女の子「おじいさん、何かお話しして」
おじいさん「じゃあ、今日は『浦島太郎』のお話しをしてあげよう」
むかし、むかし、浦島太郎という少年がいました。
太郎は海で釣りをしていました。
太郎「なかなか、つれないなぁ。困ったなぁ。今日の晩御飯に魚を釣って帰らないと、母さんにひどく怒られちゃう。もう、『インディアン式拷問』はヤダなぁ」
太郎「まずいなぁ。釣れないと母さんに・・・」
太郎「あぁぁぁ、まずいなぁ。そろそろ、日が暮れてしまう」
太郎はそんなことを考えながら、ふと、砂浜の方を見ると数人の子どもがカメをいじめているのが目に入りました。
太郎「!」
太郎はそれを見るなりすぐに行動に出ました。
太郎は子どもたちの方へ走り出しました。
太郎「やめろっ!カメを離せ!」
子ども「タダじゃダメだ!何かよこ・・」
太郎「うるせー!そのカメを持って帰って夕飯の材料にしないと、俺の命がアブねーんだよ!
よこせ、カメっ!」
そうです。カメをみて太郎の頭に浮かんだのは、「魚の代わりにカメを夕飯にしよう」ということでした。
子ども「な、なんだよっ!タダじゃダメだって言ってるだろ!」
太郎「・・・」
太郎「・・・・・・これを、これを見てみろっ!!」
太郎はそういうと着物を脱ぎ、フンドシ一枚になりました。
子ども達「あっ!」
太郎「・・・・・」
太郎の身体は無数の傷痕で覆い尽くされていました。
切り傷、刺し傷、弾痕から、すでにかさぶたが出来ているもの、まだ血が滲み出ているものまで
ありとあらゆるキズがありました。
太郎「こう、なりたくないでしょ・・・・」
子ども達「・・・・・・」
太郎「母さんの・・・母さんの言う事聞かないと、こうなるんだ・・・」
子ども達「・・・・・」
子ども達「あげる・・・。カメ・・・・・」
太郎「ありがとう・・・・・」
こうして太郎はカメを手に入れました。
太郎は多少軽い足取りで家路に就きました。その途中どこからか声が聞こえてきました。
?「太郎さん、太郎さん」
太郎「?!、だれ?!」
?「ボクです!カメです!」
声の主はカメでした。カメは太郎が腰にぶら下げていた籠の中にいました。
太郎「カメ?」
カメ「そうです!アナタにお話しがあります!」
太郎「なんだい?僕は急いでるんだ」
カメ「アナタはボクを食べようというんでしょ?!」
太郎「しかたないんだ・・・母さんが・・・」
カメ「お母さんが怖いんですね。さっきの話聞きました」
カメ「そこでアナタにお話しがあるんです」
太郎「なんだい?急がないと・・・」
カメ「ボクを食べないと約束してくれるなら、アナタを素晴らしい所に連れていって差し上げます」
太郎「素晴らしい所?・・・って?」
カメ「アナタのお母さんのいないところです」
太郎「・・・・・」
カメ「・・・」
太郎「そんな所ない・・・」
太郎「そんな所なんて無い・・・あの人からは逃げられないのっ!」
カメ「やっぱり、太郎さん、アナタにはあそこへ行く権利がある。いいえ、行くべきです」
太郎「あー、うるさいっ!僕はいいんだ!カメのくせに訳わからない事言うな!」
太郎は走り出しました。太郎の家に向かって。
太郎「ただいま!母さん!」
太郎「あのねぇ、あの、魚は釣れなかったけど、あのねぇ、代わりにホラ!カメを捕まえてきたよ!」
太郎「カメ、料理した事無いけど、だって、ホラ、母さんお料理上手だもんね!」
太郎「少し、小さいけど、大丈夫!僕、今日はあまりお腹すいてないんだ!母さん食べてよ!」
母「・・・・・・・・・・・」
太郎「じゃあ、僕、水をくんでくるね!」
