ドルァ・エームォン
起きて、飯食って、学校行って、家に帰る。
毎日が、これの繰り返し。
俺はいじめられっ子だ。
弱い。ただ、それだけ。
度胸も、力も、頭脳すら無い。
何をやってもダメな人間なんだ。
そして、今日もまた、いじめられた。
ヤツの強烈なパンチが、俺の顔面にぶつかる。
殴られる理由なんか無い。
ただの八つ当たりだ。
それでも俺は耐えた。
反論したって、
また痛い目に遭うだけだからだ。
「へん、今日はこれくらいにしといてやるぜ。」
体格の良い男は、俺の胸倉から手を離す。
どうっ、と俺の体が地面に叩きつけられる。
「・・・・・・。」
ただ、黙って耐える事しかできなかった。
・・・・・・悔しい。
いつか・・・、いつか、必ず・・・。
復習してやる・・・。
これといって何等特徴の無い部屋だ。
しかし俺は、違和感を感じた。
・・・何だろう、何かが違う。
しばらく俺は辺りを見回す。
・・・押し入れだ。
押し入れのふしまが、少し開いている。
俺は朝、ちゃんと押し入れに布団を入れ、ふすまを閉めたはずだ。
・・・まさか、泥棒・・・?
俺は机の隣にあった金属バットを手に取った。
そしてゆっくりと押し入れに近づく。
「・・・・・・。」
ごくり、と唾を飲み込む。
そして、ふすまを開けようとした瞬間、
突然そのふすまが勝手に開いたのだった。
「う、うわあああああっ!!!!」
思わず俺は金属バットで押し入れの中を攻撃し始めた。
金属音が響く。俺は無我夢中で叩きまくる。
ふいに、金属バットが動かなくなった。
バットが捕まれている。
中から、ゆっくりと正体不明の物体が動く。
俺は恐怖のあまり、座りションベンを4滴たらした。
そして、その物体が喋り始めた。
「・・・我が眠りを妨げるのは貴様か・・・。」
俺は、精一杯の勇気を振り絞り、反論してみせた。
「お、お前が俺の部屋に無断で入ってきたんだろうっ!!?」
バンッ!!と、勢い良くふすまが開かれた。
俺はビビって、またも3滴こぼす。
中から出てきたのは、なんと青色のロボットだった。
関節部分の至る所から蒸気を吹き出している。
「・・・な、なんだ・・・、お前はっ!!?」
思わず腰を抜かしてしまい、俺は尻餅をついてしまった。
なおもロボットは喋り続ける。
・・・かと思ったら、再び押し入れの中に戻り、
「んじゃ、おやすみ〜。」
と言って、ふすまを閉めた。
唖然とする俺。
その間にポタポタとションベンがこぼれるが、
全く気が付かなかった。
「って、ちょっと待てぇぃっ!!」
俺は吹っ切れた。プチッと何かが切れた。
俺は押し入れのふすまを思いきり開けて、叫ぶ。
「だからお前は何者なんだよ!?
そもそもロボットが押し入れで寝るなっ!!」
青色のロボットは俺に背を向けて、いびきをかいている。
「おいっ、起きろ!!起きろってばっ!!
起きてよっ!!ねぇアスカ起きてっ!!」
しぶしぶこっちに顔を向け、こう言った。
「・・・またエヴァネタかよ。」
「いいから名を名乗れっ!!でなければ、俺が勝手に名前付けるぞ!!」
「・・・お好きなように。」
「んじゃあ、『ランバ・ラル専用ポリプロピレン』で。」
「俺の名は『ドルァ・エームォン』です、はい。すみません。」
やっと押し入れから出てくる。
「そうか。俺は『ノービ=ノービッター』だ。
で?お前はなぜここにいるんだ?泥棒か?」
なぜか俺は態度がでかくなってた。
「いや、上からの命令でお前の警護を頼むって。」
「上から?お前は一体何者なんだ?」
ドルァ・エームォンことランバ・ラル専用ポリプロピレンは、
自慢げに腕を組んだ。
「俺は、遥か未来の22世紀からやって来たのだ。」
「・・・未来から?それはどういう意味だ?
