不・幸福論
気がつかないの? 私がここにいたかっただけ。
作:まゆを様
事が済んだら泣きながら出て行くか、
と思っていたが女は朝まで俺の側にいた。
薄暗い部屋のカーテンから覗く光がやけに眩しい。
衣擦れの音がする。
隣で女がようやく帰り支度を始めたようだ。
「何で俺を殴らない?」
煙草を咥え、俺はふと訊いてみた。
自分でやらかしておいて何だが、恨み言も言わず、
そんな態度も見せない理由に興味があったからだ。
無視されたかと思い始めた頃、ポツリと女は答えた。
「あなたが可哀相だから」
俺は煙草をシーツに落とした。火を点ける前で良かったと安堵する。
「ちょっと待て。普通逆だろう」
「じゃあ、何であなたはそんなつらそうな顔をしているの?」
帯を締める手を止めて、女の方が訊いてきた。
何をいっているんだ、この女は。
「俺が?」
「そう。ずっと。寝顔だって、叱られた子供みたいだった」
そう言えば不覚にも俺はこの女の前で眠ってしまっていた。
その間に殺されなかった事が不思議だ。
こんな事は今までなかったのに。
「私が帰ろうとしたら、あなた、手を握って放さなかったじゃない」
暗がりから同情するような瞳で見ていた。
その目は俺の自尊心を刺激する。
「同情はやめろ」
俺は女の二の腕をつかんだ。
「じゃあ、どうしてあんな真似したの」
「・・・・」
「気持ちの伝え方を教えてもらえなかったのね。誰からも」
俺は何も言い返せなかった。
力なく女の腕を放す。
「・・風間、悪かった・・」
過去が彼女に見透かされているようだった。
確かに俺はそういう事に慣れていない生活を送ってきた。
風間は無言で踵を返す。
「待てよ」
俺は彼女を引きとめようとした。
「さようなら」
風間は目を伏せて、俺の腕をすり抜けた。
ドアが閉まり、残ったのは捨てられた不器用な想いと静寂だけだった。
どひゃーッ!! なんだかモノスゴイ内容の作品です。
この前提が読みた・・は、おいといて!
この二人、オフィシャルでは「初恋」(28と22で初恋!)
だそうで、どこまでも不器用そうです。
つっぱしったら歯止めがかからない感じも・・かからなかったか。
まゆをさん、誕プレ小説ありがとうございました!!