ある日の風景〜優等生組(?)編〜
長閑な日和の放課後。 「…ん〜。」 そんなホームルームが終わって間もない時間の高等部の生徒会室の、部屋の一番奥の窓側の席で。革張りの椅子に腰掛けたまま、生徒会長であるトパスは一つ伸びをする。で、すぐに脱力して軽く首を動かした。 「トパス、目を使い過ぎなんじゃないのかい?」 「…聞いてたのか。」 あはは、と笑ってこの部屋に何故かついている給湯室から出てきたクリストが紅茶を生徒会長用のでっかい木製の机に置いた。 「今日は静かだからね。まだ☆」 にこっとウィンクしてクリストは大きな生徒会室の扉の方を指した。 「珍しいといえば、珍しいよな。 ねぇ、オパール。トパーズは?」 ふと声をかけたトパスの言葉に、軽くオパールは反応を示しこちらを向く。長い三つ網がその動きに合わせて大きく振れた。 「トパーズは、今頃理科室の掃除よ。」 「ふぅん。」 其処まで答えて、オパールはまた今日の仕事を片付けるべく机に向き直る。 「…そういえば、トパス。」 「うん?」 「生徒会室って、どうして『仕事のあるもの以外立ち入り禁止』とかにしないんだい?」 確かに、クリストの言葉どおりにすれば確実にこの三人以外は限られた用事のある者しか入れないだろう。 「…んー。…でも、そうすると一般の軽い用事の生徒とかも入れなくなっちゃうし、それに…」 それに。と、続くトパスの言葉が言い終わるか終わらないかのうちにぱーんと勢いよく生徒会室の扉が開いた。 「オパール♪ 手伝い来たよ♪」 「トパスーっ。遊び来てやったぞー♪」 ちなみに、セーラー服をこれまたしっかり着こなした青年がオパールの双子の兄であり、体育委員なんぞをしていたりする。で、二人目となる元気いっぱいな学ランの麗人はキラアレイト。期待の美術部部長である。 「…早かったのね。」 「うん♪ あ、これやればいいのか?」 「えぇ、そう。」 トパーズは早速オパールの机まで行って手元で処理されていた書類を一枚取り、確認をとる。オパールも軽く手元の書類から顔を上げて兄の顔を見てそう端的に答える。 「キラアレイト…。其処まではっきりと…。」 「だって、嘘じゃないだろ。 あ、この菓子貰うぞ〜。」 「はいはい。どうぞ。」 その一方で、少し苦笑してみせるトパスにキラアレイトはいつもの顔で即答し、応接用…という名目で置かれているソファーに座ってクリストに笑いかける。クリストもいつものことなので、自分の席へと戻りながらそれに答えた。 「?誰だろう。 トパーズ、開けてくれない?」 「あ、うん。 どちら様〜?」 一番扉に近かったトパーズが生徒会長の言葉に直ぐに立ち上がりドアノブに手をかけた。…が、不意に扉が思いっきり開いてガンッとトパーズの顔が固い木製の扉に当たった。 「痛っー。」 「あ。悪ぃー。もしかしてぶつけた?」 顔を押さえてしゃがみ込むトパーズを見下ろして、ナルシーは片手で御免という意思表示をする。 「それはそうと…一番此処に寄り付きそうも無い奴が…何の用だ?」 また面倒事か? あはー☆そうとも言うv 「……。」 一瞬、トパスとナルシーが一方はこめかみに手を当てながら、一方は至極にこにこーっといった笑みを浮かべ見つめ合い…その一瞬で上記のような会話がとりかわされていた、らしい…生徒会長が溜息をつく。それを了承と受け取ってナルシーは笑顔で生徒会室の扉をもう少し開けた。 「落し物届けに着ましたーv」 「って、僕は落し物じゃなーいっ!」 開かれた扉から半ばナルシーに押し入れられるように入った学ランの少女はまだこの部屋にいる麗人2人に比べれば幼い印象で。この学園内ではさして珍しくはない金の髪に紅い瞳をしていた。 