||| 天羅万象 リプレイ 傀儡の嫁入り 1 |||
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序幕 其の壱 乙部の城にて 若武者/出雲志狼 乙部の城、奥の間で憂いを帯びた表情を浮かべる若者が一人。事故で亡くなった跡取り、乙部速斗付きであった出雲志狼である。 不慮の事故とは良くいったもの。跡取りの命はこの若すぎる親友であり家臣である志狼によって絶たれたものであることを知る者は少ない。そして事実を知る者も、その口を堅く閉ざしている。なにより、それは速斗が負けるはずはない試合での出来事であったから。そして、その結末は誰より速斗自身が望んだものだったから。真実は闇の中。 そんな中、志狼は事実を知る風間早雲に呼び出された。 GM すぐ上の階には城主が、その上には姫がいるところ(天守閣のよ うな感じ)があり、数人の限られた家臣しかあがることの出来な い間なので、しんとしています。 志狼 「風間様、出雲志狼参りました…」 GM 志狼が奥の間に向かって声をあげると、やっとふすまの向こうで 気配がしました。 風間 「うむ、はいってくれ。」 志狼 「…失礼します…。」 GM すると、風間は書き物をしていた手を止め志狼に向き直りました。 志狼 「お呼びにより参上仕りました…。」 風間 「こちらに呼んだのは他でもない、姫のことなのだ。実は……… 姫は命をねらわれている」重く、静かにいいました。 志狼 「咲良姫が…?なぜ、姫が狙われねばならないのですか?」 風間 「うむ、どうやらこの婚儀を快く思わないものがいてな。」 GM ここで、志狼は思い出します。 志狼 何をでしょうっ? GM えっとですね、お国事情ってやつでして、ちょうどこの国と咲良 姫が嫁ぐ国、そしてもう一つ反対隣の国と「長らく三ツ巴」状態 だったわけです。表立って戦争しているとかそういうわけではな いのですが、虎視眈々と伺いあう仲だったわけでして。 そのうち2つがこの結婚で結託してしまったら……… 志狼 残った一国は・・・なるほど GM さらに、この輿入れが失敗してこの国が潰れたりすれば………っ てことで、姫の輿入れを失敗させようとしているのでは?という ことですね。 志狼 りょうかい。 風間 「そこで………折り入って頼みがあるのだ。」 志狼 「はい…。」 風間 「姫を、内密に送り届けて欲しいのだ。」 志狼 「内密にですか…?」 風間 「輿入れは行わないわけには行かぬ。だが、道中が一番危険なの だ。そこで敵の裏をかき、姫には先に向こうの領に入っていただ く。無論、手練のものをつけるつもりだが、ここの城のものをつ けては目立って仕方がないのだ。」 志狼 「では、私と後は、姫のお付きの晶羅殿…他は外部の者にという ことでしょうか?」 風間 「おお、晶羅殿のことは知っておったか。ならば話ははやい。晶 羅殿だけではいささか……いや、失言だな。腕は買っているのだ が、多勢に無勢となれば話は別だ。」 志狼 「晶羅殿とは面識があるだけです…。」 風間 「うむ。他に旅のサムライと銃槍使いを雇うことが出来た。その ものたちには、私の娘を隣領まで送り届けて欲しい、といってあ る。」 志狼 「なるほど、確かにその方が危険は少ないでしょう。」 風間 「どうやら、この城内にも間者がいるらしいのだ。ぐずぐずはし ておれぬ。さっそく今晩旅立ってはくれないか……?」 志狼 「わかりました、出立の準備をいたします。」 風間 「………咲良姫には幸せになってもらわねばならぬ。」ふと、目 を伏せて 志狼 「…ええ。」 風間 「たのむぞ。くれぐれも、道中誰にも姫であることを悟られぬよ うに。」 志狼 「わかっています。(…速斗…。咲良姫は必ず護る…)」 風間 「姫には私から話しておく。雇ったものは今夜、城門まで来るの でそこで合流してくれ。」 志狼 「かしこまりました…。」と刀に手をやる(鯉口は封印してます) 風間 「日が落ちたらまた、誰にも気付かれずにここまで来てくれ。