彼女が望んでいるのが闇だと知ったとき



真実を知った時には



ボクはもう――――





・・・・・。









CPOK 〜Corpse Party Of Kanon




      eighth:capital punishment








・・・・・。





戸を開けて理科室に侵入する。
独特の、濁った雰囲気があたし達を出迎えた。

「理科室かよ・・・何があるってんだ・・・?」
「わからないわ・・・・」

ただ、さっき聞こえた声から、誰かいないかと入ってみただけなのだから・・・

理科室の中は典型的な作りだ。
流しと、ガスバーナーのついた机。
教室の後ろの棚には実験器具や標本が散乱している。

劇薬は準備室の方にあるのだろうが・・・


「なんだか不気味な所だな・・・」
「そうね・・・」


教室の前の黒板の横の壁に張ってある人体解剖図・・・
本物の血を擦り付けて作ったんじゃないかというくらいにリアルに出来ている・・・。

その、横にある人体模型も、動き出しそうなほどだ・・・


「ん・・・なんだ、これ・・・」


北川君が拾い上げたのは紙切れ。
女子が授業中に手紙を回す時に使うような便箋の一枚だ。

『それでね、その五つのボタンをボタンを右端、左から二番目、真ん中、左端、右から二番目の順番に押すんだよ』


・・・?
何かのゲームの話題だろうか・・・?

だが・・そんなものがこんな所にあるとは思えない・・・

「どういう意味だ、こりゃ・・・分かるか?美坂?」
「・・一応、持っておくわ」

ポケットにねじ込む。

あとは・・・後ろの棚を覗いておこう。
何か、役に立つ物が見つかるかもしれない。
何か危険な生き物がいるようなら、メスくらいは持っておいても損はないだろう・・・

「棚を調べるから、手伝ってくれない?」
「ああ、わかった、美坂。」

北川君の動作はまだちょっとぎこちない。

・・まあ、当然よね・・

苦笑は、出来なかった。



ガタッ



「あれ・・?」

後ろで物音。
きょろきょろと見渡しても、何もいない。

「気のせいかな?」
「気のせいでしょ・・・」

再び、棚の方に――――――


ガタッ


「・・・・」
「・・・・おい、美坂・・」
「何・・・?」
「・・・・人体模型・・・あんな所に、立っていたか・・?」

教室の真ん中に。

「・・・まさか」



ガタッ



「・・・・!!!」
「う、動いてやがる・・・!!」


ガタッ、ガタッ、ガタッ


「に、逃げろ!! 捕まったら殺されるぞ!!」


その声と同時だった。
それは、恐ろしく機敏で・・・

既に、あたしは右腕をねじ上げられていた。





・・・・・。





人体模型が、美坂の腕を捻じ曲げる・・!!
ギリギリという、骨の軋む音が聞こえそうなほど・・・

「っあああっ・・!!!」

うめき声。

「く、くそおっ!!」

意を決して、オレは人体模型に飛び掛かる!!

ガッ、と。

「くあっ・・!!」

弾き飛ばされる。
空いている方の手でカウンターを食らったらしい。
鼻から熱い物がだらだらと流れ出す。

「ちくしょお・・・美坂を放しやがれ、化け物!!」

ガッ、ガッ、ガッ!!

何度も、何度も、何度も・・・!!
拳を奮い続ける・・!!

だけど。


「・・・ひっ・・ああああああっ!!」


ぼきっ


・・・・それは何の音なのか。
頭の中に浸透する前に。

ガグン、と世界が揺れた。

一瞬後には床に叩き付けられている。
口の中に血の味がする・・・


「ち、畜生・・・」


ふらふらと立ち上がる。
足元がおぼつかない。

人体模型は・・・『奴』は両手で美坂の首を締め上げていた。

「み、美坂を・・・はなせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!!!!」

ガッ、ガッ、ガッ!!

いくら殴り付けても、『奴』は微動だにしない。

拳が砕けて、血が吹き出す。
皮が剥けて、白い物が見え出す。
それでも、拳を止めるわけにはいかなかった。

美坂が・・・口を、わずかに動かす。
蒼白に染まった顔で。


『・・・逃げて』と。


「そういうわけに行くかよ・・・!! こうなりゃ・・・これでも・・・!!!」


オレは、すぐそばの机にあったアルコールランプを投げつける。


ガシャン!!


やや、うろたえた『奴』に。




「これでも食らいやがれ・・・・化け物!!!!!!!」


手早く。
ガスバーナーを。


「燃えちまえええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」


ぼおぅんっ!!!!





・・・・・。





窒息感。
息苦しさから、激しい衝撃とともに急に解放される。


「げほっ・・・」


床に手を付いて咳き込む。
目眩。浮遊感。世界がまわっている・・・。

落ち着いてくると、ようやく世界が認識できる。
北川君が・・・立っていた。


「だ、大丈夫か、美坂・・・」


血塗れの手を、差し伸べながら。


「・・・・。」


あたしを救ってくれた・・・・?



・・・その手を。











































・・・ずびゃっ























え・・・?


「は・・・・」


ごぼり。


鮮血が、あたしを濡らした。


生えていた。


手が。


黒く、焼き焦げた、血にぬれた手が。


・・・北川君の、胸から。


「・・・は、ははっ・・・じょうだん、だろ・・・?」


ごぼり。


「・・・に・・にげ・・ろ・・・みさか・・・・」


がくり、と膝を付く彼。


その後ろに立っているのは・・・


・・・・


・・・・・


・・・・・・悪夢は、終わらないの・・・?


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