INSPIRATION

− 切っ掛け 前編−


「ひーちゃん!」
元気のよい声が教室中に響いた。
声の主、京一はクラス中の視線などおかまいなしに
声をかけた人物に駆寄る。
「ん?どうしたんだ、京一。」
京一の声に反応してひーちゃんこと緋勇龍麻は振り返り返事をする。
緋勇が転校してきてからもう2ヶ月以上が経ち、
お互い呼び方も変わってきた。
もう誰から見ても二人は親友となっていた。
「ひーちゃんはこの後どーすんだ?」
今日は学校の都合で午前授業のみとなっていたため
京一は龍麻を誘って一緒いどこかへ行こうと思ったのだが・・・。
「ゴメン。今日は・・・ちょっと行きたいとこがあるんだ。」
龍麻は苦笑いを浮かべて京一に謝る。
「え〜、なんだよ付き合い悪いな〜。
 もしかしてデートとかか〜?」
「え?そんな訳ないだろ〜!俺京一みたいにもてないぜ。」
と龍麻は京一の冷やかしに答える。
すると間発入れずに否定の声があがった。
「そんなわけないだろ〜〜〜!」
その声には京一だけでなく近くにいた小蒔のあった。
「わ!小蒔!いつの間に。」
「ボク達もひーちゃん達とどっか行こうを思って誘いに来たんだよ。
 そしたらひーちゃんとぼけたこと言ってるんだもん!」
まったく〜!と言った様子の小蒔。
隣ではホントね〜、と美里がうなずいている。
「俺、別にとぼけてなんかいないぞ。」
龍麻は真顔で答えた。
どうやら本気でわかっていないらしい。
魔神で龍麻のことを知らない人間などいない。
長身でスタイルはよく、美形。
性格、頭脳、運動神経、何においても否のうちどころのない龍麻が
もてないはずがない。
今じゃ学園一と言っても過言じゃないほどなのである。
それなのに本人は全く自覚がない。
「ひーちゃ〜ん、もう少し自覚した方がいいとボクは思うけど・・・・。」
「それが龍麻のいいところなのよ。」
呆れ顔の小蒔に対して美里が言う。
「確かにそれが龍麻の良いところなんだろうな。」
皆の話している中、送れて醍醐も登場した。
「なんだよ〜、結局いつものメンバーがそろったな。」
とちょこっと残念そうに京一は言った。
たまには龍麻と二人で帰りたいかなと思っていたのだ。
最近になって京一は気づいた事があった。
龍麻はあまり自分のことを話そうとはしない。
いつも穏やかな笑顔を絶やさず、仲間を気づかっている。

そう・・・・・どんなときも・・・・・・・。

「ホント悪いな、皆。今日はどうしても・・・さ。」
苦笑いを浮かべながら断わる龍麻を仲間達はさすがに
強引に誘う事はできなかった。
「そうか・・・。それじゃ、おれたち4人でどこかに行くか。」
「どこかってどうせいつものとこだろ〜。」
醍醐にすかさずつっこみを入れる京一。
「そうそう。でもま、いいじゃん!葵もいこ〜よ。」
「ふふ・・そうね。」
と考えがまとまりそれじゃ行こうという時。
「あ、俺はもう少し学校に残ってるよ。ちょっと用事もあるしさ。それじゃ、お先に。」
と言って龍麻は軽く手を振って教室をでていった。
「ひーちゃん、どこに行くのかな〜?ちょっと気になるよね。」
と小蒔がぼそりと呟いた。
「まぁ、たしかにな。」
と醍醐も頷く。
「そういえばアン子ちゃんがこの前、
 『龍麻ってたまに一人で図書室にいるわね。』
 って言ってたわよ。もしかしたら一人で勉強してるのかもしれないわ。」
「え〜、ひーちゃんそんなことしてたのか〜?あったまいいのに。」
「京一・・・・龍麻はちゃんと努力してるってことだ。」
「そうだよ〜!京一と違ってちゃんとひーちゃんはやることやってるんだよ!」
「何だよ〜!お前が言うなっつーの!」
京一と小蒔の言い合いが始まりかけてしまったので慌てて醍醐は止めに入った。
「二人とも、止めておけ。とりあえず、龍麻の邪魔はしない方がいいだろ。
 俺達はそろそろ帰ろう。」
「そうね。そうした方がいいわね。」
と美里と醍醐は話を進めていった。

しかたないなという感じで小蒔と京一も納得し、4人は学校を後にしていった。
その様子を図書室の窓際に座っていた龍麻はじっと見ていた。
4人が学校から離れたのを確認すると龍麻はひろげていた参考書などを片付け
音もなく図書室を後にした。





なんかちょっと横道にそれてしまっているかもしれない・・・。
誰にでも優しい龍麻が京一を気にするようになる切っ掛けということで。
とりあえず後半に続く〜。(汗)