クリスマス・キャロルが聞こえる頃に

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一八 : 雪か・
ナレーション : 一八は立ちあがると、曇った窓ガラスを素手でそっと拭った。ツツ・・と窓にしたたる水滴。その向こうに見えるのは摩天楼に降り積む、雪。
効果音 : きーよしー こーの夜ー♪ ほーしはー ひーかりー・・・
ナレーション : 見下ろすと、下界は教会へミサにでかける人だかりでいっぱいだった。つけっぱなしのテレビからはずっと、聖歌が流れている。今日は、クリスマス・イブ。
準 : クリスマスに彼女でもない女を飲みに誘うって、どういうことですか?
一八 : ・・・・・・。
ナレーション : 今日この日が巡りくるたび、一八は19年前の大会を思い出す。選手にw.w.w.cが潜入していると聞いて、どういう奴なのか興味があった。声をかけて誘った。その日が丁度、クリスマス・イブだった。
一八 : ・・・・・・(しまった)。
準 : かの三島財閥の頭首サマだったら、彼女なんかよりどりみどり、って気がしていましたが・・。よりによって、私、ですか?
ナレーション : 清楚な顔して、クスッと笑って、毒づく。始めて話を交わしたその日から。
一八 : クリスマスを特別に祝ったことなどない。だから別に、君が特別というわけではない。
ナレーション : 言ってからまた、しまった、と一八は思った。拭った窓ガラスに、彼女の困ったような顔と今の自分の顔が交錯した。
一八 : あれからもう、19年たったのか・・。
李 : 清楚可憐なスズランにも、強力な毒があるっていうぜ。
ナレーション : 準がどんな奴なのか見てみたい、と言ったら、李はニヤニヤ笑っていた。後で鉄拳衆にいいふらして、ディナーの話題にしたに違いない。腹立たしい。
李 : 誘うんだったら、アンナあたりにしておいた方がいいんじゃないか? ハメもはずしすぎるとマスコミの格好の餌食にされるぞ。
一八 : オマエの「食べ残し」に興味はないな。
李 : ・・・知ってたのかよ。
李 : ・・・ちっ
ナレーション : 李は気を悪くしたのかそそくさとその場を去った。
ナレーション : 李が去り誰もいなくなった部屋で一八は一人溜息をついた。
一八 : 特別に祝ったことない、か・・・
ナレーション : そう。仕事で不在の父、病弱でいつも寝たきりの母。クリスマスに特別な事など何一つもなかった。
ナレーション : 彼女と、準と出会うまでは…。
準 : 面白そうですね、今日はご一緒しますよ。でも、特別、なことはナシよ。あなたが言ったんだから・・。
一八 : ・・・わかった。
準 : で、どこに行きましょうか? どうせならこのホテルの下のバーにしませんか。 大会参加者の人達が今、パーティしてるそうですよ。
一八 : うるさいのはキライだ。俺の部屋でいいじゃないか。
準 : ・・・・・・はあ??
一八 : 最上階のスウィートだ。
準 : ・・・・・・・・・・・・・。
ナレーション : 二人はエレベーターに乗った。ドアを閉じ、「ガタン」という音が広いエレベーター内で共鳴した。一八はエレベーター内から下を見下ろした。それにつられるかのように準も外を眺めた。
準 : 素敵な雪。そおっと振ってくる感じ。強くもなく弱くもない、やな事も忘れられる。
ナレーション : 李などがそのような台詞を吐くと『なに言ってんだ、コイツ』という目で相手を見る一八だが今日は何か違った。相手を見るところはいつもの自分と同じだったが、やな目はしなかった。というよりできなかった。
一八 : そ、そうだな。
ナレーション : 一八はなんと言っていいのか判らなかった。あせる一八を見て準はクスッと笑った。
準 : 早いものね。あなたと面識を持ってからもう19年にもなる。
ナレーション : 『出会ってから・・・』とはあえて準は言わなかった。距離を置きたいのだろう。一八はそう思った。
一八 : 何だ。唐突に。
準 : あなたはあのときから何も変ってない。人との付き合いをすぐに避ける。そのくせ寂しがりや。その証拠に私がここにいるわ。
ナレーション : 先刻、準が笑った理由(わけ)がやっと一八は判った。
ナレーション : 二人の距離は準のこの言葉で一気に縮まった。引かれ合う二人。お互いを見つめあう二人。そこへちょうど間悪くエレベーターのドアが開き人影が現れた。アンナだ。アンナは嫌味っぽくこう言った。
アンナ : あら、三島財閥の首領ともあろう方がエレベーターで女性と密会ですか?クスクス。
一八 : うるさい、今忙しい。李はどうした。
アンナ : もちろんこれから一緒に出かけるわ。クリスマスですもの。
一八 : ・・・・・(ケッ!)