「んー。なんだ? 迷子か?」 「生徒会って、迷子の保護もするんだ〜。」 「普通、高等部の生徒会じゃまずやらない仕事だと思うわ。」 「僕は迷子でもなーいっ!」 当事者である少女をほったらかし、扉の近くにいた先程入ってきた2人が話し出し、軽くそれにオパールが突っ込みを入れた。が、更に少女は顔を赤くしそうな勢いで抗議をする。恐らく、此処に来るまでもずーっとナルシーがその事でからかっていたのだろう。 「まあまあ、お菓子でも食べて落ち着き給え。この学園で迷ったんなら、相当歩いただろうしね。」 「へ? あ、有難う。」 そんな場の中で一人クリストはマイペースにのほほんとした笑顔で紅茶を淹れ出す。まぁ、ある意味からかわないだけ一番大人なのかもしれないが。ほぼ傍観者という立場を会得している辺り素晴らしい。 「さて。では、これにて俺は退散します☆ 生活指導させられちゃたまんねーもんっ。」 「あ、こらナルシーっ!」 「それでは皆様、御機嫌よう〜v」 高笑いと共にナルシーが扉を閉めるとほぼ同時に、ぱたぱたと走る足音とナルシーを呼ぶ青年の声。…恐らく、いつもナルシーとつるんでいるターフだろう。それに合流したらしいナルシーもやはり何か「まずい。」や、「第五ルートを使おう」などと言いながら廊下を走り抜けた。 「どうかしましたか?先生方。」 一見して、すぐに奥に座っているトパスが少々改まった口調でにっこり笑って応対する。が、無論いつものことなので其れに対して他のメンバーは全く反応することなくそれぞれの仕事をこなしていた。 「ねぇ。今ナルシー達来なかった?」 「えぇ。来てましたが。」 「あぁ。やっぱりっ。 …一足遅かったわ。」 「アイーの勘って当るねー。本当。」 くぅっと悔しがるアイーを他所にスイが軽く笑う。そしてなにやらこの騒動に巻き込まれてきたらしいメノウは…疲れていた。 「スイ…。アイーが走り出たからって、僕まで引っ張ってくるのは…。」 「だって、貴方だっていつも授業抜けられてるじゃないですかっ。」 「そうだけど…。」 ねっ。と力説するスイの力強い紫の瞳に気圧されて、メノウが押し黙る。 「まぁ、彼らも迷っていた女生徒を此処まで連れてきてくれたところですから。」 「あ、そうなの?」 「えぇ。今其処でクリスが作ったお菓子食べてる…彼女ですよ。」 トパスの言葉にはっと気付いたアイーにトパスはすいっと応接用のソファーを指した。其処では、ちゃっかりクリスト、キラアレイト、トパーズ、そして迷子になっていた少女がすっかりお茶会をしていた。 「…って、こら。なにそこお茶会始めてる。」 「トパスもくるかい?美味しいよ?」 あはは、と至極爽やかに笑ってクリストはトパスにカップを向けた。…相変わらずのゴーイングマイウェイさだ。 「あ。美味しそう〜。私も食べて良い?」 「どうぞ。まだあるから。」 「美味く焼けてる。才能あるねぇ。」 「まだ先生の足元にも及ばないさ。」 「あ、俺に紅茶おかわりー。」 「俺もー。」 …。わいのわいのと、いつの間にか教師達もお茶会にまざって一部は華やかにはなった。…。なったのだが…。 「…あの紅茶とか…生徒会予算でおちる?」 「無理、でしょうね。」 今日も今日とて、生徒会長の長い溜息が部屋に漏れた。 「ふふ。頑張れよ、生徒諸君。」 …と、いうか。何でこんなところにいるのかすら誰にも見当が付かない。強いて彼女に問えば「雰囲気がそれっぽいから」で切り返されそうともいえなくない人物。
あとがき 学園もの小説2。今回も多岐に渡ってお子様入れてみましたが…。どうしてもいけなかったとこもあって残念(くぅっ) 03.09.28. |