思い出はどこにも残らず
起きなかった奇跡が
牙を剥く
・・・・・。
CPOK 〜Corpse Party Of Kanon
18th:concentration
・・・・・。
薄暗い中をどこまでもどこまでも降りて行く。
奈落の底まで続いているかのような階段。
そこに・・・・
「ねぇ・・祐一・・・あれ・・・」
「・・・名雪・・。」
行方不明になっていた名雪が、いた。
ゆったりとした足取りで階段を降りてゆく。
「おい、名雪! こんな所にいたのかよ・・・心配したんだぞ」
ぴたり、と名雪の足が止まった。
「・・・名雪?」
ゆっくりとした動作でこっちを振り向き――――
ごとり
「・・・・!!!!!」
落ちる。
「な・・・名雪・・・・」
首が。
名雪の首が。
名雪の右腕が。
名雪の左腕が。
名雪の右足が。
名雪の左足が。
名雪の胸が。
名雪の・・・身体が。
「ゆ、祐一・・・・!!!」
ぼうっと。
名雪のパーツから、赤黒い光が滲み出す。
それは・・・・一つの形になる。
・・・あゆ。いや、『彼女』。
「畜生・・・!!! 名雪はあいつにとっくに殺されてたってことかよ・・・!!!!」
「祐一っ、しっかりして・・!」
「おあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
怒りで、視界が赤く染まった、そんな気がした。
剣を放り出して。
気がつくと、俺は長い階段を転げるように駆け出していた。
「殺す・・・・殺してやるっ!!」
ダダダダダダッ!
だが、『彼女』も階段を降りてゆく。
一段ずつゆっくりと降りているような挙動。
だが、差が縮まらない・・・!!
「待て・・待ちやがれっ!!!」
「ゆ、祐一!?」
ダダダダダダダダダッ・・・!
いつの間にか、足元は平たい通路になり―――――――
「・・・・った!!!」
肩に手が、届いた。
「!!」
「おおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
走ったその勢いのまま、首に手をかかって押し倒し、『殺し』にかかる。
がふっ、と『彼女』が咳き込む音が聞こえた。
「死ねっ・・・死ねぇっ・・・!!」
「・・・・!!」
『彼女』の手が激しく振りまわされ、俺の顔を爪がかすめる。
暗がりで、『彼女』の苦悶の表情は見えない。
俺は、手に全体重をかけて、喉を潰す・・・!!
「畜生・・・名雪を返せぇぇぇぇ!!」
「・・・!!」
「・・・・っ!!」
「・・・!」
・・誰だ、耳元で怒鳴ってるのは・・・。
真琴か?
うるさい・・・邪魔しないでくれよ・・・後少しでこいつを・・・!
―――世界が反転した。
ふわりとした感触と、全身が悲鳴を上げる感覚。
息がつまり、視界が白濁して何も見えなくなる。
――投げ飛ばされたんだ。
――でも、誰に?
「ぅ・・・くぅっ・・・」
起き上がろうとした俺の首筋に冷たい金属が押し当てられる。刃。
「・・・動かないでください・・・!!」
「・・・誰だ・・?」
「栞っ、大丈夫!?」
「・・・っ・・げほっ、げほっ・・・」
・・・栞、栞って誰だ?
それより、この俺の目の前にいる人は?
「・・・一体、どうしてこんなことをしたんですか・・・祐一さん・・!」
初めて聞いた、その怒気をはらんだ声。
・・・佐祐理さん。
「・・・・」
口を開けても、声が出ない。
何が何なのかわからなかった。
たっ、たっ、たっ・・・
「ゆういち〜っ!! まちなさいよぉ〜っ!!」
「・・・真琴?」
「一体何なの・・・相沢君・・・!!!」
激しい、声。
こいつのこんな声を聞いたのも初めてだ・・。
香里。
「・・・俺はっ・・・名雪を殺した奴をっ・・・」
「栞が名雪を殺したって言うの?」
「・・・・何だって?」
顔を起こして咳き込んでいる少女を見る。
暗闇に慣れた目には全身包帯のその姿からも容易に想像がついた。
・・・あの転校してきた頃に、出会って、それっきりの少女。
美坂栞・・・だったか。
「・・・何がどうなってるんだよ・・・」
『ちっ・・・後少しでその小僧も憎悪に取り込めるところだったものを・・・』
「・・・・分かりやすい説明ね・・・」
「・・・?」
・・・・・。
・・・少し落ち着いてから祐一たちは、お互いの状況を確認しあった。
・・・美坂栞と、倉田佐祐理、沢渡真琴。
出会いの経緯。
・・・北川潤と、水瀬名雪。
その、死を。
そして、ここに来るまでを。
そして、自分達が何をすべきなのかを。
「・・・どっちにしろ・・生き残ったのは五人だけか・・・」
「何人もの死んだ人たちを見ました・・・佐祐理たちがここまで来れたのも、よほどの幸運だと思います・・でも・・」
「ああ・・・畜生・・・名雪、北川・・・!」
「・・・相沢君・・・今だけはそのことは忘れなさい。・・・また、そこをつけこまれるわ。」
「だからって・・・!!」
パシィーンッ
「か、香里・・?」
「お姉ちゃん・・・祐一さんは怪我をしてるんですから・・!」
頬を押さえて呆然とする祐一。
「・・・名雪の仇を討ちたいんなら・・・今だけはそのことは忘れなさい・・・」
香里もまた、泣いていた。
気まずくて俯く祐一。
「・・・・・・・。」
「・・その剣は相沢君が持って。倉田先輩は自分の武器があるし、片腕が折れてるとは言ってもこの中で一番力があるのは相沢君なんだからね・・・」
「・・・ああ、わかった・・」
真琴から剣を受け取る。
俯いたままだ。
「じゃあ・・行きましょう・・・」
『行かないで・・・』
「・・今の、誰?」
『行っちゃ、ダメだよ・・・』
蒼い光が漏れ出る。
それは、血だまりの中に沈んだ・・・
・・・月宮あゆ。