11話  別れ

      ☆ ヤガパールがリールを抱いてエルザのいる牢に向かって歩いています。
       ☆
   エルザ☆ 「リール、リール!」
       ☆
       ☆ エルザは牢から大声で叫びました。
       ☆ ヤガパールは牢を開けるとリールを床に寝かせました。
       ☆
   エルザ☆ 「リール、リール・・・・」
       ☆
ヤガパール☆ 「心配するな。気絶しているだけだ。」
       ☆
       ☆ ヤガパールは近くの棚から牢に二人分の布団と包帯を持ってきました。
       ☆ ヤガパールはリールに手際よく包帯をまいていきました。
       ☆ あっという間にリールの全身は包帯に包まれてしまいました。
       ☆ ヤガパールはリールを布団に寝かせるとエルザにも寝るように言って牢を出て行きました。
       ☆ エルザは自分の布団をリールの布団にピッタリくっつけて敷きました。
       ☆ それから布団に寝転がるとリールの手を軽くにぎって目を閉じました。


       ☆ リールが拷問された日から2日がたちました。
       ☆ よほど疲れていたのでしょう。リールはまだ眠ったままです。
       ☆ エルザは寝転がったままリールの顔をじっと見つめています。
       ☆
   エルザ☆ 「リール・・・」
       ☆
       ☆ エルザは小さな声でリールを呼びました。
       ☆ その時、エルザはリールのまぶたが少し動いたような気がしました。
       ☆
   エルザ☆ 「リール!」
       ☆
       ☆ エルザは叫びました。リールがゆっくりとまぶたを開きました。
       ☆
   リール☆ 「エルザさん・・・・」
       ☆
       ☆ リールは視界がはっきりしないらしく、まだ朦朧としています。
       ☆
   エルザ☆ 「リール。」
       ☆
       ☆ エルザは心配そうに呼びかけました。
       ☆
   リール☆ 「エルザさん。」
       ☆
   エルザ☆ 「よかった。2日も起きなかったから心配したんだよ。」
       ☆
   リール☆ 「2日・・・・・あの・・・拷問は・・・?」
       ☆
   エルザ☆ 「もう終わったんだよ。」
       ☆
       ☆ リールはゆっくりと上半身を起こした。
       ☆
   リール☆ 「終わったんですか?」
       ☆
   エルザ☆ 「そうだよ!ありがとう、リール。」
       ☆
       ☆ エルザはリールをぎゅっと抱きしめました。


       ☆ 二人はそれからしばらくの間、色々話していました。
       ☆ そしてリールが起きてから30分ほどたった時、「コツコツ」という音と共にドバールがやってきました。
       ☆
  ドバール☆ 「大広間でヤガパール様がお待ちだ。」
       ☆
       ☆ ドバールは牢の鍵を開けると、先に立って歩いていきました。
       ☆ エルザは布団に座っているリールをそっと抱き上げました。
       ☆
   リール☆ 「あ、エルザさん、わたし、自分で歩きます。」
       ☆
   エルザ☆ 「その傷じゃ無理だよ。」
       ☆
   リール☆ 「でも・・・・・・・・・」
       ☆
   エルザ☆ 「リールはわたしのために苦しんだんだからさ、わたしにもなんかさせてよ。ね?」
       ☆
   リール☆ 「エルザさん・・・」
       ☆
       ☆ リールは少し下を向いてなにか考えているような仕草をしました。
       ☆ でもすぐに顔を上げてエルザを見つめました。
       ☆
   リール☆ 「ありがとうございます、エルザさん。」
       ☆
       ☆ エルザは少し驚いたような表情をしましたが、すぐに笑顔になりました。
       ☆
   エルザ☆ 「じゃ、行くよ。」


       ☆ 大広間につくとヤガパールが床の一段高くなった所にいすを置いて座っていました。
       ☆ ドバールはヤガパールに敬礼をし、エルザとリールに床に座るように言いました。
       ☆ エルザはリールをそっと下ろすと、自分の横に座らせました。
       ☆
ヤガパール☆ 「リール、よく俺の拷問に耐えたな。最初頼んできた時は、どうせすぐ根を上げるだろうと思っていたが、
       ☆  意外と我慢強いんだな。約束どおり、エルザを解放してやろう。」
       ☆
   リール☆ 「ありがとうございます。」
       ☆
       ☆ リールは床に手をつき、軽くおじぎをしました。
       ☆
   エルザ☆ 「リール、本当にこれでいいの?これから毎日働かされるんだよ。拷問もされるかもしれないんだよ。」
       ☆
   リール☆ 「心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫です。
       ☆  大丈夫ですから、エルザさんは安心して家に帰って下さい。」
       ☆
       ☆ リールは微笑しました。でもそれは誰にでもすぐに作り笑顔だとわかる微笑でした。
       ☆
   エルザ☆ 「リール・・・」
       ☆ (リール、どうしてなの・・・これからはあの日よりももっと辛いことがたくさんあるのに・・・。
       ☆  一生辛い生活を送ることになるのに・・・。わたしのためにここまで・・・・)
       ☆
       ☆ エルザの目から涙がこぼれ落ちました。
       ☆
   エルザ☆ 「リール、もう会えないの?帰ってこないの!?」
       ☆
       ☆ エルザはリールの手をにぎり、必死になって叫びました。
       ☆
   リール☆ 「エルザさん・・・(もう会えないんだ・・・こんなにわたしのこと心配してくれてるのに・・・)
       ☆
       ☆ リールの目からも涙がこぼれ落ちました。
       ☆ エルザはリールを抱き上げて、膝の上にのせると唇にキスしました。
       ☆ リールは驚いたようにエルザを見つめました。
       ☆ エルザはそんなリールをみて微笑し、もう一度キスをするとそのままぎゅっと抱きしめました。
       ☆ ヤガパールはそんな二人を凝視していましたが、すぐに我に返ると二人をそっと引き離しました。
       ☆
ヤガパール☆ 「さ、行くぞ、エルザ」
       ☆
       ☆ ヤガパールはエルザを無理矢理ひっぱっていきました。
       ☆ リールはよろよろしながらその後をついて行きました。
       ☆ 外に出ると空にはまだ朝もやがかかっていました。
       ☆ 屋敷の前には馬車が一台とまっています。
       ☆ ヤガパールはエルザと共にその馬車に乗り込みました。
       ☆
   エルザ☆ 「リール、帰ってきてよ!わたしずっとリールのこと待ってるからね。」
       ☆
       ☆ リールは頷きました。
       ☆ ヤガパールは御者に目で合図をしました。
       ☆ 鞭の音が静かな朝の山にひびき、馬車が走り出しました。

 

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