死者を冒涜する事も。
死者を弔う事も。
全て生者の行い。
・・・・・。
CPOK 〜Corpse Party Of Kanon
13th:reunion
・・・・・。
「相沢君、名雪!!」
保健室を出ると同時に声がかかる。
それが、聞き覚えのある声だった事に安堵する。
それは、抜き身の剣を右手に携えているという点だけが意外だったが。
「香里! 無事だったか!」
「かおり〜っ!」
「・・・あぅ〜?」
一人だけ妙な反応をしている奴もいるが・・・
「そっちはみんな元気そうね。・・・一人、多いみたいだけど。」
「ああ、こいつは殺村凶子って言ってな。歩く人間凶器だ。」
「違うわよ〜っ!! 沢渡、真琴よっ!!」
ぽかぽかぽかぽか!
「お〜、ぬくいぬくい。」
「えいえいえいえいえい!!」
ぽかぽかぽかぽか!
「もうちょっと下の方やってくれ。」
「えいえいえいえいえい!!!!」
ぽかぽかぽかぽか!
「はぁ・・・相変わらず能天気ね・・・まあ、害が無さそうだって事はわかったわ。」
「えいえいえいえいえいえい!!!!!!」
「あ〜、もういい、止めろ。」
頭を右手で押さえつけてやるとリーチが短いせいでとどかない。
手をぶんぶん振り回しながら恨めしそうな視線をこっちに向ける。
「う〜っ・・・!!」
「で、そっちはどうしたの? 北川君は?」
ぐっ、と美坂の表情が翳る。
「北川君は・・・あたしを助けようとして・・・・・」
『・・・・・!』
静寂。
「・・・何てこった・・・」
助けようとして、どうしたか。
言うまでもないだろう。
・・さすがに、かける言葉が見付からなかった。
それ以上に、その事実を受け止める事が出来なかった。
ひょっとしたら、『なーんてな。驚いたか?』と今にもひょっこり現れそうな気がしてならない。
北川が・・・死んだだって・・・?
・・・・・。
「あぅ〜・・・?」
「・・何だよ、真琴」
「う、後ろっ!!!」
「!」
香里がとっさに後ろを振り向き、右手に持っていた剣を体の前に回す。
がきぃっ!!
「あうっ!!」
どさぁっ
「香里っ!!」
2メートルほど香里のからだが宙を舞った。
・・それは。
人体模型に殴り飛ばされて。
・・信じられない。
「祐一っ・・何あれ・・・」
「わからない・・・わからないけど・・・・」
香里の目の前には人体模型。
後ろは大穴。それも、果てしなく深そうな。
それも、かなり大きな。
わたしたちは大穴を飛び越えて助けに行く事も出来ない。
「名雪、さすがにあの大穴は飛び越せないよな・・・」
「・・・人間じゃ無理だよ・・・!」
「三階からまわっていくしかないか・・!?」
「さ、三階は・・この上の階は向こうとは繋がってないのよぅ・・!!」
「・・・何てこった・・!!」
「な、何か投げる物っ」
「包帯くらいしかないぞ!?」
「か、香里っ!!」
・・・・・。
振り向きざまに、ものすごい衝撃が走って――――――
体がふわあっ、と宙に浮く。
それは、とても気持ちのいい感覚だった。
全てがどうでもよくなって、消え去ってゆくような感覚――――
どさっ!!
木の廊下に叩き付けられて、息が一瞬詰まった。
立ち上がろうとしてよろける。
今のだけで相当効いたらしい。
―――女の体って、駄目ね・・・
後ろには大穴が空いている。
前には、殺人人形。
―――決心して、戻ってきたばかりなのに・・・
ぎりぎりと音を立ててこちらへやって来る。
―――役目は、果たさなくっちゃね・・・
「相沢君!!」
渾身の力を振り絞って、剣を投擲する!!
ぶんっ!! がっ!!
「美坂!?」
「・・行きなさい!! それを持って!!」
「行きなさいって・・・お前はどうするんだよ!!
唯一の武器も手放して!!」
「あたしはいいから・・・それは、今のあなたたちに必要なものよ!」
相沢君は黙りこくった。
気づいたのだろう。あたしが死ぬ気だということに。
「香里・・・・」
「・・・何? 名雪。」
「・・・ま、また家に朝ご飯、食べに来るよねっ!?」
「・・・甘くないジャムだけはごめんだけどね。」
言って、にぃっ、と作り笑いをする。
・・・それがあたしと名雪なりの別れの言葉だった。
「・・・相沢君、『校長室』と『焼却炉』・・あと、『音楽室』を探しなさい」
「・・・それは」
悲劇に関連のある場所。
校長先生のいる場所と。
彼女が焼かれた場所と。
そして・・・何故か奏でられるピアノ。
「・・・大丈夫、死にやしないわよ」
「美坂・・・じゃあ、『またな』」
相沢君が向こう側の端の、渡り廊下に手をかける。
音を立てて扉が開き―――――
三人の姿が、消える。
そして大きな音を立ててその扉が閉じて。
―――結構・・・頑張ったわよね・・・
目を閉じた。