遥かなる時の彼方へ

〜生命〜



ずっと 待っていたわ……

この瞬間を……



一万年の月日・・長かった・・

・・セルジュ・・いえ、ジャキ・・

始まりも終わりもないこの場所で・・

あなたに会いたいという想いだけが

静かに時を刻んでいた・・



意味もなく傷つけられ、

失われてゆく生命たち……



遥かなる時の底から

永遠とも思える時の彼方へ・・

一万年もの間・・

サラ・・

再びあなたに出会う、

あの誓いのためだけに



かき消されてゆく言葉、

埋もれてゆく想い……

バラバラにほどけてゆく細胞の海……

溶けてゆく意識の残響……



囚われたあなたを

救えなかったという後悔が・・

あの日・・

あなたの名を呼びつづけながら・・

時喰いに身体を焼かれ細胞の一つ一つが塵となり

想いとともに深海に溶け

たゆたう波に打ち寄せられ・・


そして・・私の魂は時を超えたのだ



愛するゆえの憎しみ……

憎むがゆえの愛しさ……

何のために生まれ、

何のために死ぬのか……?



王国が滅びようとも

私が滅しようとも

自分を憎まないで欲しかった

サラ、自分を・・

一時の生命は失われても

魂は星を巡りまた生命を得る・・

悲しまないで欲しかった

死と生がくりかえされるだけなのだ

すべては・・



進化……

傷つけ合い、殺し合い……、

弱肉強食の果てに

何が得られるというのか?



すべての生命・・魂は・・

生命を得て、失い・・

幾千幾万の新たな生命となる夢を重ね

そして再び生まれ変わるのだ・・

生命の夢を忘却の彼方において・・


星という名の一個の「卵」と、

それの群がる、無数の生命という「種子」……

その無数の種子のなかの一つと、

星が結ばれたとき、新たな宇宙が生まれる。



ラヴォス・・この「進化」のみを生の目的とする異形なるもの・・

その「子」である私達もまた・・自分がより進化するために

憎み、傷つけ、殺し合い・・

星を喰らいながら生きているのかもしれない・・


けれども・・



ああ、けれども・・

ジャキ、あなたの魂は・・

死して後も

私への後悔に縛られて

生命の鎖すら断ち切り

想いの中で淀み、漂い・・

意識の折の中に自らを閉じ込め

より高次の「生命」に進化するという流れに逆いながら

生まれ変わってもまだ、私を追いつづけた・・



そこに至るまでの、何十億という歳月と、

無数の、生まれ、死んでいった生命……



私のことなど忘れて欲しかった

今度こそ、あなたはあなたの「生」を

生き抜いて欲しかった・・!!

私は・・ジャキ、あなたのそばにいつもいたのに・・

この海の底から

無限の広さの闇の淵から・・



それはすべて、

その一瞬のためだけに、あった。

宇宙がさらなる、次の次元に

進化するために……。



だが・・

いつの時代、どこの世界でも

たとえ私の名や姿が変わろうとも

生きて再び・・

サラ、あなたに出会う、そのために・・

私は彷徨い、あなたを探すだろう

私が私である限り


それではあらゆる生命は、

星と結ばれるただ一個の生命を

生み出すためだけに

生まれ、死んでいく……

捨て石にすぎないと言うのか?