それに何でお前は俺の警護をするんだ?
何で青い色で塗装しているんだ?
なぜ口笛は遠くまで聞こえるんだ?
タモリはヅラなのか?」
一気に質問をする俺。
しかしコイツは冷静に答えた。
「お前は、俺たちの設計者だからだ。
お前はいつ自殺するかわからんからな。
お前が死ねば俺たちも消える。だから守るのだ。
青く塗装してあるのは水陸両用だからだ。
口笛は高いところで吹けば遠くまで聞こえる。
あと、森田は自毛だ。」
そうだったのか、彼はヅラではなく自毛だったのか。
いや、そうじゃなくて。
「・・・とにかくそういう事だ。おやすみ。」
三度押し入れに戻ろうとするドルァ。
俺はバットで牙突を繰り出す。
バットは奴の後頭部に直撃する。
「おうわっ!!テメェ、俺を殺す気かっ!!」
「だから寝るな!!」
「俺は疲れてんだよ!!寝かせろよ!!」
「だれがここに居座って良いと言った!!?」
「上司に。」
「上司が許しても、この家の主は俺だ!!俺が許さん!!」
「ここにいなきゃお前を守れないじゃん。」
「そんなウソ臭い事言って、本当は居座ろうとしてんだろ!!
この、悪趣味コスプレ野郎!!」
ドルァはやれやれ、と肩をすくめる。
こいつ、俺をバカにしてるな。
「んじゃ、証拠見せてやるよ。」
と、突然立ち上がる。
「証拠だと?」
「ああ、お前の敵を排除してやるよ。」
「・・・本当だな?」
「ああ。インディアン、ウソつかない。」
俺の敵。それはヤツしかいない。
もし、こいつが本当に俺を守ってくれるのであれば、
ヤツを倒してもらおう。そう思った。
「よし・・・、なら俺の敵に会わせてやるよ。」
案の定、土管の上に座り込んで漫画本を読んでいた。
「・・・あいつが、お前の敵か?」
「そうだ。人類の敵だ。」
「・・・名は?」
「『ゴーダ・タッケスィー』。凶悪な輩だ。」
「そうか。」
「そうだ。任せたぞ。」
「うむ、じゃあさよなら〜。」
と言って、手を降って帰ろうとしやがる。
「って待てよ!!お前、あいつを倒すんだろうが!!」
「え〜?だって強そうじゃん。」
「俺を守るのが仕事だろう!!?」
「無理無理。あいつにゃ勝てっこねぇ。」
「じゃあ何しに来たんだお前は!!!」
と、その時。
突然、背後から殺気がした。
ゴーダだった。
「よう、ノービ。また殴られに来たのか?」
「くっ・・・!!」
俺は一歩下がる。
ゴーダのプレッシャーは、いつもながら恐ろしい。
「ふふふ・・・、ゴーダ!!
今日こそ、俺はお前を倒すっ!!!」
と、背中からドルァが叫ぶ。
「って、いらん事言うなぁぁぁっ!!!」
「ほほぉ、ノービよ。お前はいつからそんなに偉くなったんだ?」
どうやら、俺が言ったと思い込んでしまったようだ。
「ちちちち、違う!!今のはこいつが・・・!!」
と、後ろを指さす。が、ドルァの姿はなかった。
「・・・・・・逃げやがった・・・。」
俺は愕然とせざるを得なかった。
「さぁて、ノービ。ゆっくりと楽しんでやるぜ・・・!!」
「う、うわあああっ!!た、助けてぇぇっ!!!」
と、その時だった。
ゴーダが背後の気配に気づき、とっさに身をかわす。
「へっ?」
何やら閃光が向かってきた。
俺は何が何やらさっぱりわからず、かわすこともできなかった。
「ちっ、俺の『エアーバスターカノン』をかわすとは、やるな。」
ドルァがいつの間にかゴーダの背後に回り込んでいたのだ。
「・・・俺を巻き添えに・・・すんなよ・・・。がくっ。」
ボロボロな俺を後目に、ドルァは再び武器を構える。
「ほほぉ。貴様、ノービの仲間か。面白い!!」
