激闘タッグ育児編B


「む〜、女の子の名前名前・・くうッ! 考えるのがこんなに難しいとはな!!」
例によって三島ビルの一八の自室。
一八とそれにいやいや付き合わされた李は、夜遅くまで考え込んでいた。
「ふ〜む、字数判断に風水に・・一口に名前つけるっていってもいろいろあるんだな。
いっそのこと三島神社の神主あたりにたのんでみたらどうだ? 一八。」
「何をいう! 娘の名前ぐらい俺がつける!!」
「・・(ペットのクマにさえ名前つけてないヤツが何を言う)」
「! なんか言ったか、李!!」
「いんや。」
一八は女の子の名前がいろいろ書きこまれたレポート用紙を持ち上げてピラピラ振った。
「いろいろ候補はあるんだが・・どうもいまいちピンと来ない。」
「ふーん、京、伊織、舞、それに百合に霞に奈子に玲於奈、あとは沙羅に綾音に
恵玲奈にレイ・・ねえ。」
・・少しは顔と相談して名前をつけやがれ。
李は思った。
「あ、ほら、一八。三島家お得意の「八」はいれないのか? 「亜八(あや)」とか「沙八(さや)」とか
けっこうかわいいじゃねーか。いっそのこと「準八(ジュンヤ)」でも女の子の名前として十分通用するぞ。」
「考えたがな、やはり語尾に「八」をいれると後々「パチ」だのなんだのあだ名つけられそうでかわいそうだ。
女の子だけに余計なー。」
そういえば一八のあだ名も「でこっぱち」である。これはよした方がいいかもしれない。
「じゃあ「一」の字だったらどうだ、一八。 一子(かずこ)とか・・」
「・・・俺としてはそれに「美」をつけて・・一美(かずみ)・・と、一番つけたいのだが・・」
「準と衝突したくなかったらよすんだな。そういえば、男の子の方の名前、「仁」だっけ? 
あれ準がつけたんだって?」
「ああ、それは「準」の「ゆ」抜き、だ。本人は思いやりのある子供に、って意味でつけたらしいが。
それに、俺のお爺様の三島仁八の一字だからな。けっこういい名前だろ? ・・って、李、それ使えるぞ。」
一八は何を思ったか、どこからか筆と半紙を取り出してきて、筆にタップリと墨を含ませると、
いかにも私、普段書道なんかしていません、という感じのヘタクソな字で紙にでっかく、
命名:「仁」、「仁美」
と書いた。
「できた!! これでどうだ、李!!」
「男の子が「仁」で・・女の子が「仁美(ひとみ)」・・うん、悪くないんじゃないか。
一八にしては上出来だな!!」
「あたりまえだ。三島仁八の「仁」、それに「仁」に「一美」の「美」で「仁美」・・
いーじゃねーか!! かわいいし、いい意味だし、申し分なし!! うん、これでいくぞ!!」
一八、おもわず勝利のガッツポーズ!
「ふっふっふ・・ジンに・・ひとみ・・そっかー、ひとみちゃんかー・・ぐふふふ」
一八が今、何を考えているのかは大体想像がつくが、男オヤジの妄想が頭の中を
ぐるぐるかけまわっているのはまちがいない。
片親がこんなでは、子供達の先も思いやられる。
「よ、良かったなあ、一八。さて、俺そろそろ自宅に戻り・・」
「そうだなー、まず一族中に連絡して、それから女物のベビー用品もとりそろえねば! 
赤ん坊ってすぐにでっかくなるそうだから数がいるよなー。それに歩き出したときのために、
そう、子供用スニーカーを用意せねば!! いやー、俺のスニーカーコレクションでも
子供用スニーカーというのは盲点だった! これでまた、俺のコレクションに
新たなジャンルが増えるということになるな! むー、女の子っぽくフリルのついた
スニーカーなんていうのもいいな・・」
一八が妄想花盛りなのを尻目に、李は抜き足差し足で部屋の外へ出て行く。
なるほど、子供ができてあんなに喜んでいるのはいい徴候かもしれない。
しかし相手はあの一八と準の子供である。どんな育て方をしようとも、強暴な血だけが
濃縮されたような子供になるか、はたまたとんでもなくヒネた子供になるか、
おそらくただではすまないような気がする。これからのことを考えると、
いささか不安を感じる李であった。