「生」そのものには意味はなく

「死」そのものにも意味はない

だから、せめて・・

自らで意味付けていくしかないのだ・・

そして、私には・・

何度、生を繰り返しても

サラ、あなたへの想いこそ、その意味だった・・


いいえ、それは違う。

全ての生命に、チャンスはある。

星と結ばれる唯一の生命は、

「あなた」なのかもしれない。



あなたを探し彷徨う

無数の時間軸

無数の次元

そしてその中にいる

無数の私・・

ある者は今だ彷徨い

ある者は自分を失い

ある者は死に・・

だが・・


遺伝、環境といった、自分に与えられた、

限られた条件のもとでベストをつくし、

自らの生をまっとうしようとする生命は、

新たな宇宙に連なる黄金の鎖の輪の一つ。



今、ここにいる私は

サラ、あなたに再び出会うことができた。

この奇跡・・

泣き叫ぶ私に手を差し伸べてくれた

あなたの手を、もう二度と放さぬように

ああ、思えばこの奇跡の旅は

まさにあの瞬間から始まったのだ


どれか一つ欠けても、「未来」はない。

この世にムダな生命、

捨て石の生命などというものはない。



過去から今へ、今から未来へ

私の旅も終わりに近づいた

あなたは過去の憎しみと悲しみから解き放たれ

あるべき名を得て

あるべき姿に戻るだろう

そして・・



森羅万象あらゆるものが、

「いのち」の夢を

みているのかもしれない。



私は還ろう・・

眠りたいのだ・・もう・・

悔いはない

生命の流れに還り

安らかな眠りにつく

幼い頃、あなたの腕の中で見た夢をみるために・・


そして、そのすべてさえもが、

生まれる前の星がみている、

ひとつの夢に

すぎないのかもしれない……



時の渦にのみこまれ

消え去ることを望み

自分のしたことを憎み

生まれて来たことすら呪った・・

・・けれど・・



魂・・「無」に帰したいと願った私の中にもあった、


消せない想い・・



ジャキ、あなたは教えてくれた

魂は「無」に帰すことなどない、と・・

すべては形を変えて巡り行く

時の最果てへの

遥かなる旅・・

・・過去を受け入れねば・・

それに気付くまでに

どれだけ永い月日がかかったことか・・



だが……

ああ、やがてすべての夢は

環ってゆくだろう……

ズルワーン…… 夢の海に……



ありがとう、ジャキ・・

すべての生命は夢の海へと流れつく

私も、あなたも・・

この世の果てで魂は一つになる

ありがとう・・

そして・・眠りなさい・・

降り注ぐ無数の星々とともに

次の目覚めの時を夢見て・・






セルジュ……!

行くな、セルジュ……!

いいんだ。

もう、いいんだよ。



セルジュ・・

私の魂と共に有ったために

おまえは運命と戦うさだめを背負い、そして運命に打ち勝った

最後まで、私と共に戦ってくれたこと・・

その礼はいくら重ねても足りるものではない・・

せめてもの償いに

おまえの魂をおまえに返そう



分かれた時は、いま一度

ひとつになる。

別れの時がきた……。

おまえはこの旅の記憶を失い、

自分の時間に帰るんだ。



おまえの魂から私が離れることで

おまえは私の魂の記憶すべてを失うだろう

そうすることでおまえの存在は確かなものとなり

おまえの存在しない未来の物語は幕を開けぬまま終わるのだ

だが・・

私は楽しかったぞ、セルジュ・・

おまえと魂を共有した17年こそ

一万年という刹那にして途方もない長さの時間の中で

唯一、私に与えられた幸福な時間だった・・

だから・・




今度こそ、自分の生を生きろ。




たしかにオレたちは

世界のすべての謎をとくことも、

すべての哀しみをいやすことも

できはしないだろう。

それでも……



かつて私と仲間達は

星の夢に導かれ、この星を救った。

私は再び、彼らに会うことができるだろう

あの勇ましい一団と一つとなって

今一度、星を駆けめぐるのだ



おまえに会えて、

オレはうれしかった。

生まれてきてくれて、ありがとう、

セルジュ……

これで……、

さよならだな……。

でも……



セルジュ、そしておまえも、いつか、きっと・・

お互い、そうと気付くことはないかもしれないが・・



会いにゆくよ。

いつか、きっと……



様々な時代、様々な次元を超えて・・

すべてが還りゆく場所へ・・


おまえがいつの時代、

どんな世界で生きてようと、

会いに行くから……。



さらばだ、セルジュ・・

ありがとう・・


きっと……

きっと、会いにいくから……。

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