アンナ : (準の方を見て) あなたが今日の一八のお相手? フフフ・・せいぜい、かわいがってもらいなさいな。
準 : ありがとう、あなたの方もがんばってくださいね。
ナレーション : 女同士に散る火花が見えるようだった。準の顔も引きつっている。これ以上・・アンナがつっこまないことを一八はせまい空間でひたすら祈った。
アンナ : 早く行ってくれない?下行きのエレベーターを待ってるの。
ナレーション : 珍しくアンナが引きを見せた。なぜそうなのかは二人はわからなかったが準は素早く「閉」のボタンを押した。
一八 : 邪魔が入ったな。
準 : あら、私を口説くつもりだったの?
ナレーション : 自分からひっぱといてそりゃないだろ。と一八は思った。そして今の出来事が準を我に帰らせたのだということも自ら悟った。
効果音 : チン、ガタン
準 : やっとついたわね。最上階に。
一八 : 最上階といってもまだ屋上がある。どうでもいいがな。
ナレーション : エレベーターを降り廊下を数分渡るとやっと一八の部屋についた。部屋の前ではガードマンが二人立っていた。
ガードマンA : メリークリスマス一八様。
ガードマンB : ・・・そちらの方は?
一八 : 客人だ。怪しい者ではない。通せ。
ガードマンA、B : はい。
効果音 : ガタン
ナレーション :ドアが閉じたのを確認し、ガードマン二人は会話を始めた。
ガードマンA : アレが風間準か。
ガードマンB:子供もいるくせに何が警戒しなくていいだ。
ナレーション : いきなり部屋のドアが開き一八が現れた。
一八 : 何を話してる。面白い話か?俺にも聞かせろ。
ガードマンA : い、いえ別に面白い事など何も・・・
ガードマンB : そ、そうです。聞くだけ時間の無駄です。
一八 : そうか。・・・おい!
ガードマンA、B : は、はい。
一八 : メイドにワインを持ってこさせろ。なんでもいい。とりああえず高級なやつだ。いいな。
ガードマンA、B : か、かしこまりました。
一八 : よし、ご苦労。
効果音 : ガタン
ガードマンA : ふう、一八様挨拶した。どうやら機嫌がいいようだな。
ガードマンB : そうだな。いま給料の話したらあげてもらえるかもな。ハハハ
ナレーション : 二人の笑い声は一八の部屋の中まで聞こえてきたが今度はあえて出て行かなかった。
準 : 普通ワインなんて直接内線かなんかでメイドに頼むモンじゃないの?
一八 : いいんだ別に。それに仕事もなくあいつら暇そうだしな。
準 : それもそうね。
ナレーション : 二人は広い部屋の奥に進んだ。床には紫のカーペットが敷いてあり、大きな窓ガラスが部屋に張ってあった。それ以外特に何もない。しかし部屋に隅にはソファーとテーブルがあった。
ナレーション : 二人はそこに座りB
一八 : どうした。疲れたか?
