「待った?」
ニューヨークのカフェテラスにふりそそぐ太陽は、今日もまぶしい。
サングラス越しに見上げると、なだらかなまでに、青いジーンズと、腹と、胸と、
鎖骨と、彼女の笑顔が、そこにあった。
「いや、今、来たところだ。・・元気か?」
ジュリアは、2年前とちっとも変わっていなかった。しいていえば、あの髪を二つ
に結ってミニスカを着こなす、あのやんちゃ坊主のような雰囲気が、すっかり
落ちついたことぐらいだった。
「君は変わらないな。」
「アンタはやつれたね、ジン。どうせ、ロクなもの食べていないんだろう。」
ジュリアは、指に挟んだ白いカードをひらひらさせて、それをテーブルの上に置いた。
「来たよ。」
『King of Iron Fist Tournament』
箔押しされた文字が物語るもの。仁は表情を固くした。
「1ヶ月後、ここで予選が行われる。詳しいことは、まだ私にもわからない。
でも、これはアンタにとって最後のチャンスだよ。出場するんだ。出て、ヘイハチを倒すんだ。
鉄拳衆に追われて、ひたすら逃げて、戦って・・・そんな生活、もう終わりにしなきゃ。」
「もし俺が出場して」
「なに?」
「ヘイハチに勝って、優勝して、三島の財産をすべて手に入れたとしたら、
・・俺も父のようになるんだろうか。」
「・・そんなことは、」
「父さんのように、人を人とも思わない悪魔に・・」
「勝ってから言いなさいよ。ヘイハチを倒せば、少なくとももう
誰にも追われずにすむ。自由になるのよ。」
ジュリアは、カードを仁の胸に押しつけた。
「出なさい。でなきゃ私が許さない。」
仁は、なにも言わずにジュリアからカードを受け取った。
「君はどうするんだ。」
「私? 私は・・どうしようかな。面倒なことになるのはゴメンだけど、私も、もう、
三島のブラックリスト筆頭だしね。ここらでケリつけておくのも、悪くないな。」
「すまない。」
「アンタがあやまることじゃないよ。」
「そうか。」
仁は椅子から立ち上がると、ジュリアを見つめ、そしてジュリアから
返された視線と微笑みに恥ずかしくなって、あわてて目をそらした。
「それじゃ、これで。また、何かあれば連絡する。君も、気をつけて。」
「・・つれない男。」
「?」
「私とデートしたいとか、思わないわけ?」
「・・二人での行動は・・危険だ。」
「アンタが危険な男ってわけ?」
「違うって。」
「じゃあ、いいじゃない。決定。さ、行きましょ。」
「行きましょうって・・」
「デートへ、よ。」
Next
|