ドルァ・エームォン 3
が、それは去年までの話だった。
「なぁノービ、どら焼買ってこいよぉ。」
突如現れ、俺の家に住み着いた謎の青いロボット、
その名もドルァ・エームォンが俺の昼寝場所を奪っていた。
弾き出された俺は机に向かって夏休みの宿題をやらされていた。
「…自分で買いに行け。」
俺は振り返りもせずにノートとにらめっこをしている。
「なんだよ、引きこもりかよ。不健康だなぁオイ。」
「…そう思うなら自分で買いに行け。」
ドルァは、やれやれといった表情をしながら渋々立ち上がった
そして部屋を出ていこうとして扉のノブに手をかけようとした時、
ふいに何かを思い出したように振り返った。
「あー、すっかり言うの忘れてたけど、今日、俺の妹が
ココに来ると思うから。」
そう行って部屋を出ていった。
「…は?ちょ、ちょっと待てぇっ!!」
俺は慌てて追いかけたが、ドルァはブーストを吹かして
そんでもないスピードで逃げるように去っていった。
「…な、なんなんだよ、なんなんだよっ一体!!」
叫んでみても、すでにドルァの姿は見えなかった。
ため息混じりで俺は部屋に戻った。
すると、謎の物体がそこにいた。
モデルかと思うほど美しいスタイルの女性に見えた。
が、体は黄色に塗装してあり、ドルァと同じく蒸気を
吹き出していた。体を動かす度に何かきしむ音がする。
「…あ、あんたは、もしかして…。」
俺は震える指でその物体を指しながらつぶやいた。
そして、その謎の黄色いロボットは言った。
「おう、ウチの兄貴は何処におるんや?」
何故関西弁?
「ド、ドルァは今、ちょっと出かけてます…。」
「なんや、おらんのかいな。よぉほっつき歩くヤツやのぉ。」
思いっきり俺の睨む黄色いロボ。
その顔つきはドルァに似ている。
「あ、あの、あなたは…?」
俺の声がうわずっていた。
ドルァとは何か違うプレッシャーを感じていたからだ。
「ウチはドルァミや。そこの青いフヌケの妹や。」
と言いながら俺の後ろを指さした。
そこにはどら焼を入れた紙袋を持ったドルァがいた。
って言うか、帰ってくるの早っ。
「おう、我が家へようこそ。」
ドルァは手で挨拶をする。
「いつココがお前の家になったんだよ…。」
そんな俺の非難を無視したドルァは部屋の真ん中にどかっと座り、
袋からどら焼を取り出そうとした。
「俺の話を聞けぇぇぇっ!!」
ブチ切れした俺は、かかとをドルァの後頭部にめり込ませた。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
どうやらクリーンヒットしたらしく、ドルァは絶叫した。
「なんや、どうせ殺るならこれぐらいせんとなぁ。」
突然ドルァミはドルァの首を掴んだ。
「え?あ、あのー…。」
ドルァの体は持ち上げられ、苦しそうに呻く。
「おらぁぁっ!!」
ドルァミの気合いと共に、ドルァの体が爆発した。
「ひええええぇっ!!?」
どさっ、と、ドルァの体が床に落ちる。
「あわ、あわわわわ…。」
突然の事態に俺は震えた。
そしてドルァミは俺を見て不敵な笑みを浮かべる。
(…こ、殺される…!!)
そう思った瞬間、頭の中が真っ白になり、俺は気を失った。
「……はっ!!?」
気がつくと、俺は自分の部屋で仰向けになっていた。
蝉の声が響きわたり、子どものはしゃぎ声がする。
部屋には、俺一人しかいない。
「…夢…、だったのか…?」
着ていたシャツは汗でびっしょりになっていた。
「そうか、今までの事は全部夢だったんだな。良かった…。」
強烈な悪夢だったんだ。
冷静に考えてみれば、あんな謎なロボなんているハズがないのだ。
「長い悪夢だったんだな…。」
しかし、悪夢は続いていた。
「おう、ただいま。」
青ロボと黄ロボが揃って俺の目の前に現れた。
「もうイヤ…。」
俺は再び夢の中へ墜ちていった…。
fin.