準 : まあね。エレベーターに乗ってちょっと歩くのがこんなに疲れるとは思わなかった。
ナレーション : 窓からは月明かりが差し込んでいた。月に今にも手が届きそうだった。
準 : でも最上階から見る月がこんなに綺麗だとは思わなかったわ。
効果音 : ガタン
ナレーション : ドアが開き、メイドがワインを持ってきた。
メイド : お待たせしました一八様。ボジョレヌーボー1935年ものです。
一八 : そうか、ご苦労。
ナレーション : 一八は酒が好きでもなければ嫌いでもなかった。李は気分が悪いやいい時に呑むものだといっていたが一八はパーティーの席などでしか呑まなかった。
ナレーション : それゆえに一八は「ボジョレヌーボー」や「ロマネコンティ」などと言われてもどれぐらい高価なものなのか判らなかった。
ナレーション : とはいえ『とりあえず高級なやつだ』と言ったのでそれが高級なものだということは判った。
ナレーション : デカンターから、ルビーのような鮮紅色の液体がグラスに注がれる。ブドウの、高貴な香りがあたり一面に漂った。
準 : キレイね・・・フフ、正直、あなたとこういうふうにすごせるとは思わなかったわ。
一八 : 酒のことはよくわからんが・・。おまえはいつもこういうのを飲んでいるのか?
準 : まさか! いつもはカクテルとか・・ ・・でも正直、うちの田舎の地酒が一番好き。
一八 : ??
準 : いも焼酎。驚いた? しかもアルコール度のうんと高いやつ。
ナレーション : この女の性格なのだろうか。飾らないのか・・はぐらかすのか。着飾った女ばかりなどいいかげん見飽きている一八にとって、それはなんとも新鮮な感じがした。
準 : それじゃあ・・ クリスマスおめでとう、一八さん。乾杯。
ナレーション : ワインの馥郁たる香りが口一杯に広がる。グラスごしに、キャンドルの明りに映える準の姿が見えた。・・これを形容する言葉が欲しい。一八は言葉が胸の中にひっかかっているもどかしさを感じずにいられなかった。
一八 : ・・クリスマスのお祝いって、なんなんだろうな。
ナレーション : 一八はムリヤリ、話題を変えた。およそ、クリスマスに似つかわしくない問いかけであったが。
準 : どうしたのよ、いきなり。
一八 : いや、ふと思っただけだ。大した意味はない。
ナレーション : 今自分の胸に引っかかっているもどかしい感情を準に悟られないように一八は背を背けた。
準 : 北欧のほうではクリスマスのことを「光が生まれた日」ともいうよ。
一八 : ・・ほう?
一八 : なるほど・・・意味なく大騒ぎする日ではなかったのだな。
準 : 世界中のキリスト教徒敵に回すようなこと言って・・。北欧といえば、私にも小さい頃サンタクロースがクリスマスになるとプレゼントを持ってきてくれたわね。
ナレーション : 一八はその言葉に少々ムッとした。サンタクロース、なんて・・正体はわかっているではないか。ただ彼には、サンタクロースはついぞこなかっただけである。
準 : 正体は最後までわからなかったけど、随分背の高いサンタクロースだったような気がするの。毎年毎年、なぜか私が一番欲しいものを枕もとに置いていってくれて・・。
一八 : ・・・・・・。
準 : 次の日の朝、お父さんに「サンタさん来た!?」ってきいても教えてくれないのよ。でも2年前、ぷっつりとこなくなっちゃった。
一八 : ・・2年前?
準 : ええ、ちょうど・・お父さんが亡くなった年からね。ずっと・・・。
一八 : ・・・・・・そうか・・・。
ナレーション : 一八には何とも言いようがなかった。自分はサンタクロースからプレゼントなどもらったことがない以然に見たこともなかった。
ナレーション : たとえ正体がわかっていても、それでもプレゼントをもらえるというあるはずの喜びを味わったことなど一度もないのだ。
準 : ・・・恋人はサンタクロース、背の高いサンタクロース・・・覚えてる?
ナレーション : 準はワインのグラスをかたむけながら、一八に向かっていたずらっ子っぽく微笑んだ。その笑みに、とまどう一八。
一八 : ・・知らん。
準 : ホントに? あれだけ流行ったのに??
