勝手にバレンタイン

〜告白編〜

ナレーション : 話変わって、三島邸の御台所。オーブンからは、チョコレートケーキのいい匂いがぷ〜んと漂っていた。
: フフフ・・仁ってば、あーいう顔してけっこう甘いもの好きだからね〜♪ 喜ぶぞー!
一八
: なんだ、ケーキ焼いてるのか?
: 一八!! ・・そういえば、アンタ鼻が利くほうだったわね。 
一八 : 俺にか。
: え、ええ、そ、そうよ。あと李とか、お義父様とか・・どうせシャオちゃん達もここに来るんだから、ケーキとかの方がみんなで食べられていいでしょ?
一八
: 甘いものは苦手だ。
: あ、それじゃ頭数減ってちょうどいいわ・・って、何ムスっとしてんのよ、一八?
一八
: ケーキじゃなくて、俺だけのはないのかよ・・・。
: あら、「一八だけの」なんていったら李くんとかお義父様がヤキモチ妬くじゃない。
一八 : いい気味だ、勝手に妬け。
: いい歳して♪ そういうところがかわいいんだけど・・
一八 : オマエだって、いいかげんいい歳だろう。
: 歳のことは忘れました。
: おや、いい匂いですね。チョコレートケーキですか?
ナレーション
: 李が、チョコのいっぱいはいった紙袋かかえて台所に入ってきた。渋い顔をする一八。
: あら、李! 今年のバレンタインもすごいわねー、たいした釣果じゃない。
: たいしたことないし、お情けですよ。
一八
: もてるワリに、いつまでも結婚しないんだな、オマエ。
: だれのせいでそうなったと思ってるんだ! 誰の!!
: あきらかに・・この人のせいよね。
ナレーション : 準は一八を指差して、ため息混じりにいった。
一八 : なんだと!?
: だってそうじゃない。傍若無人で傲慢で冷酷で卑怯でケチで人使いが荒くて・・
: そのくせ、いざコトがおこるととたんに冷静になってヘンなところで頭が良く回る。
: この人のお守り役ホントに大変でしょうね、李。
: はい、そりゃーもう。
一八 : 言ってくれるじゃないか、二人とも・・。
: オマエのガキんちょどものお守りもな。
: え、仁と仁美も・・??
: ・・・・こうみえても俺、二人がオシメの頃から今日までずーーーっと、お世話してきたつもりですが。
ナレーション
: 一瞬、ケンアクな雰囲気につつまれる3人だった・・。
: あ、り、李くん、今日はその、日頃の苦労をねぎらってチョコレートケーキ焼いたのよ、食べてね♪
: なんかだまされてるみたいですが、いただきます。
平八 : おお、準さん。チョコレートケーキとは美味そうじゃのう!
: お義父様もいかがですか? だって今日はバレンタインデーですもの!
一八
: 親父!! テメエにやるチョコはない! とっとと帰れ!!
: まあまあ、いいじゃないの。一八。みんな平等に食べられるんだし。
一八
: イ・ヤ・だ!!!
ナレーション : そこへ、シャオとジュリアにせっつかれるようにして両手いっぱいにチョコをかかえた仁が帰ってきた。
: ただいま・・おや、またチョコ・・。
一八
: またやっかいなヤツが・・。
シャオ
: 仁ってば!! ホラ、私、奮発したんだよ! チョコ受け取ってくれるだけでもいいじゃない!!
ナレーション
: きれいな包装紙とリボンで飾られた箱をもって、一方的に攻めまくるシャオ。まけじと迫るジュリア。
: だから! 今日はもうチョコはいいってば!! こんなにもらったんだし・・
シャオ : バカァ!! だからアンタは朴念仁っていわれんのよ!!
一八 : コラ、仁! あんまり女泣かせんじゃねーぞ。
: (母さんは年中泣かせてるくせに・・)
平八 : シャオや、ワシにはないのかのう・・
シャオ : え・・? (ヤバー、わっすれてた・・)
: 仁ってば、相変わらずもてるわね。ケーキ、無駄になっちゃったかな。
: いただきます。
シャオ&ジュリア : !(怒!!)
ファラン : あーあ、だから言ったろーが二人とも。やめなって、こんなマザコン。
一八 : ファラン!? ウチには出入り禁止にしたはずだろーが!!
ファラン : ちーッス。 仁美ちゃん送ってきました〜。
仁美 : ただいま、お父さん。
一八 : あ、ああ。・・・って、仁美! オマエこんなんにチョコやったのか〜〜!!
ファラン : じゃーん! ハート型チョコレート〜〜〜〜〜!!
一八 : !!! 
仁美 : 一応、買い物につきあってくれたからね。ハート型なのは、それしかなかったからだけど・・。
ファラン : フフッ。いーだろー! 
一八 : 仁美〜〜ッ! 自分の値段を下げるようなマネはやめろとあれほど言っただろう!
