祈りよ――――――
願いよ――――――
・・・・・全ての生ける生けとし者に、届け!
・・・・・。
CPOK 〜Corpse Party Of Kanon
20th:battle
・・・・・。
・・・ぐしゃあっ
『・・・何だと』
振り下ろした剣が、悪霊たちの胴体を貫いている。
剣を持っているのは、祐一。肩を激しく上下させて荒い息をついている。
「はぁっ・・・はぁっ・・・・」
「ぜぇっ・・・」
香里たちも突如、激痛から解放され、肩で息をしている。
悪霊集合体は驚愕していた。自分を傷つけることのできるものの存在。
『何だ・・・その剣はぁぁぁぁ!!! 霊に触れることなどッ!!!!』
「・・・私自身。」
壁に飲み込まれている舞が呟く。
誰に聞かせるでもなく。
「祐一・・・頑張って・・・」
「・・・舞・・・やっぱ、これは舞の使ってた・・?」
壁に埋め込まれたまま、舞が微妙に動く。
肯定。
『くそっ・・・貴様等・・・直に叩き殺してやる!!!』
悪霊が吠える。一瞬、身が竦んだ。
「ぁぁぁぁっ!!!!」
「舞っ!?」
舞の身体が電流を流されたようにびくり、とはねる。
この場所、この学校、この空間は全て彼女の力で作られているのだから。
その舞の身体を操る悪霊達が、そう命じたなら。
「ゆ・・いち・・・危ない・・・!!」
「くっ!!!」
頭で考えずに、ただ前のめりに跳ぶ。
ドスドスッ
肉の刃が。壁が、変形して出現してきた肉の刃が。
祐一がついさっきまで立っていた所に刺さる!
「・・・反則だろ・・・そりゃ・・・!」
走り、片腕で剣をふるって斬りつける!
だが、手応えは浅い・・・! やはり、片腕というハンデは大きい・・・!
「くそっ・・!!」
『オオオオオォォ!!』
悪霊が再び吠える!壁が変形し肉の刃が、少女達に降り注ぐ!
「ひゃあっ!!」
「くっ・・・!!」
「うわっ!!」
佐祐理、香里、栞は素早く身を躱す。
ただ・・・真琴が。
「何やってるんだ、真琴! 避けろおっ!!」
「・・・・・なのよ」
動かない。頭上から刃が迫りくる。
ただ、うつむいたまま、何かを呟いている。
―――何言ってるんだ!? 聞こえてないのか!?
「真琴ぉ!!」
『死ねェ!!!』
「出そうなのよ」
ドスドスドスッ
「・・・あ・・・真琴ぉ・・・!」
刃が、真琴の立っていた場所に突き刺さった。
赤いものが、はじける。
・・でも、それは血じゃない。
「『出た』わよっ!!」
真琴が立っていた。
炎の壁を前に。肉の刃を壁で防いでいるように見えた。
「沢渡さん・・・!?」
「そうそう・・ずっと心に引っかかってたのよねー・・・」
確かに真琴が立っていた。
ただ、頭と腰に変なアクセサリーを付けているように見えた。
「『これを忘れてた』のよ!!!」
狐の耳と・・・九尾。
よく、何かの物語に出てきそうな姿。半獣人。
「えいッ!!!」
真琴の掛け声とともに。
ゴオオオオオオォォォォォォォォォォ
炎が、吹き上がる!
「・・・嘘だろ・・・!?」
『何だこれはァッ!!!』
「・・妖狐って奴がいるのよね・・・不愉快な呼び名なんで、今の今まで忘れてたけど・・・!」
「妖狐って・・・嘘」
香里が呟く。
同時に、もう一つ変化が。
「・・・佐祐理も・・・何か・・・!」
戦いの場になったここで。目を閉じて。
さっきの真琴と同じように、うつむいている。
「佐祐理さん・・!? まさか、佐祐理さんまでその『妖狐』とかいう奴だったとか・・!?」
「ふぅぅぅぅぅ・・・・・・!!!」
呼吸の音が聞こえる。
「け、剣が光ってますよっ!!」
「あ・・も、もう何があっても驚かないぞ」
佐祐理の、フェンシングの剣が。
淡い光を帯びていた。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
かっと目を見開き、そして一閃!!!
もちろん、届く距離ではない。だが。
ばしゅぅぅぅぅぅ
光の刃が、現れた!
