夜明け前



だが100年以上たって確かなものが一つだけある。お前だ。なあ、俺を見ろ。
俺はおまえになにも求めちゃいない。「愛してる」って言っても、所有は出来ないからさ。
お前自身を愛している。お前のやること、お前のやり方、お前の優しさも強さも、ずっと見てきた。
いいところも、悪いところもだ。お前のことは、そのまんま丸ごと理解している。
素晴らしい女だ。
お前こそ、選ばれし者なんだよ。


皆、十字架はしょっている。少し休むといい。夜が明ける前にまた来る。おまえのしたいようにしろ。


・眠れないの? 
・うん…。星がキレイねー、この辺は。
・コーヒーが入ってるぞ。
・あら、ジャイルズも? 美味しそうね、いただきまーす。
…ふふっ、こうやって、たき火を囲んでると、まるでキャンプファイヤー
に来たみたいね。もっとも、キャンピングカーじゃなくて、スクールバス
なんだけど。
<ザ〜ザザザ〜、ジー (ラジオを聞いている) ねえ、聞いてよ!
サニーデール消滅、原因は大規模な地震によるもの…だって。
・いつものことだ。イニシアチブなり、委員会の生き残りなりが、
きちんと報道管制を敷いているんだろう。今回の一件だって… 
いや、考えてみれば、住民が出ていったのも彼らの仕業かもしれないし、
あるいは我々を囮にして、自分達はヴァンパイアの襲撃に備えて
周囲を包囲していたのかもしれん。
 
・ ……。 ランゴリアーズに喰われた、とでも発表すればいいのに。

 <ザ〜ザザザ〜、ジー

 …今更だけど、LAも大変だったみたいだね。みんな、LAに着いたらどうするの?
 ズズッ… <(コーヒーをすする)  
 …この星空のように、世界中でスレイヤーが目覚めたわ。
まずは、そのコ達を探してあげなくちゃね。ウォッチャーになるのよ、私達。
・オイオイ… でも、ウィロー。君は本当によくやったよ。
・ありがとう。ううん… 実をいうとね、私一人の力じゃないの。
みんながいて、ケネディがそばにいてくれた。それに、タラが…
・タラが?
・ホントはよく覚えていないの。ケネディは、私が女神になった、って言ってた。
けどあの時、確かに感じたわ。聖鎌から、タラを感じたのよ。
・ ……そうだったのか。
・ザンダー、慰めにもならないかもしれないが、アンヤも君のことを…
・いいんだ、ジャイルズ。いいんだ。
・ …ザンダー。
・ゴメン、今ちょっと整理がつかなくて、それで…
違う、わかってるんだ。わかってるんだよ。俺は彼女のそばにいてやれなかった。
どうしてかな、俺… 後悔してばかりだ。
・悲しみなんてものは、大抵、後からやって来る。そういうものなんだよ。
・ …ねえ、ザンダー。今、こんなことを話すのもなんだけど、
私、あなたの目をきっと治してみせるわ。確かなことはまだわからないけど、
魔女の秘法のなかに、青紫水晶を磨いて義眼を作るって魔法があるらしいの。
二つの世界が見える、妖精の瞳よ。 だから、元気… だしてね。
・ああ。 ありがとう、ウィロー。
・よし!<(立ちあがって背中をのばす) 私は決めたぞ。
私はロンドンに帰る! クリープランドの件も気がかりだしな。
残念だが、君達とはLAでお別れだ。
・ええっ、じゃあ、またお別れ!? 
ジャイルズがイギリスに帰ると決まって災難が立て続けに…
・ははっ、大丈夫だよ。今の君達なら。
・私はどうしようかしら。ザンダーの目のこともあるし…
・セレブロでもあったらいいんだけどなあ。スレイヤーを探知するって
バージョンで…
・えっ、セレブロ? って何?
・ …ザンダー。君とアンドリューは本当に気が合いそうだな。
・でも、また、寂しくなるわね。 …バフィーはどうするのかしら。