仁美 : たかがチョコじゃない。
ファラン : オレにとっては〜〜大きな一枚〜〜♪
一八 : 他にいい男なんて腐るほどいるんだぞ! それを、なんでこんな不良に!!
仁美 : お父さん、あいかわらず古いよ、その考え・・。
一八 : 古くて構わん!! 
: やめなさいよ、一八。年頃の女の子、彼氏の一人や二人ぐらい。
一八 : なにッ!? 準、オマエ彼氏なんていたのかッ!!
: ちょっとー、それ、どういう意味よ!? 
シャオ : (・・どうでもいいけどさ、仁のお父さんって仁美ちゃんのことがからむとスゴイよね。)
: (自分では、父親の威厳を保とうとしてるんだけどな。どうみたって、親馬鹿)
一八 : ん、なんか言ったか仁?
: いや、別に。
一八
: とにかくこんなヤツ俺が認めないからな!
ファラン:オヤジさ〜ん、あとはまかせてくださいッスよ〜。
一八:きさまになにをまかせるんだ、何を!!
仁美:顔合わせるたびケンカしてるね、アンタ達・・
:さあさあ、みんな仲良く! ケーキ食べましょ、ケーキ。
シャオ:あ、このチョコレートケーキ美味し〜! 準さん、お料理上手ですね。
:(え、遠慮のない子ね・・) そ、そう? 嬉しいわ、作ったかいがあった。
:上質のクーベルチュールですね。バレンタイン用に特注したんですか?
ジュリア:くーべるちゅーる?
ファラン:庶民はめったに食えネエ、ってもんだよ。
:そうよー。ウチの専属パティシエさんに教えてもらったの。
シャオ:くやしいけど、アタシが買ってきたのより美味しいや・・。
ジュリア:右に同じ・・
:あら、いいのよ。バレンタインは気持ちが大事♪ 買ってきたのでも、作ったのでもいいじゃない。
シャオ:でも・・
ファラン:あれじゃチョコの押しつけ・・
ジュリア:うるさいッ!(撲!!)
:オレはほんとに気持ちだけでいいんだけど。
シャオ:ぶっとばされたい? アンタ!!
一八:もらっておいたほうがいいぞー。女は、結婚するとコロッと態度変えるからな。
:単にオマエが嫌われるようなことばかりしてるからだ。
仁美:李おじさんは結構もてるのにね。はい、チョコ。
:オレに? 義理でも嬉しいな。
一八:やーい、姪バカ。
:オマエに言われたくねーーー!!
仁美:はい、おじいちゃんにも。
平八:おお、仁美はいいこじゃな。それにひきかえ、このバカ息子に不肖の孫は・・!!
:男からのチョコレートなんて欲しいんですか? おじいさん。
一八:おー、くれてやるくれてやる。爆弾付きでな。
平八:いらんわ!! 
一八:・・おい仁美、俺のは? 
ファラン:そういえば仁美ちゃん、オレ以外にもう一枚、ハート型チョコ・・へぶッ!
仁美:いちいちうるさいの! そんなの知らない!
ナレーション:プンプンになって台所を出て行く仁美。とりのこされた舅と婿(予定)。
一八:ひ、仁美ちょっとまて! そ、それは何だ!?
ファラン:お、オレも気になる!! 誰に最後のチョコ渡すんだ!?
ナレーション:仁美を追ってでていく二人。
:ああ、アホらしい・・。
シャオ:このすさまじい一家とつきあうためには、私もまだまだ要! 修行!! ってとこね。
ジュリア:なんの修行するのさ、なんの・・ 
シャオ:・・・花嫁修行。
ジュリア:・・・・・・・。
:でも今日は、シャオ達からチョコもらえてホントは嬉しかったよ。
シャオ:ホント!? じゃあ、受け取ってくれるの!?
:さっきは父さんがいたからな。目の前で受け取ったりしたら、なに言われるかわかんないから。
これ、ないしょだぞ。
シャオ:うん!!
ジュリア:・・(それだけ?)
:ジュリアも、ありがとう。ホワイトデーは・・期待してて。
ジュリア:鳴らない電話や、来ないメールは待たないことにしてるの。
シャオ:ホワイトデー!? うーんとねー、キャンディでしょー、マシュマロでしょー! あ、でも
仁のことだから食べ物以外の方がなにか期待できそー!!

ナレーション:次の日。結局、仁美からも準からもチョコをもらえなかった一八。
一八:ケッ・・女なんて。ん・・なんだこりゃ、机の中に・・
ナレーション:机の中には、でっかいハート型のチョコレート。それにメッセージが添えられていた。
仁美の筆跡で、「お父さんへ」と、ただ一言。
一八:あいつめ・・。
ナレーション:一八は、まんざらでもなさそうな顔で、ハート型チョコをパキッと一口食べた。こういうやり口は、母親そっくりだ。
一八:・・まてよ。
ナレーション:一八は、自分のスーツのポケットをさぐってみた。そして、ニヤッと笑うと、包装紙とリボンで飾られた小さな箱をポケットからひっぱりだした。

おしまい♪