光の刃が、悪霊を切り裂く!!
『・・・この力・・・!! あの小娘が!!!
月宮、あゆぅぅ!!』
再び、悪霊が雄たけびを上げる。
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「また・・・舞ぃっ!!」
吠えると同時に、舞が苦しみ―――
今度は。
「ド、ドリルかよっ!?」
「避けられるのっ!?」
ズバッズバッズバッ!!!
足元、至る所に錐が吹き出る!!
祐一はとっさに身を翻して懸命に串刺しになるのを避けるが・・・!!
――これは・・・よけられねぇっ!!
無理矢理、身を捻る!それでも。
ずばしゅっ
「うわっ・・・・!!」
「祐一さん!」
肩を押さえて倒れ込む祐一に栞が駆け寄る。
「危ない・・・栞、来るな・・・!」
「私も・・・・何かできそうですから!!」
栞の両手のひらが光った。
祐一の肩に、光を押し当てる。
「嘘だろ・・・・」
肩が治っただけでなく折れた腕も、動いた。
何の痛みも無い。
「あたしも、よ。相沢君。」
いつのまにか祐一のそばにきていた香里が、祐一の胸に手を当てる。
「何だ・・・!?」
「・・・頑張って・・これしか出来ないけど」
祐一に、蒼い光がともる。
手に持つ剣が、強い光を発するようになる。
「これは・・・!!」
思うより早く。疾る。体の中に、力があふれる感覚に押されて。
普段からは考えられないような速さで走る自分の体に、祐一自身も戸惑うが。
・・前傾斜勢になりながら剣を構え。
「おりゃあっ!!」
突く!!
ずぶりっ
剣の柄まで、めり込む。
『ぐあああぁぁぁぁぁぁ!!!!』
悪霊達が、苦悶の声を上げる!
「これなら・・行ける!!」
同じく、蒼い光を纏った佐祐理と真琴が強烈な打撃を加えてゆく・・・!!
少しずつ、少しずつ悪霊たちにダメージを与えていく・・・!
「・・・今なら!!」
壁に向かって、走る!
『貴様・・・何をするつもりだ・・・!!』
「決まってんだろ・・・!」
『させるかあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
肉の刃が。肉の錐が。
雨あられと祐一に降りそそぐ!!
「させないのは・・・・!!」
「こっちです!! 祐一さん・・・舞を!!」
その攻撃を佐祐理が一閃し、真琴が焼き払う!!
「舞を助けてくださいっ!!」
「舞ーーーーーーっ!!!」
舞を包み込んでいる壁を、斬る!!
ずばしゃぅっ
「・・・・ぅ!!」
「大丈夫か・・って・・」
はじき出されるように地に倒れる舞。
その姿は当然の如く・・・裸だ。
「うわ・・裸・・?・・あ・・・舞・・・」
「祐一・・・剣を」
起き上がり、右手を突き出す。
こんな時でも慌てる祐一と、対照的な舞。
剣を祐一から受け取ると、悪霊に向かって駆け出す。
舞の支配を失った以上、刃や錐を出すことはできない。
『・・・そんな!! く、来るなぁっ!!』』
「私を弄んだ事・・・・」
舞が跳んだ。
「私の力を・・・」
尋常ではない。10メートルはゆうに、飛んでいる。
「私の友を・・・!!」
剣を、振りかぶる!!
「ざっ・・・・・・」
『・・・・・!!!」
悪霊の集合体が、とっさに分裂して逃げようとする。
だが。
「せいッッッ!!!!!!!」
ぶしゃあっ
『うぐ・・・・・』
一筋の、光。
『貴様等・・・貴様等だけは・・・生きては・・・帰さんぞォォォォォォ!!!!!』
光が、悪霊の中から。
『ォォォォォォォォォ!!!』
―――爆発。
しゅごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!
「うわっ・・・」
「目が・・・!」
その閃光の中で。
祐一は。
佐祐理は。
香里は。
栞は。
真琴は。
舞は。
その、双眸は見た。
光の中・・・・
自分達の中の月宮あゆと『彼女』が消えてゆくのを・・・・
天使の翼を持った少女二人が・・・
「・・・・・ありがとう・・・」
「ありがとう・・・さようなら・・・・祐一君・・・・」
21話へ…
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