夜毎眠りに就く前に





夜毎眠りに就く前に、いつも想うことがある。
せめて夢の中で逢えたらと。




今日も一日、無事に生き延びたことに安堵しつつ、寝室の扉を開ける。
寝室には寝台以外なにもない。出入り口から寝台が直接視界に入らないように、視線を遮る目的の衝立すらもない。
おかげで室内の様子がよく見えた。寝台の上にいる人の姿も見て取れた。
ため息をつく。すっかり日課になってしまったその仕草を、意識することなく。
寝台に勝手にあがっていた女を(見覚えがあるような気もしたが、深く考えなかった)部屋から追い出したところで、再びため息。
やはり日課になってしまった仕草でばたばたと窓を開けていく。
脂粉の匂いで胸が悪くなりそうだと、これも日課になってしまった感想を胸の内で呟きながらすべての窓を開け放つ。
夜風が通ると匂いが薄れてだいぶ気分が良くなった。多分気分が悪くなったのも良くなったのも気のせいなのだろうが、悪いよりは良いほうがいい。
あんな変な匂いのするものを四六時中つけているなんて、女というものは全くわからない生き物だ、といつものように声には出さずにつぶやく。
女の匂いが移ってしまっただろう寝台になど寝転がる気はさらさら起きず、柔らかな夜風に惹かれて窓枠に寄りかかる。
夜風は濃い緑の香りがした。
化粧の匂いなどよりよほどいい、と満足げに目を細める。
しばらくそうやって、窓枠にもたれ夜風にふかれるまま、見るともなしに植木や夜空を眺めていた。
いつものことだ。
ここに戻ってきてから日課になってしまった。
そうして夜半過ぎまで窓辺で過ごし、とうに化粧の匂いの消え失せた寝台に、そっと滑り込む。
枕の下に抜き身の刃を忍ばせ、自らの頭は重しにならないよう少しずらした場所に落ち着ける。
どうせ夜明け近くになれば目が覚める。眠りは短く浅いものだ。あの西の町を離れて以来、加速度的にそうなった。
そのせいかどうか、最近全く夢をみない。
現で会えないものならばせめて夢でと思っているのに。
この息の根が止まってしまうその前に、夢でもいいからもう一度と。
目を閉じ、眠りに落ちるまでに、日課というにはあまりに痛い、切実な願いが胸に去来する。




夜毎眠りに就く前に、いつも想うことがある。
せめて夢の中で逢えたらと。


・・・オヤスミナサイ・・・



突発的に書き上げました。
里帰り中のリィです。日本語は主語がなくても書けるのです。
とりあえず彼は実家では重要人物なので夜這いにくる人もたくさんいるのです。
彼がもう一度ゆっくり眠れる日は来るのでしょうか(だんだん怪しくなってきたよ…)


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