誘拐
男は少女を誘拐しました・・・というより気づいたら連れてきていました。
いけないいうことは百も承知でしたが、つい悪の心が動いてしまったのです。
(ああ・・・連れてきちまったよ・・・まずいことしちまったなあ・・・いまさら返すわけにもいかないし・・・)
男が悩んでいると少女が話し掛けてきました。
「あの、これってやっぱり誘拐なの?」
男は下を向いて黙り込んでいます。
するとまた少女が話し掛けてきました。
「わたしを誘拐したこと後悔してる?」
男は驚きました。そしてゆっくり顔をあげ少女を見つめました。
少女は男の顔をしっかりとみつめると、にっこりして言いました。
「もし後悔してるなら、いますぐわたしのこと放して。今ならまだ帰ってくるのが遅かった口実を適当に作れる時間だから。」
「えっ・・・」
男は少女のせりふに驚き無意識のうちに声を発していました。
少女はまたにっこりしていいました。
「大丈夫だよ。絶対誰にも言わないから。」
男はまた下を向いてしまいました。それをみた少女は男の顔をのぞき込むといいました。
「早くしないと時間切れになっちゃうよ」
気がつくと男は少女の手を離していました。少女は男の肩をかるくたたいていいました。
「ほんとに誰にも言わないからね。」
男は顔をあげ少女をみつめました。少女はもう一度にっこり笑って言いました。
「時間がないから、わたし帰るけど、元気出してね。それから・・・」
少女はちょっと真顔になってから、またにっこり笑いました。
「もう、こんなことしちゃだめだよ。だってわたしじゃなくて他の人だったらきっとおまわりさんに言っちゃうから。ね?」
男はうなずきました。男の肩に手をおいたまま少女が言いました。
「約束だよ。」
男はもう一度うなずきました。
少女は安心したような笑顔になり、「じゃ、バイバイね。」と言ってかけて行きました。
男は夕日に映える少女の後ろ姿をいつまでも見送っていました。