母「・・・私に?」
太郎「え?何?母さん」
母「・・・カメを?」
太郎「そうだよ!そのカメねぇ、村の悪ガキがねぇ、いじめてたのを僕が助けたんだ!勇気あるでしょ?!」
太郎「でも、食べちゃったら、助けた事にならないね!アハハ」
母「太郎・・・・・、おまえ・・・」
母「太郎・・・・・、おまえ・・・、おまえはどぉぉぉして、そうなんだっっ!!!!」
母「おまえはこの私にっ!私にっ!こんな気色の悪いものをっ!!」
太郎「!!!ごめんなさいっ!!母さん!!ごめんなさいっ!!!」
母「おまえは、これをっ!これをっ、私に食わせて私を殺そうという気だねっ!!!」
太郎「違うっ!違うよっ!!母さん!違うよっ!母さんっっ!!!」
母「そうはさせないよっ!!!ちょっと、待っといでっ!!」
太郎「母さんっ!!どこ行くのっ!!ねぇっ!!どこ行・・っ!!その部屋には行かないでっ!!」
太郎「お願い・・・お願いしますっ!!ごめんなさいっ!!もう、カメは取ってきませんからっ!!」
太郎の母は奥の薄暗い部屋へ入っていきました。そして、少し経ち、部屋から出てきた時には手に何かを持っていました。竹で出来たノコギリのようなものです。
太郎「ああ!!あー!あぁああ!!ごめっ、ごめんなさ、ゴホッ、ごめんなさいぃぃ!!!」
母「これはね、太郎。これはね。良くお聞き、太郎」
母「かの信長公がね、裏切り者などを見せしめとして始末する時にね、使っていたものらしいの」
母「使い方はね、太郎。よくお聞き、太郎。首から下を砂に埋めてね、この竹で出来たノコギリでね、
首をゆっくりと切るらしいの。もちろん、切れ味最悪。竹だもの」
母「さぁ、太郎。首をお出し。太郎」
太郎「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
カメ「太郎さんっ!!!」
太郎「・・・・・・」
カメ「太郎さんっ!!!!」
太郎「っ!!」
カメ「逃げるんですっ!!早く逃げるんですっ!!!」
太郎「!!!」
カメ「さぁ、早くっ!!!」
太郎は我に返ると、カメを持って家を飛び出しました。そして、走りました。力の続く限り。
そして、遠くの砂浜でカメとたたずんでいました。引いては返す波を見ていました。
太郎「・・・・・僕、・・・・・僕・・・・・」
カメ「・・・」
カメ「太郎さん。やっぱりアナタは、行くべきです」
カメ「さぁ、ボクと行きましょう」
太郎「・・・どこへ?」
カメ「龍宮城、です」
太郎「そこは・・」
カメ「アナタのお母さんは絶対に来ません」
太郎「それはどこにあるの?」
カメ「海の中です。海のずっと、ずっと深くです」
太郎「そんなに、深くもぐれないよ」
カメ「大丈夫です。アナタなら」
カメ「さぁ、行きましょう。海に入ったらボクにつかまってください」
カメ「しばらくは苦しいですけど、我慢してください。その後は何も感じなくなります。何も」
カメ「さぁ、用意はいいですね?」
太郎「・・・うん・・・」
カメ「では、行きましょう。何人にも邪魔されない、龍宮城へ」
数日後、男の子の死体が岸に打ち上げられました。その子の手にはカメが握り締められていました。
その男の子の顔はとても、綺麗で、穏やかで、笑っている様でもありました。
おじいさん「おしまい」
女の子「ねぇ、おじいさん、浦島太郎は死んじゃったの?」
おじいさん「フフフ。でも、とても素晴らしい所に行ったんじゃないかな」
女の子「ふ〜ん。でも、このお話し、わたしが知っているのと違うよ」
おじいさん「ふふ、これが本当のお話し・・・」