無 論、誰にも……そなたのお父上にも内密に。どこからもれるかわ からんのでな。」 志狼 「はい…。(親友を殺した剣で、親友の妹を護ることが今の俺に できるのか…?)」 風間 「ところで…志狼殿、そなたは姫を……」 志狼 「咲良姫は我が妹と思っております…それすらも臣下しては出過 ぎたこと…。」 風間 「では姫は………この輿入れで幸せになれると思うか………?」 志狼 「…風間様…それにつきましては、申し上げるのは分が過ぎるか と…。」 風間 「そうであるな。姫は…姫なのだから。」 志狼 「それは…『あの時』から、私は変わっていません。心以外は… (ぽつり)」 風間 「いや、またしても失言であったな。今の言葉は忘れてくれ。」 志狼 「いえ…。」 GM ぽつりというと、風間は志狼に背を向けました。 風間 「すまぬ。ではまた日暮れに。今も何処で誰が耳をそばだててい るともわからぬ。くれぐれも、目立たぬように。頼んだぞ。」 志狼 「では、失礼致します…。」 そして志狼は人知れずひっそりと墓参りを済ませると、夜に備えた。 咲良姫は守る。この命にかけても、必ず。 序幕 其の弐 乙部の城にて 戦闘用傀儡/晶羅 一方その頃。今し方通り過ぎた階でそんな話が出ているとは知らず咲良姫付きの晶羅はいつも通りの朝の支度を終わらせ姫の元へと急いでいた。 晶羅は剣姫………師につけられた名は『月蝶』という、美しい傀儡である。 しかしまるで祝酒を嗜む盃のように塗られたその小指がなければ、いや、人間とは異質なその指があってすら木塊であることを忘れさせる身のこなしと姫への細やかな情は、城内でも一目置かれていた。 そして何よりその風貌。美しすぎるその容姿は人目をひかずにはいられない。 尤も傀儡であるからこその容姿であるのだが… 晶羅 「…姫さま」 咲良 「………」なんだかぼんやりとしています。ここ数日、こんな感 じです。 晶羅 「ほーらっ。こんなのできます?」(どこからともなく取り出し た手鞠三つでジャグリングおてだまをっ) 咲良 「………?………すごい……晶羅はほんとうになんでも上手です ね…」ふと、表情を和ませます。 晶羅 「い、いえ、それほどでも…あっ(汗)」(気がそれた拍子に落 して顔面にごちっと) 「どーも調子に乗り過ぎたようで…(たはは)」 咲良 「ぷっ…くすくす…もう晶羅ったら………ごめんなさい、つい、 ぼんやりしてしまって。もうすぐ………もうすぐですのに。」 晶羅 「…何、想ってるか、当ててみましょうか?」 咲良 「え………?」 晶羅 「あの方の、こと」 GM 咲良の、表情が一瞬で崩れます。 咲良 「ほんとに……晶羅はなんでも咲良のこと知っているのね……」 晶羅 「図星…ですか」 咲良 「晶羅………!」急に咲良はしがみついてきました。 晶羅 「はい。」(しっかと受け止め) 咲良 「ほんとうは………ほんとうは知らないところにお嫁に行くなん て、いや!あの方とも………晶羅とも離れなくてはいけないなん て、絶対にいや…絶対にいやです!」 晶羅 「姫…」 GM 細い肩が晶羅の手の中でみるみる小刻みに揺れています 晶羅 「晶羅は、姫様のためにここに居ります。他の、誰でもなく」 咲良 「晶羅………」しがみついていた腕に力が入りますが、それは一 瞬で今度はそっと、胸から離れようと押し出されました。 晶羅 ちょっとためらってから、手を離す 「…何があろうと。どこへ行こうと、それだけは変わりません」 咲良 「ごめんなさい……これからは晶羅には頼れなくなるんですもの、 しっかりしなくてはいけないですよね。晶羅にはほんとに世話を かけてしまいました。」 晶羅 「それは、こまります。…たまには、晶羅のことも思い出してい ただかないと」(すっげえまぢめな顔)「…さみしゅうございま す」 咲良 「父さまがね、咲良がお嫁にいったら晶羅は自由にして下さるっ て約束してくれました。咲良は晶羅を縛り過ぎていたから、これ からは自由に…」 晶羅 「縛るなど。