一八 : そもそもサンタクロースも見たことないしな。素通りしていった。
準 : あなたらしいね。 
ナレーション : おそらく、この女は俺が冗談でこんなことをいってるのだと思っているのだろう。一八は思った。幸せなクリスマスしか知らない彼女には、一人ぼっちのクリスマスの寂しさなどわかるまい。
準 : それでも私、父が亡くなってからずっとクリスマスは一人きり。仕事が忙しかったし、彼氏もいなかったし。
一八 : ・・ずいぶん楽しそうにいうんだな。
準 : そう? そうねえ・・でも彼氏ナシ、クリスマスの予定は仕事でいっぱい、っていう話って自分でも結構笑える。うん(TT)
ナレーション : なまじ準の仕事を大幅に増やしているのが自分なだけに、一八は何も言えなかった。言ったら・・ビンタのひとつぐらいとんできそうだ。
一八 : 仕事に関する話は…やめよう。
ナレーション : 折角のクリスマスまで仕事に埋もれていたくなかった。彼女と過ごすものであるならなおさらだった。
準 : そうね、せっかくだもんね。
ナレーション : その言葉に、一八ははっと顔をあげた。準はワイングラスを見つめている。
ナレーション : ・・・せっかくの・・・クリスマス、だからか?それとも、今こうして自分といることが・・・。口から出かかったそんな質問を、ワインをあおってあわてて止める。
ナレーション : どうかしている・・。一八は思った。酔いがまわってきたのか。
準 : 外、真っ白になったね。
ナレーション : グラスの中で揺れるワインの色とは対照的な白に外界が染まっていた。
ナレーション : 先程まで見えていた月は雲に隠れ、白い妖精たちが天より舞い降りてきた。
準 : ホワイト・クリスマス…。
ナレーション : しばし、二人は窓の外の雪にみとれた。摩天楼から見える雪は、天使の羽のように軽くふうわりと、都会のイルミネーションに溶けていった。
準 : 素敵・・・ため息がでるほど・・・。・・あら、どうしたの。ぼんやりしちゃって・・
一八 : いや・・なんでもない。ちょっと・・酔ったらしい。
準 : ちょっと、って・・さっきから黙ってたんだけど、あなたすごく顔赤いわよ。大丈夫?
ナレーション : 俺は酔っている・・のか? 一八は頭がふらふらするのを覚えた。それを自分で打ち消すようにしてテーブルに肘をつき頭を抱える。
一八 : 大丈夫だ・・これぐらいでは・・・。・・!!
ナレーション : 一八の目の前に座っている者、それは風間準ではなく真っ白な翼の生えたエンジェルだった。うわッ! と思う間も無く視界がぐにゃり、と揺れ動く。一八の意識が遠のいていく・・。
一八 : 風間・・おまえ・・
ナレーション : 準があぶない! と言った瞬間、一八の体がイスごとガターン! と床に崩れ落ちた。
準 : 嘘・・でしょう? たかだかあんな量のワインでー!!
ナレーション : 酒は好きでもなければ嫌いでもない、なんていっていたが、一八はそう、まるっきりの「下戸」だったのだ。酒豪の準には信じられなかったが、そういう人がいきなり呑むと倒れることもある、という話は知っていた。
準 : こ、こういうときは確か、えーと・・と、と、とりあえず一八! 大丈夫なの!?
ナレーション : 準はイスから飛びあがると、倒れたまんまの一八を抱き起こした。うう、と一八がうめく。こりゃ重症だわ、準は思った。
準 : 床じゃなんだからとりあえずベッドに寝かせて・・あと、このキチキチタキシードを楽にして・・あ、お水、お水!
ナレーション : 一人で言ってて、準はハッと気付いた。それ全部・・・・・私がするのー!!(><)
準 : ま…迷っている時間はないわね。
ナレーション : 重たい一八の身体を抱えて準はやっとの思いでベッドに寝かせる。
ナレーション : 準は一八の顔を覗き込んだ。一八は寝息を立てつつ眠っていた。
準 : クスッ
ナレーション : 準は一八の寝顔を見て思わず笑ってしまった。
ナレーション : 寝息を立てつつ眠る一八が可愛く思えた。そう思うと笑いが止まらないのも無理はない。
準 : 寝顔は可愛いんだから…
ナレーション : しっかし・・こんなところ人に見られたらホント、誤解されるだろうな〜。準は思わず苦笑した。
ナレーション : もし、人が来たら「ち、ちがうのよ! これは囮捜査なのよ!!」とでもいいわけしようっと。
ナレーション : 準は一八の寝顔を眺めながらそんなことを考えた。
一八 : う・・うーむ。
準 : 一八って、酔ってるときまでなんか苦悶してるみたい・・。あ、そんなことよりはやく楽な格好に・・
ナレーション : 一方、そのころ地下のバーでは大会出場者たちによるクリスマスパーティの真っ最中だった。
ポール : メリー・クリスマス!!