 ―夜明け前―


・そこにいるのは… ドーン? もうじき夜が明けるわ。
まさか、今までずっと起きてたの?
・ …ううん。日の出が見たくって早起きしてたの。
・はい、毛布。風邪ひいちゃうわよ。
・ありがと。
・コーヒー飲む? あ、でもドーンにはココアの方がいいわね。
マシュマロはないけど… 
・ …コーヒーにして。
・わかったわ。
・ …ねえ、お姉ちゃん。
・何?
・スパイクのこと… どう思ってたの?
・ …どうして?
・昨日の晩、私も地下室に行ったから。
 ドーン、あなた…
・夜中に目を覚ましたら、お姉ちゃんいなくなってて、
多分、地下室なんじゃないかな… って思ったのよ。
階段降りようとしたら、お姉ちゃん達の声がして、あわてて引き返したけど。
・ …そう。
・おとといの晩はフェイスにかこつけて、やっぱり地下室に行っちゃうし、
お姉ちゃんが家を出ていったとき、連れ戻しに行ったのスパイクだったし。
同じようなこと、以前にも聞いた事があったような気がするけど、
正直、よくわかんないよ。
・ ……。
・あんな事があったから、私、ずっと彼を避けていた。
だって、あんまりだもの… ずっと信頼してたのに、裏切られたかと思うと
すごく辛くて… お姉ちゃんは知らないだろうけど、お姉ちゃんが死んじゃった後、
タラとウィローが授業で遅くなった日にごはん作ってくれたの、スパイクなんだよ。
学校の送り迎えもしてくれた。それに何より、私のこと守ってくれたんだよ。
だから余計、彼のこと許せなくて…
・ドーン…
・でも、やっぱり昨日、何か言わなきゃ、って思って…
お姉ちゃんが地下室にいるってわかってたけど、もしいなかったら、って…
・ドーン、彼、立派だったわよ。スパイクがいなかったら…
彼は一人残って、敵を食い止めてくれたの。すごく立派だった。
私、誰より彼を尊敬してたのよ。
・うん… ううん、私が聞きたいのはそんなことじゃない。
・聞いて。本当はね、おとといの晩、エンジェルも来てくれたのよ。
私、すごく嬉しかった。愛を感じた。でも戦いにつれていこうとは思わなかったわ。
わかる? スパイクとは確かに …いろいろ問題があった。
でも彼は、何があっても私の隣にいてくれた。どんな時でもね。
…私、エンジェルを愛してる。愛しているから別れたの。だけどスパイクは、
私を愛するために戻ってきた。彼とじゃなきゃ、ファーストは倒せなかったのよ。
・じゃあ、スパイクは馬鹿だわ! 全部終わって、今、お姉ちゃんのそばに
いないんだったら、何にもならないじゃないの!! 
・お願い、ドーン。そんなこと言わないで…
・何よ何よ!! スパイクなんて嫌いよ!! 人の気も知らないで、
お姉ちゃんを悲しませて!! 私、スパイクがいつか人間になれたら、
ってずっと考えてたわ! そしたら3人で、ピクニックでも、どんなところへでも
行くつもりだったのに!! もし人間になれなくても… スパイクよりずっと年上に
なった私が、やんちゃ坊主みたいなあの人を、ママのようにたしなめる、
なんてこともできたかもしれないのに!

 …お姉ちゃん、どうしたの? 泣いてるの? …ごめん、お姉ちゃん!
私がついてる。 だから、泣かないで… 泣かないで、お姉ちゃん…。

 

「代々のスレイヤー達よ・・・
今一度みんなのために… 世界のために
力を貸してください。」

「最後の一匹となった悪魔は、人間と血を混ぜ合わせ、人の形をしながら
悪魔の心を持った存在となったの。それがヴァンパイアの始祖。
友達はいらない。私達は、殺すだけ」


「これは…聖鎌が語りかけているの?」

「大いなる悪霊を倒すために、強い武器が必要だったの。
スレイヤーの血で刃を染めて、スレイヤーの手足を柄にして
聖鎌は作られた。この聖鎌は、スレイヤーそのものなのよ。」


「お願いします。どうか、スレイヤーの力をみんなに、スレイヤーになる可能性を秘めた者
すべてがスレイヤーになるようにしてください。立ちあがる意志を持った者を…」

「男達は人間の少女に悪霊を封じ込めたわ。それが初代スレイヤー。
少女が死ねば、悪霊は新しい宿主を探す。一つの時代に、たった一人。
言葉を持ってないの。名前もない。たった一人で血の涙と胸指す痛みに耐えながら。」


「もう、一人で背負うことなんてない。あなたは、いえ、あなた方はもう一人ぼっち
じゃないのよ。みんなが選ばれし者になるのよ。」

「…世界が変わるわ。それはとても、大きな力よ。痛みを伴う。」

「地獄の口の封印はもう解かれたわ。バフィーには、今こそ
候補生達の力が必要なの! お願い、バフィーを助けて!!」


「始まったのね…。」


「…タラ?」

 

「君はどうして逃げなかったの?」

「前は逃げたわ。前にも世の終わりをむかえたの。
あの時はそう、逃げたの。でも今回は、さあね。」

「それはどうして?」

「前はほら、人間のことをよく知らなかったから。
いろんなことを見て人間を理解したし
彼らの能力も知ったし、私、気がついたのよ。
人間って、みんなホントだめだな、って。
つまり、内面的に何一つ成長しないんだなって。
互い力をあわせようなんてこと考えずに、なんとなく漂いながら
人生をやりすごす。そのくせ誰もが、自分自身の死が近づくと
驚いて大騒ぎするの。彼らには死を克服するって考えがないのね。
そして互いに殺し合う。でもそんなのってばかげてる。
もっとこまったことに、人間ってね、大切なもののために戦うの。
そのためにみんな愚かになってしまう。
でも戦うのけっしてやめようとしない。
だからあたしも戦いつづけようかな、って。」

「ねえ、人間が好きなの?」

「いえ、大っ嫌い。」

ごめんね、お姉ちゃん。

でも、どんな言葉もさよならにしか聞こえないから。

ホントは怖いよ。すごく怖い… 

でもお姉ちゃんとスパイクがファーストを倒すまで、

ここは守らなきゃならない、そうだよね?

だから、お姉ちゃん、スパイク、私… がんばるよ。

ママ、私に力を貸して!」




ドーンのこと、世界のこと、守りきれたぞ Buffy… 約束だったからな。

ついでにスレイヤーとしてのおまえの最後を、見届けてやることもできた。

Buffy、愛しているぜ。離れていても、別れても。

魂が痛む程に。

ちびは今、どうしてる?

あいつらは?

地獄で待ってるぜ、ハゲ親父。



ああ、ここはあたたかい なんて安らかで 

まぶしい…

これは、光?






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