…ってーかむしろ縛られてるくらい必要とされて嬉 しかったんですけど」(ころっとな) 咲良 「………!咲良はっ!咲良は絶対に晶羅のことを忘れたりはしま せんっ」うつむいていた顔をバッとあげる咲良。その大きな瞳か らはまた大きな水滴があとからあとから溢れてくる。 晶羅 「(うっ)」 咲良 「………ほんとうに?………ほんとうはもっと早く自由になりた かったのではありませんか?」おそるおそる 晶羅 「(かっ…可愛いっ)」(こら) 晶羅 「私が、姫様に嘘ついたこと、ありますか?」袂で涙ふきふき 咲良 「いえ………ありません……」素直に拭かれつつ 晶羅 「よろしい。…できるものなら解き放ってあげたい。あなたを。」 咲良 「晶羅………」またもや、ひしっとしがみつかれます。 「大丈夫…です……明日からは、明日からはちゃんと『乙部の姫』 に戻ります。もう晶羅を困らせたりはしません。でも、今だけは ………このままでいさせて下さい…」 もう止まらなくなってしまった涙で晶羅の胸元を濡らしながら…… 晶羅 「はいはい、私の薄い胸板でよければ、なーんぼでもお貸ししま すから」 咲良 「それから咲良の、最後のお願いを聞いて下さい…。」 晶羅 「何でしょう?」 咲良 「晶羅は……晶羅はちゃんと幸せになって下さいね。そして…… たまに、ほんとにたまにでいいので、咲良のことも思い出して下 さい……」 晶羅 「思い出しません」 咲良 「…やっぱり……わがままだったですね…」顔はあげず、腕だけ に力が入ります。 晶羅 「……忘れるはず、ないから。」 咲良 続く言葉を聞いて、涙でぐちゃぐちゃになった、それでも美しい 顔をあげて、さらに強く抱きつきました。 晶羅 「ひ、ひめ…」 咲良 「晶羅………ッ 晶羅…………!」 晶羅 「あ、アバラが、その、今ちょっと、めきって、めきって(汗)」 GM 晶羅の声はすでにとどかず……… 晶羅 (めきめき…) GM (ああっ、死亡にダメージがっ(嘘)) 晶羅 (おそるべし、乙女ぱわー) 晶羅 「(あーほんと、このままどっか連れてっちゃおうかな…何て)」 GM どれくらいたったでしょうか。いつの間にか泣き声はやみ、咲良 は眠りに落ちていました。 晶羅 「(考えてどーするよ、晶羅…)」 「人形が…姫さま愛でてちゃ逆だわな…」 (そっと髪の毛なでつつ) GM 眠ってしまった咲良を抱きつつ、そんなことを考えていると、廊 下に人の気配。 晶羅 「…」すっと手を懐の分銅にやりつつ 「どなた?」 男 「晶羅殿、ちょっとよろしいか」聞きなれた声。家臣の風間の声 である。 晶羅 ちょいちょいっと姫さまの身支度正してから「…どうぞ」 GM すると、ふすまがゆっくりと開かれる。もちろん、知った声の持 ち主が知った顔で佇んでいる。いつもと違うといえば、少し顔色 が悪いかもしれない。 風間 「姫は……お休みですか。」ちらり、と腕の中を伺うと、そのま ままた視線を床へ戻す。 晶羅 「これは風間どの、おかわりなく…ってなこと言うとる場合じゃ なさそうですね」 風間 「さすが晶羅殿、さっしがいいですな。折り入って話があるので すが。」 晶羅 「何ぞ、問題でも?」 風間 「姫のことはもう知ってましょうな。」 晶羅 「お役目ですから」かしっと左の義指かるく噛む 風間 「それではこの輿入れが今のままではけして上手くは行かないこ とも。」 晶羅 「名代ともなればお目も肥えていましょうしなあ」 風間 「だが、この婚礼は成功させねばならぬ。………幸い、向こうに 姫の顔を知っているものは居らぬ。」 晶羅 「では…摺り替えるおつもりで?」 GM 風間はだまったままうなずいた。 晶羅 「いつ?」 風間 「手筈は整いつつある。そこで…晶羅殿は姫と共に今晩ここを発っ て欲しいのだ。」 風間 「この婚儀を快く思わない者も多い。実際探らせたものが先日命 を落としている。」 晶羅 「願ったりかなったり、かぁ…」へっと鼻で笑って「よござんす」 晶羅 「不祥、『霞みの月蝶』しかとその義、承りましょう」 風間 「うむ、頼む。」