第一話 10月21日 謎の人

 「ま〜いこちゃん〜!」
私の目の前で息を切らしている女の子、彼女の名前は「当夜 明美(とうや あけみ)」。
無理矢理友達!と言い切って本当にそうしてしまった強者である。
彼女のことをしらない生徒のほうが少ないだろうというくらの有名人で入学から数ヶ月ですごい数の友達を作ってしまった。
性格は明るく人なつっこいけど決して強引なタイプじゃないという理想的なもの。
今だなぜ私について回るのか謎なんだよね。
「麻衣子ちゃん、文化祭の実行委員やろう!」
「・・え?」
 いきなり何を言い出すんだろう? びくりして気の抜けた返事をしてしまった。
「あのね、今すっごい忙しくて人手不足なの! いいでしょ? ね、お願い!」
 う〜ん、相変わらずいきなりでストレートだなあ・・
「最後のほうにだけ入っちゃったら混乱するでしょ?」
「大丈夫大丈夫! ちゃんとサポートするから。
じゃあ今日の中休みにメールするから帰っちゃダメだよ? 話だけでも聞いてね?」
 何が大丈夫なんだろう? そう聞く前に走って行ってしまった・・ 
この調子なら何言ってもダメかなあ、そうあきらめて教室に向かった。
一限目の始まるチャイムがなったのはそれからしばらくしてからだった。

 「ふう。」
朝一番から授業の日はきつい。やっとお昼休みだよ。食堂で一息つくまで長かったなあ。
実際食堂は人数に対してせまい。
いい席はすぐとられてしまうのでいつもダッシュでテーブルを確保している。
 一息ついてぼ〜っとしていると明美を見つけた。
おや? 誰か男の人と一緒みたい。彼氏はいないといってたのになあ。
何やら仲良さそうに話してるけど。
・・あれ? そういえば・・あの人は・・生徒会の文化委員長? 一回見たことあるっけ。
文化祭の話してるのかな?
 言うのが遅れたけど明美は文化祭実行委員長だったりする。
だから仲良かっただけか。
・・でもよく考えたら私には関係ないか・・ 私は食券を買って列に並んだ。
 ・・ただ・・ 笑っている明美の顔がすごく悲しく見えたのは気のせいなのかな?
それが少し気にかかった。

 この学校では一時間が90分、2時間目が終わったら昼休み、4時間目が終わったら中休み、になっている。
 今日私は3つ目の授業で終わり、つまり約90分をつぶさないといけない。
「う〜ん、何しようかな・・」
 いくら前進的な設備と校風とはいえやはり学校は学校。
遊ぶものがあるわけもないし・・ と歩いてると廊下に張り紙をしている人が目に入った。
・・この人は・・
「あれ? 君は確か・・平さんだよね?」
 あれれ、名前知ってるよ〜 文化委員長に声をかけられちょっと戸惑う私。
明美に聞いたのかな。
「そ、そうですけど・・」
 声が裏返っちゃった。
「当夜さんから聞いてるよね? よかったら僕らの仕事を手伝ってもらえないかな?」
 あ、やっぱり聞かれちゃった。その話だとはおもったんだけど・・
「すみません、そういう事はちょと苦手なので・・」
「・・うん、それは今だけ? それとも昔からかい?」
「・・!」
 え・・? 今の聞き方・・は・・
「思い出に捕らわれて立ち止まっていては悲しむ人がいるんじゃないかな?」
 もしかして・・知ってる!? 明美も知らないはずなのに・・どうして!?
「あ・・あのっ!」
 思わずくってかかろうとする私を彼は手で制した。
「聞きたいことはわかってるけど、今は話す時じゃないよ。
 君が立ち止まるのをやめたら・・話そう。」
 彼はとても優しい瞳で見つめながらそう言った。いや、その目は優しさと悲しさが同居してるようにも感じる。
「わかりました。」
 正直実行委員に入るのは気が進まない。
だけど・・それ以上にこの人に興味がでてきてしまった。
彼は何者なのか?
彼はどこまで知ってるのか? そしてどこから知ったのか?
私にとってそれは今一番重要なことになった。
「今ね、授業がない実行委員が集まって打ち合わせしてるんだ。
 紹介しておくよ。
 来るよね?」
 うなずく私を連れて小会議室の扉を開ける彼。中には知ってる人も知らない人もいた。

 適度に暖房が入り快適な環境が整えられていた。
小会議室といってもコンビニの標準的な広さくらいはあり、中央にある円状のテーブルを囲み3人が座っていた。
「お疲れさま、みんな。今日から手伝ってくれることになった平 麻衣子さん。部門は・・」
 振り返って私の顔を見てきたのでこくりとうなずいて返した。
「じゃあ今一番忙しい展示部門に入ってもらうよ。」
 勧められた席で彼は私が手伝うところについて説明してくれた。
なんでも大きく分けて2つの部門にわかれているとのこと。
展示とステージ発表をそれぞれ管轄しておりトラブルの解決や要求を学校側に通すよう説明をしたりするらしい。
「初めまして、私は反野 恵(はんの めぐみ)です。展示の責任者をやっています。」
 説明が一段落すると一人の女性が立ち上がって自己紹介をしてくれた。
「よろしくお願いします。」
 ぺこりと頭をさげ応えると次は男の子があいさつしてきた。
「俺は 位利 真(くらり まこと)。放送機材を専門にしてる。」
 この二人は知らなかった。けど最後の一人はよく知っている人だった。
「私は廷郁 英理子(ていく えりこ)。文化副委員長をしています。」
 廷郁さん、この人は成績が校内で一桁の順位にいつも入る。
運動は・・苦手らしくよく失敗しちゃうと聞くけどね。
話によると文化委員はこの人でもってると噂が流れたところ激怒して否定したとか・・
「あ、じゃあ最後になっちゃったけど僕は宮野 悠(みやの ゆう)。文化委員長をしているよ。」
 どうやらこの四人がメインメンバーとして活躍しているみたい。
明美は顔の広さと行動力で活躍しているみたいだけど。
「じゃあ今の状況を軽く説明しようかな?」
 数枚の資料と少ししてから合流した明美に説明を受けた。
どうやらかなり人手不足のようだ。
やるからには・・ちゃんとするけど、やはりあの言葉・・気になる・・


                                
プロローグへ              一覧へ                 第二話へ