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真昼の光は嘘をつく。 幸せだけの街を描く。 ベンチに腰掛け、そんなことをぼんやりと考える。 よく晴れた日の陽のあたる丘公園は、幸せの見本市のようだ。 はしゃぐ子供を見守る母親。 犬を休ませ語る恋人。 自分にはあんな風に誰かと話すなんて絶対に無理だよな、とやや自嘲気味に考える。 お互いをただ一人の相手だと想い定めているような、そんな雰囲気。 バイオリズムが低下しているのかもしれない。 今日はどうも調子が悪い。 こんなにいい天気なのに、しみじみと孤独を噛み締めていたりするのだから。 噴水がきらきら光る。 陽光を反射して、うるさいくらいに輝いている。 そのまわりをはしゃぎ回る子供たち。 少し離れたところで若い母親達が談笑しながら見守っている。 犬を連れて芝生の上で仲睦まじく語り合う二人。 ここに来たのは失敗だった。 そう思いながら目を閉じて真昼の光景を追い出す。 まぶたの上に暖かな陽射し。 それとは裏腹に胸の奥が重く冷たい。 どんな時も、誰といても、それは常にどこか深い処に潜んでいる。 胸郭が圧迫されるようなその感触を、きっと淋しいというのだろう。 幸せそうな遠いざわめきが耳朶に届く。 ただ一人。 世界から切り離されたようだ。 寄り添うような 「…アレフ?」 気配と声 目を開けると、見慣れない立ち姿。 「だよな? …よかった」 なにが良かったのか、相手は軽く微笑む。 「一度ちゃんと礼を言っとかないとと思って…」 意味不明なセリフを言いかけて口をつぐんだ。 少々不安げな眼差しになって。 「アレフ・コールソン? …違うのか?」 そうだと頷くと、先のような微笑を見せた。 「なんだ、そうか。じゃあ、俺のこと誰かわかんなかったんだな」 悪いが綺麗な女性ならともかく野郎なんざいちいち覚えちゃいない。 と、ぱしりと脳裏に映像が走る。 血溜まりに倒れ伏す、茶色い髪の異国の青年。 「…あ、確か、アリサさんが」 我が意を得たりと深い微笑を浮かべた彼の黒瞳を見つめ返す。 座っているおかげで前髪の下の素顔がよく見えた。 「うん。あんたが運んでくれたって聞いたんだ」 正確には運ばされたのである。 まあ、その場に駆けつけたのがあの面子ではそれも致し方ないが。 「助かった。ありがとう」 唇から発せられる音は正確で、聞くだけなら何処か遠い処から来たのだとは思えない。 まだ襟や袖から包帯を覗かせる彼の名を何といったろう。 人づてに聞いた覚えがある。 そこにシーラがいたので楽の音のような響きだと感想を述べたはずだ。 確か… 「リィ・リュウウェイ…だったよな」 「李劉尉」 言い直した微笑が苦笑になった。 「リィでいいよ。こっちの人には俺の名前は難しいみたいだから」 彼の言うとおりだ。 肩をすくめてみせて、空いた隣を手振りで勧めた。 「もう起きてもいいのか?」 記憶では彼の怪我は相当ひどかった。 「ああ。リハビリ兼ねて散歩してるところだ」 ベンチに腰掛けて屈託なく彼は答える。 先程までのやや他人行儀な笑顔から一歩進んだ明るい表情。 「この街の地理も少しは知っておきたいしな」 言ってから噴水の照り返しに目を細め、 「いいとこだな」 「こういう天気の良い日は特にそうだぜ」 「らしいな。なにせ『陽のあたる丘』公園だろ?」 「そうそう」 彼が可笑しそうに笑うので、一緒になって笑った。 自然に笑えた。 気分が軽くなって、世界はその垣根を取り払ったように見えた。 「よーし。ここで会ったのも何かの縁だ」 力強く宣言。 「俺が案内がてらナンパスポットを教えてやろう!」 「………は?」 目を丸くした彼の肩に腕を回して一緒にベンチから立ちあがる。 「いや、あの、俺は別に…」 言いかけた彼の言葉に構わず歩き出す。 「いいからいいから。遠慮なんてすんなよ」 「だから遠慮じゃなく」 「いーっていーって」 「あのな、おい、人の話聞けよ!」 もちろん引きずる彼の抗議には耳を貸さない。 あとからトーヤ医師に怪我人に無理をさせるなと叱られるかもしれないが。 またあの感触を味わうのは御免被りたかった。 後にした真昼の公園には 幸せそうな光景 ■終■ |
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真昼の光は 嘘をつく 幸せだけの 街をえがく はしゃぐ子供を 見守る母たち 犬を休ませ 語る恋人 真昼の光は 嘘をつく とてもじょうずな 絵をかいてる 私はとても 淋しかった どんな時でも 誰といても 遊び戯れ 疲れて眠る 人形たち ガラスの街で 私はとても 淋しかった あなたをずっと さがしていた 光の渦に かくれていても 近くにいる あなたを感じる わたしはここよ みつけにきて 見えない道を さがしあてて 私はとても 淋しかった あなたをずっとさがしていた 真昼の光は 嘘をつく とてもじょうずな 絵をかいてる 真昼の光は 嘘をつく とてもじょうずな 絵をかいてる |