ゴーダはいきなりジャンプする。
常人には真似できない跳躍力でドルァに迫る。
ドルァはゴーダを目で追って、タイミングを見計らう。
「でやあああっ!!」
空からの急降下キックだ。
だが、ゴーダの攻撃は隙だらけだった。
ドルァは口元でニヤリと笑う。
「うおぉぉぉりゃああぁぁぁっ!!イナズマ・キィィィィック!!」
ゴーダのキックを、ドルァは左手一本でガードした。
「何っ!!」
「うおおっ!!上段当て身投げぇっ!!」
ゴーダの力を利用し、そこに己の力を加えて地面に叩きつけた。
「ぐぅぅっ!!?」
そこに、ドルァは容赦無くゴーダの首をつかみ、
上にゴーダの体を掲げる。
「ふんっ!!」
再び地面に頭から叩きつけた。
鈍い音が響き、ゴーダは呻き声をあげる。
「ふっ、この程度か。」
ドルァは誇らしげにしゃくりあげた。
強い、確かにドルァは強い。
伊達に青く塗装していない。
ところが、突然ゴーダが起き上がる。
「っ!!?」
ゴーダは首をポキポキと鳴らし、ぐるりと首を回した。
「ふっふっふ・・・。なかなか楽しめそうだな。」
ドルァは再び構える。
「どうやら、本気を出さなければならんな・・・。」
と、ゴーダが言うと同時に、ゴーダの体からオーラが放たれた。
「な、なんだ・・・? ・・・まさかっ!!?」
俺は、ゴーダの真の力を思い出した。
「うおおおおおっ!!!」
ゴーダのオーラはやがて鎧となり、全身を覆う。
そう、やつの真の力。
最強の鎧、『ジャイ・アーマー』だ。
どんな攻撃も防ぎ、中身には一切ダメージを与えることができない、
まさしく「最強の鎧」の名に相応しい鎧だ。
しかしドルァは怖じけづく事なく、ゴーダの姿を見ている。
「ふっ、俺は22世紀から来たのだ。
そんな鎧の弱点なぞ、とっくに知っておるわ。」
「な、なんだとっ!?」
「その鎧の弱点・・・。それはっ!!」
ドルァはいきなりゴーダに猛ダッシュをする。
ゴーダも、拳で迎撃を試みる。
しかし、ゴーダの拳は空を切った。
ドルァは一瞬でゴーダの頭の上を飛び、背後にまわる。
「し、しまっ・・・!!」
振り返ろうとしたが遅かった。
ドルァは、この鎧の弱点を知っている。
ゴーダは、敗北を悟った。だが、その時。
ばぶぅっ!!
「ぐぁっ!!?」
ゴーダの最終兵器、『アトミック・バン』が尻から放たれた。
威力は凄いが発射条件が厳しいこの技を、
ゴーダはとっさに放ったのだ。
「・・・昨日の晩飯がイモでよかったぜ。」
ドルァは、ゴーダのその言葉で涙した。
「そんな、戦時中じゃあるまいし・・・。がくっ。」
「ラ・・・、ランポリィィィィッ!!!」
ちなみにランポリとはランバ・ラル専用ポリプロピレンの略だ。
ゴーダは勝利を確信した。
「ふっ・・・、貴様、なかなかいいファイトだったよ。
正直、もうダメかと思ったぜ。」
意識の無いドルァに、ゴーダは感想を述べた。
そのゴーダの表情は、さわやかだった。
「お前とは、また手合わせ願いたいものだな。」
何だか知らんが、友情が一人勝手に芽生えたようだ。
俺は思わず拍手して、こう言った。
「素晴らしい、感動だよ。これが男の友情、
いわゆる『心の友』というやつだね。」
ゴーダは頷き、高らかに笑った。
ああ、友情って素晴らしい。
このままハッピーエンドで幕を閉じよう、
そう思っていたが、
「さぁてノービ、今度はお前の番だ・・・。」
「へっ?」
再び凶悪なオーラを放ち、俺を睨んでいた。
やっぱり、許してくれないのね。ぐすん。
そう思った時、俺は体から魂が抜けてゆくのを感じた・・・。
fin.