ミシェール : メリー・クリスマス! ポール!! アタシとアンタも敵同士だけど、今日だけは無礼講ね!
レイ : そんな〜、オレとミシェールも敵同士、ってかい?
ミシェール : クリスマス終わったら容赦しないからね。
ナレーション : クラッカーが鳴り響き、シャンパンの栓がクルクルポン! と勢いよくはじけとぶ。
ナレーション : ポールはいつもの赤い胴着にサンタさんの帽子をかぶり、ミシェールはグラビア誌に出てくるような、「サンタの格好したお姉ちゃん」のごとくハジケていた。
アンナ : あーら、ニーナ姉さん。彼氏がいないクリスマス、かっわいそうねえ・・
ニーナ : うっるさいわねえ・・いりゃあいいってもんじゃないでしょうが!!
李 : よせよ、アンナ。なにもクリスマスにまでケンカしなくていいじゃないか。
ナレーション : 李はタキシードに身を包み、クリスマス特製のカクテルを飲んでいる。その言葉に、なぜかニーナはますます傷ついた。
ポール : あっれえ? そういえばキングは??
ミシェール : ああ、彼、クリスマスのミサでいそがしいって〜。それにクリスマスは孤児院の子供達とすごすんだってさ。
ポール : へえ。そういえばロウのヤツもいないな〜。奥さんやフォレスト連れてきたらよろこぶだろーに。
ミシェール : 教育上悪いよ。
レイ : そうそう、悪いヤツはオレがとりしまちゃうもんね〜〜。
ポール : 悪いヤツ、っていえば一八はどうした、一八は?
ナレーション : 食事をするみんなの手がいっせいにとまった。お互いに顔を見合わせて「知ってる?」「知らない。」と繰り返す。
ポール : 李、オマエならなんか知ってるだろ。一八、今どこにいるんだ?
ナレーション : バーにいるみんなの視線が、李に集中する。
李 : ああ・・一八ね。
李 : そういえばかれこれ2,3時間顔を合わせてない。
アンナ : そういえば準と仲良くエレベーターに乗ってたのを見たわよ。
一同 : え゛っ!
アンナ : あと、あ〜んなことや、こ〜んなこともしかけてたわ。
ポール : か、一八も隅に置けないな〜。は、は、は…。
ミシェール : 笑い事じゃないと思うけど…。ジュン、大丈夫なの?あいつ手が早いし。李ほどじゃないけど。
李 : 口が過ぎるぞ、ミシェール。今日はクリスマスに免じて許してやるが、次言ったらただじゃ済まないからな。
ナレーション : 李は不機嫌そうにカクテルを飲み干した。
アンナ : 李。怒らないの。今日は…ね?
ナレーション : アンナが李に優しくすり寄る。
ポール : ケッ! みせつけやがって〜〜!!
ミシェール : さすが彼女いない歴28年♪ ダテじゃないね。
アンナ : あ〜ら、姉さんだったらいつでもど〜〜ぞ〜〜 っていうか、もうそろそろもらってくれる人いなきゃヤバイって感じ?
ニーナ : あいにく、アンタみたいにホイホイ男変えられるタチじゃなくってね〜え〜(怒)
李 : オイ・・どういう意味だよ・・。
ニーナ : いつだったかしらね、アンナがアタシに「李はいままでつきあったオトコのなかではベスト10に入るわ」って自慢してくれたのは・・フン。
李 : アンナ・・おまえ、いままで何人の男と・・
アンナ : ニーナーーーーーッ!! また根も葉もないでまかせを〜〜〜!!
ミシェール : ボソッ・・(でまかせに聞こえないところがまたすごいわね・・)
ポール : よし、決めた!!!
一同 : ビクッ!!!
ミシェール : な、なによポールいきなり!?
ニーナ : いっとくけど、アンタの彼女なんかには絶対ならないからね!
