青白い炎は哀れな者たち。きっと生者の助けになる
赤黒い炎は憎しみをもって死んでいった者たち。
きっと生者の・・・・・
・・・・・。
CPOK 〜Corpse Party Of Kanon
17TH:vacancy
・・・・・。
校長室のドアノブは赤く錆びついている。
壁にもびっしりと苔がむしていて、特にここだけが拒絶された空間のようだ。
『・・・相沢君、『校長室』と『焼却炉』・・あと、『音楽室』を探しなさい』
その校長室、だ。
香里の口振りからするとここに何か元凶になるようなものでもありそうな感じだったが。
どっちにしろ、この悪夢の終わりは近そうだ。
「祐一・・・わたし、ここで待ってるよ」
名雪が生気の無い声で告げる。
「待ってるって・・・なんで?」
「嫌な予感がするから・・・」
「・・・名雪?」
真琴が怪訝そうな声を上げる。
「ん・・まあ、いいだろ・・・じゃあ、ちょっと調べてくるから」
「うん・・・いってらっしゃい」
ドアノブを開いて、半身を校長室の中に滑り込ませた俺に、真琴が。
「名雪・・・・何か変」
「ああ・・・どうもよそよそしい感じがするんだよな・・」
俺と真琴は校長室の中に入った。
革の豪華な椅子に、普通の教員とは明らかに別物の机。
そこには・・・・いた。
椅子の上に、赤黒い炎の人影。
憎悪の色。
『痛い・・痛い・・たすけてくれぇ・・・』
恰幅のよさそうな、スーツを着た初老の、頭の少し禿げた男性。
野太い声。
「・・・何だ・・・!?」
「何あれ・・・」
『ここまで来たの・・・?』
ふっ、と。
校長室の机の上にあゆが現れる。
「お前・・・!!」
「えっ、誰?あれ?」
『・・・この男はね、死ぬ価値すらないのよ』
すっ、とあゆが右手を動かす。
ぐちゃっ、っと赤黒い人影の頭がはじける。
『ぎゃあっ!!』
「っ!」
だが、その一瞬後にはすぐに再生している。
『何度死んでも・・・』
ぐちゃっ
『うがぁっ!!』
「おい、何を・・・」
『何度も、何度も、何度も、何度もッッ!!』
ぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっ
『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
『何度も何度も死んで苦しみなさいッッ!!
クズがッッ!!』
ぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっぐちゃっ
『お願いだ・・・殺してくぅれぇぇぇ・・・・』
『駄目・・・お前は苦しむの・・・永久に』
「や、やめてあげなさいよぉ!!」
『何・・・?』
あゆが、憎悪の視線をこっちに向ける。
『私の苦しみも知らないで・・分かったような口を・・・』
「だからって・・・お前のやってる事はただの八つ当たりじゃないかっ
俺や名雪や・・・北川や香里、あゆ、真琴たち関係無い人を巻き込んで何をしてるっていうんだよっ!」
『・・・あなたたちも・・・・死んで苦しみなさいッッ!!』
あゆの姿が虚空に掻き消える。
赤黒い人影も。
どぅんっ
「・・・!! 壁が・・・!!」
「あぅ〜っ、待ちなさいよ〜っ!!」
ミシミシッ
お約束の展開といっていいものか。
校長室の左右の壁が。
ミシミシッ
「くそっ、真琴! 早くここから出るぞ!」
「待って・・・机に何かあるかもしれない!」
「おい! そんな暇は・・・」
制止の声も聞かず、真琴は机の方に駆け出していく。
ひときしり机の中を引っ掻き回して。
「祐一、鍵が一個あったよ!!」
「よし、もういいから戻ってこい!時間がない!!」
もはや壁は両腕を広げられないくらいまでに圧迫してきている。
俺はドアノブをひねって――――――
「―――!?」
「ど、どうしたのよっ、はやくあけなさいよっ!!」
「あ・・・あかねぇっ!!!ドアがっ!!!」
「ええ〜っ!?」
折れてない方の左肩から思いっきりタックルをしても、戸が開かない・・・!!
これは、向こう側から誰かが押さえつけているような・・・!!
「名雪っ!! そこにいるんだろっ!! 開けてくれっ!名雪ぃ!!!」
「何してるのよぉ〜!!」
二人で思いっきりドアを叩いても何の反応も示さない。
これは・・・寄りかかって寝ているとか・・そういうレベルじゃないぞ・・!!
「畜生っ!!」
壁はもう俺の肩幅ほどまでに迫ってきている。
俺は左腕に、剣を持って・・・
「開けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
がっ
・・・・・。
あっけなくドアが開く。
俺と真琴はもつれ合うように校長室から転がり出る。
後ろで、壁が完全に閉じる音が聞こえた。
「はぁっ・・・助かったっ・・・」
「一体どうなってるのよぉっ・・・名雪ぃ・・・!?」
名雪は居なかった。
「・・・・・・・・・・・名雪?」
・・・その後、行ける所をくまなく探したが名雪は見つからなかった。
・・・・・。
「どうなってるんだよ・・・」
「祐一・・・これ・・・」
途方に暮れる俺に真琴が小さな鍵を差し出す。
金色の、ごく小さな。
「・・・これ、なんだ?」
「さっきの校長室で見つけたの・・・」
それにしても、小さい。
どこかの教室の鍵ってわけではなさそうだ。
「何の鍵だ・・・?」
「よくわかんないけど・・・ピアノとか・・・・」
「ピアノ・・・?」
そういえば、見たことがあるような気もする。
音楽室においてあるようなピアノには鍵がついていたはずだ。
何の手がかりも無く、すがるような気持ちで鍵を見つめ、音楽室に足を運ぶ。
・・その鍵は、グランドピアノにぴったりとあった。
軋んだ音を立てて蓋を開く。
そこには見慣れた鍵盤があった。
「・・・・ピアノか・・・」
指を滑らせる。
血肉腐臭の音楽室に、音を。
「祐一、ピアノ弾けるんだ・・・生意気ーっ・・・」
「昔、少しやってたからな・・・」
雪の少女という曲を。
「・・ねぇ・・さっき・・・校長室で閉じ込められて、壁が迫ってきたとき・・・」
「ああ・・・」
「扉を開かないように押さえていたのって・・・・名雪じゃないよね・・・」
「・・・当たり前だろ・・・? あいつが・・そんな事するもんか・・・」
「俺は、信じてる」
・・・・・ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ、ぶぅんっ・・・・
「わ・・・・・」
「これは・・・・!!」
音楽室いっぱいに。
青白い人魂が。
「これ・・・みんなあの子に殺された人たちなの・・・?」
「酷いな・・・・」
人魂達が流れ、道を作る。
音楽室に空いた大穴の中に向かって、階段をつくる。
「・・・・俺達を導いてくれるのか・・・?」
「・・・いこ、祐一・・」
真琴が、穴の中に一歩を踏み出す。
足元の人魂は、布団か何かのように柔らかい感触だったが、崩れてそのまま下に落ちるなんてことはなかった。
「俺・・高所恐怖症なんだけどな・・・」
「祐一ーっ、はやくしなさいよーっ」
そして・・・・俺達は青白い階段を降りてゆく・・・