ほっと胸をなで下ろす風間。 晶羅 髪の毛もてあそびつつ「…姫さまには、何と?」 風間 「とりあえず、『先に旅の者に扮して嫁ぎ国にはいっていただき、 折を見て安全な嫁ぎ国で入れ代わっていただく』ということにし ておこうと思う。どうやら、実際に城内にも敵の間者がいるらし いのでな。婚礼がすむまでは姫の身分はもちろん、あのことも秘 密にしておいて欲しい。」 晶羅 「…御意。そのまま、ばっくれてもよろし、ちゅーことですか」 風間 「婚礼がすめば問題なかろう。この国には姫の顔を知っているも のも多いが、外に出てしまえばどうにでもなろう。その後のこと はすべてそなたに任せる。」 晶羅 「で。」 晶羅 「よもや、それがしのみにて事が成るとも思っちゃおりますまい? 他に…誰とつるめばよろしいので?」 風間 「もちろんだ。護衛として3人つける。2人は旅のもの。この者 たちにはわしの娘を送り届けてくれ、と依頼してある。そしても う一人は………晶羅殿も面識はあろう。若についていた、志狼殿 をつける。」 晶羅 「…なるほど」 風間 「志狼殿は『例の件』は知らぬ。姫を、姫の身分を隠して送り届 けてくれ、とすでに頼んである。日暮れに来るように申し付けて ある。他の2人とは今宵城門で落ち合ってくれ。」 晶羅 「御意。では、あくまで風間どのの娘御をお守りすると通せばよ ろしいのですね。…あの方の前以外では。」 風間 「そういうことになるな。雇った者も、万が一ということもない とも限らぬ。けっして姫の身分は明かさぬよう。嫁ぎ国のそばに、 遠い所縁の道場がある。今は誰も使っていないのだが、婚礼がす むまではそこで大人しくしていて欲しい。」 風間 「志狼殿には、準備が整ったら使いが来るとでもいっておいて欲 しい。そしてあとの2人も、どんな風に事情がもれるともわから ぬ。ことがすむまではその道場からは外に出さないようにして欲 しい。」 晶羅 「御意。婚礼が…すんだら?」 風間 「手間かもしれぬが、この地より離れて欲しい。それ以後は晶羅 殿のよしなに。事実を知るのは晶羅殿のみ。大変な任だとは思う が………どうか、よろしく頼む。」 晶羅 「…してみると今回、表向きは『姫の護衛しそびれた』ってこと になるのか」 風間 「ま、そういうことになるな………」風間は青ざめた顔を始めて 緩めた。 晶羅 「ま、たまにはいいか、たまには」 GM 風間は懐から包みを取り出し、晶羅の前に差し出した。これだけ あれば、裕に暮らしていけると思われる小判。 晶羅 「…ひとつ、聞いてもよろしいか」 風間 「2人の雇ったものには別に持たせてあるので心配せずとも良い ……なんだ?」 晶羅 「何ゆえに、そうまで咲良さまにお心をくだきなさる?忠義か? 義務か? あるいは…つぐない、ですか」 風間 「………!」最後の言葉に明らかに反応する風間。 晶羅 「過ぎたことを申しました。お忘れください」さっと三つ指つい て 風間 「すまぬ………。」風間は深々と晶羅に頭を下げる。 晶羅 「で」(ずいっとな)「残りの二人だそうですが」 晶羅 「…(こそこそこそ)若い、ですか」 風間 「うむ………怪しくないとは言い切れぬが…なぬ?」 晶羅 「…忘れてくださいっ」(まぢめな顔) 風間 「………御自分の目で確かめるのがよろしかろう。」 複雑な表情でちょっとぷるぷるしていたり(笑) 晶羅 「…いやあ、宮仕え永いと、どーしても若い男に縁うすくなっち ゃってえ」(あっはっは) 風間 「(ごほん)そ、それでは今夜誰にも気がつかれぬよう頼むぞ。」 風間の表情も従来のものに戻っています。 晶羅 「……御意。」まぢめくさって一礼。 風間 「ほんとにそなたにはかなわぬな………」 風間も頭を下げると、静かに部屋を出ていきました。 晶羅 ぱたぱたと手〜ふってお見送り こうして夜、晶羅は無邪気に喜ぶ咲良姫と共に志狼と合流し、ひっそりと城を抜け出した。 その胸に、密かな思いと人形を携えて。その人形の面だちは、晶羅にとてもよく似ていた。 |