ポール : (くやしいけど、それはおいといて!) 熱血格闘家ポール・フェニックス! 最上階スウィートにいる一八と準に強襲かけまっス!
ナレーション : バーにいるすべての面々に戦慄が走った。アホか・・というあきれとともに、でも、いってみたい、という抑えきれない好奇心。
レイ : ま、まあ、本官がとりしまらなきゃイケナいことになってるのかもしれないしね〜〜。
ポール : どいつもこいつも彼氏彼女をつくりやがって〜〜! もう許さん!!
ミシェール : そういうのを「あからさまに嫉妬してる」っていうんだよ。
アンナ : なに?ポールって、準に気があったの?
李 : そりゃ、一八の方に気があったらやばいだろ。
アンナ : そういう意味じゃないわよ。
李 : じゃ、どういう意味だよ。
一同 : ・・・・・・。
ナレーション : 全員が李に注目した。こいつ、本気で言ってるのか、と思う者も少なくなかった。
レイ : ぼそぼそ…(おい、李って天然か?)
ミシェール : ヒソヒソ・・(少なくとも冗談には見えないわね)。
ポール : オレ達と世界が違うヤツに用はねえんだよ。さ、いっくぞー!!
ミシェール : おっもしろそー。待ってよ〜〜、アタシも行く〜。
レイ : いーのかなー。他人の恋路は邪魔しちゃ行けないんだぞー。
ニーナ : 女にうつつ抜かしている一八を殺る・・フフフ、ゾクゾクしちゃう・・。
アンナ : でもアイツのことだから、邪魔なんかしたら毒ヘビのようにネチネチと復讐してくるかも・・
ニーナ : そのときはそのときでまた返り討ちよ。さ、行くわよ!
アンナ : 返り討ちなんて出来るわけないのに…。なにはりきってるんだか。
ニーナ : なんか言った!?
ミシェール : スポーツ誌にタレコミして週刊誌に写真送って・・(←妄想モード)
アンナ : あら?何か聞こえた?(ニヤリ)
ニーナ : あんたの始末は後回しよ!さ、行くわよー!!
平八 : ちょっとまてーーーい!!!
ナレーション : そのとき、バーの壁がボコッと人型に穴が崩れ、そのなかから三島平八が現れた!!
平八 : ワシが三島家頭首、三島平八であーーーーるッッ!!!
ミシェール : 平八!?あんた一体どこから来るのよ!!
平八 : どこだっていいんじゃー!がはははは!!
李 : どうしたんですか?急に訪ねて来たりして…。
平八 : どうしたもこうしたもあるか!!
ナレーション : ドンッ!と床に大きな地響きを鳴らすと、平八はじろりと李を見返した。
平八 : 一八のバカがまた何かをしでかそうとしているのではないのか!?
ミシェール : あら、奇遇。これから宅の息子の醜態拝みにいこうかと・・
平八 : ぬあにいいッ! それはどういうことだ!?
李 : 実はですね・・(ごにょごにょ)
平八 : なんだとーーーーーッ!! 一八が準を部屋に連れ込んだーー!?
李 : はあ・・まだ確定とはいえませんが。
平八 : ううむう・・ヤツめ、いつの間に・・。 学生の頃はまーーったくもてなかったのにのう!
李 : どうします、行きますか?  
平八 : 大事な息子のおそかりし成人式じゃ! 行かねばなるまいて!!
レイ : (結局みんな出歯亀したいのね・・)
ナレーション : そのころ、ビルの最上階・・。突然、準は足元からゾクゾクッという悪寒がした。
準 : ・・な、なにこの悪寒は・・。
一八 : う・・
ナレーション : ベッドにひっくりかえったままの一八が、気持ち悪そうに体を丸める。
準 : あんな少ししか飲んでないのに…。
ナレーション : どうしたものか、と準はため息をつく。
準 : 一八さん、お水飲む?
一八 : ・・・・・・。
ナレーション : 返事がない。ただのしかばね・・・ではなかったが、うめきぐあいから見ると相当やばいことになりそうである。
準 : もう・・・。
ナレーション : とりあえず、首のあたりを緩めようとして準は一八のネクタイに手をかけた。そのとき!
