未来に続くエピローグ@「別れ」

それは些細な事から始まった。なんでもない出来事。
たまたまメリダ基地にいた宗介はテッサに頼まれ、日本に帰る時間を遅らせて、彼女の書類整理を手伝ったのだ。
かなめとの食事の約束を破って……。
日本に帰った宗介は、顔面蒼白でかなめに謝罪した。かなめもいつものことだし、仕事だからと言って許してくれた。テッサの名前を出すまでは。
「ソースケ!テッサと何をしてたって言うのよっ!あたしとの約束より大事な事なの!?」
「いや…そ、それは…言えない」
「何でよっ!?」
宗介はうつむきながら言葉を吐き出す。
「軍の…機密だからだ」
かなめは険悪な空気を辺りに撒き散らせつつ、怒りの表情で怒鳴る。
「別にあんたとは付き合ってるわけじゃないけどっ!でも…それでも軍隊が、テッサの方が大事なの!?」
「千鳥…?」
「あんたなんかもう、どっか行っちゃってよ!顔も見たくない!なんで…なんであんたはあたしの前に現れたの!?なんであたしに中途半端に優しくするの!?あんたはあたしの何なのよっ!?」
宗介はかなめの勢いに困惑した。何かおかしい、いつものかなめとは違う。
「落着け、千鳥。今日の君はおかしいぞ」
「あたしはいつだって落着いてるわっ!任務だ、機密だって聞き飽きたのよっ!もういいでしょ…わかったらさっさと消えてよっ!!」
かなめは冷静さを欠いている、そう判断した宗介はおとなしく彼女に背をむけて呟く。
「千鳥…すまなかった」
愕然と肩を落とす宗介の後ろ姿を見送りながら、かなめは激しい自己嫌悪に陥っていった。
宗介が約束を破ったのは確かにかなめが腹を立てている原因の一つだが、相手がテッサというのが特に許せなかった。
(テッサはずるい…あたしが知らないソースケをいっぱい知ってる…ずるい)
かなめもテッサの知らない宗介を多く知っているのだが、今の彼女はそれに気が付かなかった。
「でも…言いすぎちゃったかな…。でも、ソースケも悪いのよっ!…きっと、そう…」
かなめが自問自答を繰り返していると、恭子が小走りで近づいてくるのが見えた。たどり着くなり、恭子はかなめに小声で話しかける
「ねえねえ、カナちゃん。相良くんと何かあったの?彼、すごく落ち込んでたよ」
「キョーコ…。別に…」
「そう?」
かなめは少し間を置いて、静かに続ける。
「ねえ…キョーコ。何で、人を好きになるのかな?…苦しむってわかってるのに、何で誰かを好きになるのかな?自分とは違う世界の人間だって知ってるのに…何で、好きになるのかな?なんでだと思う?」
突然のかなめの言葉に恭子は困惑したが、やがて宗介の事と気付いて言葉を選んで言う。
「カナちゃん…。わたしは何て言っていいのかわからないけど…でも、さ。相良くんと一緒にいる時のカナちゃんって、すごく輝いて生き生きしてると思うよ。カナちゃんはいつも綺麗だけど、もっと綺麗に見えるんだよ」
「キョーコ…」
「あとは…カナちゃんが自分で考えなきゃ、ね?」
「うん…ありがとう、キョーコ」
「じゃあね」
恭子はそう言うと、振り返らずに去って行く。必要以上に親友面をしない…かなめもそうだ。
かなめは恭子の言葉を考えてみた。そして、気付く。宗介といる時の自分はとても楽しいのだ。
(ソースケに謝ろう!あいつは謝ったのに、あたしが意地を張って許さないのは心が狭いしね〜、うん。今回は特別に…)
「謝らなきゃ!謝らなきゃ!」
かなめは気持ちを決めると、足取りも軽く同じ言葉を繰り返しながら宗介のマンションへと向う。その時、突然背後から声をかけられた。
「まあ、いいんじゃねえの?謝らんでも」
「え…?」
聞き覚えのある声にかなめが驚きつつ振り返った瞬間、衝撃が彼女を襲う。かなめが気を失う前に、男のからかい口調の声が聞こえた。
「くくくくっ!さあ、パーティの始まりだぜっ!」

<続く>

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