凍り付いた。
あの電話・・・それは冗談や悪戯ではなかったのか?
だとすれば、それは何の意味を持つというのか?
『とりあえず・・・、上げて頂いても宜しいですか?
ここは人目に付きますので・・・』
「は、はい・・・どうぞ・・・」

改めて尋ねてきた男を見回す。
黒いシングルのスーツ、やたらに細い眼鏡・・・
オールバックの下にある無表情な顔に細い体。
年齢は20後半から30という所だろうか。
そして小さいアタッシュケース・・

「あの・・・」
ようやく口を開くことができ、疑問の言葉を投げかける
「ここはどうやって・・・」
『藍月 慎也・・・昭和50年8月12日生まれ・・・血液型A・・』
「!?」
わずかに開いた男の口か出た言葉は、間違いなく俺の生年月日だった。
『趣味は映画鑑賞、もっぱら戦争映画を好み、最近ではナイフの収集に
凝る。かっとなる性格で大学時代に喧嘩多数あり、なお中、高校在学中に苛めの経験あり・・・』
「・・・」
『両親は健在、長野県に在住。体調は至って良好、現在フリーアルバイター。』
すらすらと出てくる俺のプロフィール・・・しかも寸分違わず。
『・・・以上。なにか間違いはございませんか?』
「なぜそのことを・・・貴方はいったい?!」
『貴方が望まれたんでしょう?、人を殺す事を・・・。』
眼鏡の奥の細い目が、少しだけ下がる。
それにつられるかのように、わずかに口元に笑みを浮かべている。

「それで、どういう事なんですか?」
『貴方には、新しい世界が待っているんですよ・・・』
「新しい世界?」
『そう・・・人を自由に殺せる・・・貴方の望んだ世界がね』
「そんなのある訳ないじゃないですか?法律ではどこの国も殺人は
認めていませんよ?許されるはずがない!」
『なければ作れば良いのですよ・・・新しい国をね』
「作る?」
『論理も法律も無い、弱肉強食の世界・・・
人間は本来より持つ殺意を隠さずにはいられない、そう・・・』
『・・・それは貴方が一番ご存知なのではないですか?』
「!?」
『私共は、そういった方をお連れするのが仕事なのです。楽園にね』
「そんな馬鹿げてる!、冗談みたいな世界がどこにあるっていうんですか?」
『信じる必要はありません。貴方はこれからそこに向かうのですから・・・』
「なんだって?!、それはどういう・・・」
反論しかけたオレの目の前に、男が懐から出した黒い金属棒が目に留まる。
どこかで見た覚えがある・・。あれは・・・スタンガン!!
一瞬の出来事だった・・・フローリングの床に崩れる俺を、
部屋に入ってきた数人の男達が担ぎ上げて運び出す・・・。
薄れる意識の中、スタンガンをしまいこむと
その男は嬉しそうに俺をみてこう言った。
『ようこそ、新しい世界へ・・・。』



気が付くとそこは狭く薄暗い部屋の中だった。
四辺は鉄壁で囲まれている。分厚そうな鉄のドアに、
丸い小さな窓・・・僅かではあるが、揺られている感触。
立ち込める潮の香り。
ここは洋上で、しかも船の中だと気づくのに、そう時間はかからなかった。
電撃の痺れはすでに取れ、身動きはとれる。どこも怪我ななさそうだ。
ドアに歩み寄ったその時、向こうからノックが聞こえてきた。
返事をする間もなく、重たい扉が開かれる・・・

『どうも、ご機嫌はいかがですか?』
あの男だ!、俺にスタンガンを浴びせたアイツ・・・
『もう痺れも取れてるころだと思い、説明がてらにお食事も御持ちしましたよ。』
人を嘲るような口調と笑み。たまらなくなって俺は怒鳴りつけた。
「いったい何のマネだ?!、今すぐここから出しやがれ!!」
胸座をつかみ、殴ろうと拳を振り上げる。
が、振り上げた手はヤツに届く前に空中で停止する。
それと同時に腹部に強い衝撃を受け、崩れるように倒れ込んだ。
「くはっ!」
『困りますねえ、向かう相手は私じゃありませんよ。』
平然と口調を変えずに、男は掴んだ右手を放して話を続ける。
『全ての準備は整いましたよ。あと1時間もすれば貴方の望む世界へ着くでしょう。』
「な・・んだと・・」
腹に力を込めるが僅かな言葉を紡ぐのがやっとだ。
『貴方はそこで生きるために、そして本能の赴くままに殺し、或いは殺される・・』
『多くの同士が貴方を待ち望んでいますよ、新しき得物としてね。』
「どういう・・ことだ・・」
『世界各国・・・人類には貴方のような殺意を隠し切れない人材が大勢います。
いつかは犯罪を犯すやもしれない人間・・・どこの国でも持て余すんですよ、
そういった輩はね。そして年々増え続けている・・・。』
『だから、そういった獣達を世間から削除する為に、各国が相談して出来上がった
秘密裏な国・・・それが殺人国家、MURDERS ISLAND(マーダーズアイランド)・・・』
「そんな・・・事が・・・」
『そこでは全てが許されます。殺人、拷問、窃盗、強姦に至るまで。
世間とはまったく干渉はありません。たとえ何が起ころうともね。』
「俺は・・・そこに行くのか?・・・」
『それが貴方の望みですからねぇ・・・。殺したいだけ殺せばよいんですよ。
では、食事を置いていきますから』
食事の入ったトレイを床に置いて、男は立ち去ろうとした。

『ああ、そうそう。あらかじめ断っておきますが・・・』
開きかけたドアを前に、くるりと振り向いて言葉を続ける。

『あそこから出ることは出来ません、たとえ死体になってもね。
全ては極秘に、闇へと葬られます。全ての過去も。
貴方の経歴は既に抹消されています。日本には貴方という存在は
もうないんですよ。』

ギイ、バタン。
扉の閉まる音と共に、全ての音がその場から消えた・・・。
俺にとって最後の、今まで持つ論理と常識が終る最後の瞬間だった。


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ども、風のきつねです。(^∇^)/
最近は小説もめっきり書かなくなりましたが、
米英vsイラクが始まっちゃって、これじゃイカンと思って
つい人の命ってなに?と思って書いちゃいました。
しかしいかんね、書体が会話ばっか(笑)
本当はもっと話が進むんですが、みんなの反応が恐くなって
とりあえず切っちゃいました。^^;;
もし続きが読みたいと言う大変奇特な方がおられましたら、
続きを書きたいとは思いますが^^;;

へたくそな文章で申し訳ないです。
皆様の意見、ご指導が頂けると何よりです m(_ _)m ペコ

風のきつね
wind_fox@mb.i-chubu.ne.jp


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