平八 : こりゃあ!バカ息子!準を解放せんかぁ!
ナレーション : 部屋のドアを平八が勢いよく鬼瓦でつき破ってきた。
李 : ありょ
ナレーション : 突撃隊は困惑した。何故なら状況が想像していたのと反対だったからである。
ニーナ : あらあら・・・準さんってば案外積極的なのねぇ・・・
準 : えっ!ち、違います!一八さんが酔っちゃったので・・・
一八 : う〜・・・。
ナレーション : 気分が悪いのを堪えながら一八はゆっくりと上体を起こした。
一八 : うるせえぞ〜。おやじ〜。何しにきやがったぁ〜。
ナレーション : 言葉に力が無い。
平八 : 準を助けにきたのだ!貴様の毒牙にかからんようにな!
一八 : なんだと〜?このくそ親父…。う…。
準 : か…一八さん、あまり動いては…。え!?
ナレーション : 一八は差し伸べられた手を掴み、準の身体を自分の方へと強く引き寄せた。
準 : か…一八さん!?
一八 : てめえ等にはこの部屋に入る許可は出してねえはずだ。とっとともとの場所に戻りやがれ。
李 : そうだなーこの調子じゃ手をだすにもだせないだろ。それに後で逆恨みされたらこえーしなぁ
ミシェール : そうね〜心配して損しちゃったわ
アンナ : んじゃ一八、お大事にね〜
一八 : こんにゃろ・・・俺の気持ち悪さも知らねえで・・・!
レイ : 準さーん、今は一八の看護婦になってあげてよ。あ、後で俺にも。
平八 : ふん!仕方ないのぉ。準さん、なんか手悪さしたらビルの屋上からでも落としてええからのー!
ナレーション : 捨てゼリフを残し突撃隊はすごすごと去っていった
準 : ・・・何だったのかしら、みんな・・・。
一八 : バカばっかしだな、ったく。
準 : あ、大丈夫?気分は治ったの?
一八 : まぁなんとかな。あいつらが持っていったみてーだ。
準 : 見た目によらず下戸だったとはね〜フフ、おっかし〜い
ナレーション : 準はおかしそうにくすりと笑い、一八をじっと見つめた。
一八 : ま、何とでも言えよ。ん・・・雪が小降りになってきたか?
ナレーション : 一八は準を抱き寄せながら窓に映る白く染まった下界を見下ろした。
準 : うわぁ、真っ白!きれいね・・・、これぞ純白ね。
一八 : 雪も止んだことだし、屋上でもいってみるか?
準 : うん、行く!ガラス越しよりずっときれいだよ。
一八 : 寒いからこれ羽織ってろよ。
ナレーション : 一八は黒い皮のコートを準に渡した。
準 : ありがと。わ、サイズおっきーい。
ナレーション:一八のぶかぶかのコートを羽織り、子供のようにはしゃぐ準。
準:・・一八さん。
ナレーション:二人はしばらくお互いをみつめあうと、黙って腕を組み、エレベーターへと消えて行った。
準:一八さん、見て・・・・!! 
ナレーション:その日の街の美しさを、二人は生涯忘れることはなかった。降り積もった雪は、都会のきれいなものもきたないものも、一面の白に染めあげていたのだった。
一八:聖夜、か・・。
ナレーション:今日このときだけは準が敵であることを忘れよう、一八は思った。この雪に、すべてが覆い隠されてしまったのだ、と。
準:一八さん、私・・今日のことは忘れないよ。素敵なクリスマスを、ありがとう。
ナレーション:それから19年たっても、そのときの準の笑顔は一八のなかで鮮明にのこっている。あの日から自分達のすべてが始まり、そして今日にいたっている。
一八:電話の一本ぐらい、いれておくか・・・。
ナレーション:雪降りしきる空を見上げながら、一八は受話器をとった。もう19歳になる息子が電話にでたので、母さんをだせ、と言った。
一八:準か? 俺だ。今日はどうする? ・・家のパーティは、仁にまかせておけばいい。19年前みたいに、部屋に突然来られたら迷惑だしな。・・来るなら早く来い。今年のクリスマスも、雪が積もりそうだ。

 

終わり♪