激闘タッグ育児編G
| 「えっと、ここが一八ん家の裏山だからあ・・っと、よし、あとはココを下れば アイツの部屋のある家に着くはずだ。」 宇宙一(を目指しているハズ)の格闘家、ポール・フェニックスはリュックサックにお茶と オニギリつめて、春の兆しの薫りたつ三島邸の裏山をスキップしながら歩いていた。 無論、今日こそ一八と対戦するつもりである。それに、道すがら、一八が準と結婚? しただの、双子の赤ちゃんを授かっただのウワサをいろいろ聞いたのでついでにからかいに・・ いや、お祝いに行くところであった。 「チックショー・・しかしなんでアイツがオレより先に結婚するんだよ・・ レイだって李だってまだなんだぞー。李に限っちゃ彼女もいないんだぞー。クッソー!!」 とブツクサ言っているうちに裏山を抜けて、まるで水戸の後楽園を思わせるような造りの 日本式大庭園に出た。 「懐かしいねえ。オレと一八はここで初めて出会ったんだっけ。あれからもう3年たつんだよな・・。」 満開の梅の香りに闘いの記憶を呼び覚まさせられて、ポールがしみじみと感慨にふけっていると、 梅の木の向こうからシャツにジーパンというラフなカッコした一八が現れた。 腕にちっちゃな赤ちゃんをだいじに抱えて・・。 「コラ、ポール!! テメエ、こんなトコでなにやってんだ! またウチの警備員倒してきたのか・・。」 「YAHHH!! カ、カ、カズヤ・・!! What is this !?」 ポールはカズヤと決着をつけにきたことも忘れて、カズヤが抱っこしている赤ちゃんに釘付けになった。 「なんか日本語と英語がごっちゃになってるな・・。オレのガキだオレの!! 」 「うひゃー!! こ、このコがカズヤのコ!! 準と結婚したのはホントだったのか・・。」 思わずカズヤのところに駆け寄っていって、赤ちゃんに顔を近づける。 「ワォ!! You are good boy!! お父さんにソックリ! フォレストが赤ちゃんだったころを思い出すぜ。おお、よしよし。」 そういって赤ちゃんのぷにぷにほっぺに、自分の顎ヒゲはえっぱなしのジョリジョリほっぺで すりすりしようとしたら、間髪いれずカズヤのえぐりこむような心中突きがポールの腹に クリーンヒットした。ドゴ! 「ぐげえええええええ・・・い、いきなり何しやがる・・グググ・・ゲホ。」 「それはこっちのセリフだ!! ウチの娘になんてことしやがる!! 検疫はうけたのか検疫は!!」 「け、検疫!! 動物かよオレは!!」 「仁がおたふく風邪になって大変だっていうのに、仁美にまでおかしな病気うつされてはかなわん! とっとと帰れ!!」 「おかしな病気!! て、テメ、オ、オレはなあカズヤ、オマエとの積年の因縁に決着をつけようと わざわざ日本にまできたんだぞ!! 手ぶらで帰す気かよ! こらあ!!」 「決勝戦で敵前逃亡した弱虫以下が何を言う。」 「だからあ! あれは交通渋滞に巻き込まれただけだって!! ね、お願い、カズヤちゃん。 頼むからオレと戦ってくれ〜〜〜!!」 「うるさいッ!! ガキのお守りしているのが見えねえのかよ!!」 ウグ・・ヒクッ・・ 大人達がケンカしているとでも思ったのだろう。仁美は顔をくしゅーっとしかめて、 カズヤの方を、ぎろー、とうらめしそうににらんだ。 「あ、あらら・・カズヤ、赤ちゃん・・もしかしてぐずりだしちゃった??」 「ふ、普段はあまり泣かないんだけどな・・ちょーっとばかしうるさすぎ・・」 「うわああああん!! うわああああん!!」 閉話休題・・。 「ふー・・やっと泣き止んでくれたか、三島家のお姫様。」 さすがに一時間もぐずると泣きつかれたのだろう、仁美は何事もなかったかのように 一八の腕の中でぐっすりとねんねした。大の大人二人をこれだけあたふたさせておいて ぜんぜん悪びれたようなそぶりもなさそうなのは、さすが一八の子というべきか。 「いったん泣き出すと仁美はとまんねえんだよ・・ポールのせいだぞ、オマエがうるさいから・・」 「シィーッ・・赤ちゃんまた泣き出すじゃねえか。」 二人は庭の置石に腰掛けて、お互いしばらく気まずそうに黙っていた。 春の日差しに暖められた風が横切っていくと、梅の花びらが頭上からパラパラ落ちてきた。 ポールはふと、自分が腹が減ってることに気付いた。 「なあカズヤ・・ここでメシ食っていいか。 たまにゃお花見しながらメシ食うのもいいだろ? なんならオマエも食う? コンビニで買ってきたオニギリにペットボトルのお茶だがよ。」 「勝手にしろ。俺は家で食う。もうすぐ昼メシの時間だ。準が作って待ってる。」 「ああ、そうかい。」 ポールはリュックからオニギリとお茶をとりだし、一人で海苔をパリパリご飯をクチャクチャいわせ 食べ始めた。メシのオカズに「カズヤと赤ちゃんと梅の花」という全然似合わない風景をじーっと眺める。 赤ちゃんを抱くその腕はまだどこかぎこちない。まだ・・母親のようにはいかないか。 準が待ってる・・ねえ。 赤ちゃん、絶対に落とすなよ。 ポールは思った。オマエさんのオヤジのように。 ぎこちなく抱く幸せの重さに・・一八自身が気付いていればいいのだが。 「そろそろ行く。オマエもメシ食ったらとっとと帰れ」 一八は立ち上がると、後ろを振り向きもせずに家に向かって歩き出した。 「ああ・・決着はあとの楽しみにとっといてやる。逃げるなよ、カズヤ。」 その言葉に、一八は足を止めた。 「・・・いいぞ。今・・決着つけてやる。そう何回も来られてはたまらん。」 振り向いた一八にあの「ニヤリ」笑いが浮かんだ。 「へ・・だ、だって赤ちゃんは・・・」 「1分でケリをつけてやる。」 一八は仁美を木の下にそっと置くと、ポールにむかって身構えた。 ポールの手からオニギリがポロっと転がり落ちた。 「よ、よ、よし!! こ、今度こそ、オマエと戦えるんだな!! よ、よっしゃー!!」 ポールは口の中に残ったオニギリをふぐふぐさせながら、一八に向かい合った。 戦う喜びに手が小刻みに震える。胸の鼓動が体の外まで響くほど鳴り響く。 両者相対して・・今。 その時! があー!! どこからあわわれたかはわからないが、ポールの後ろからクマちゃんがポールめがけて拳を振り下ろした!! 「く、クマ!! こんのやろーーーー!! ジャマすんなあああ!!」 ドゴオッッ!!! 万聖竜王拳がクマちゃんの腹にカウンターヒットし、クマちゃんはそのままゴロゴロと吹っ飛んでいった。 「よっしゃー! ったく、あのクソグマ・・ってあれえ? カズヤ??」 ポールは手をかざして辺りを見まわしたが誰もいない。気がつくと一八も赤ちゃんも、霞のようにどこかに消えていた。 「おいおいおーい・・!! っしくしょー!!! また逃げられた!!」 怒りに任せて置石をけっとばす。バコッ! 「・・・・・・痛。」 つま先を抱えてうずくまるポール。 ・・カズヤ・・覚えてやがれ・・ しかし憎憎しげに悪態をつくポールの顔には、なぜか笑みがうかんでいた。 |