未来に続くエピローグB「失格」
かなめが拉致された日の翌朝。
静かだった<トゥアハー・デ・ダナン>が、突如慌しくなった。
日本で<ミスリル>が以前からマークしていたテロ組織がASを使い、辺りを破壊しているという情報部の報告があったのだ。
しかも、何故かほとんど住民のいない山奥で。これはあきらかに―――
「挑戦ね…」
中央発令所の艦長席に座り、報告を聞いていたテレサ・テスタロッサは小さく呟いた。
「左様ですな。いかがしましょう?」
「こんなあからさまな挑発に乗るのは本意ではないのですが…仕方ないですね」
カリーニンの問いかけに、テッサは渋い表情で答える。
テッサとカリーニンが今後の細かい作戦を練っていると、さらに詳しい情報が入ってきた。
「なんてこと…」
「いかがしました?大佐殿」
報告書を穴が開くほど見返し、顔色を変えたテッサに、カリーニンが問いかけた。
大きなため息を吐いて、テッサはカリーニンに紙を渡す。
「友人よ……」
そう。そこに書かれていたのは…『敵ASの搭乗者、チドリ・カナメ』……。
かなめとの喧嘩の後、もやもやした気分が晴れないまま宗介は緊急の呼び出しを受け、<デ・ダナン>に来ていた。
「諸君、今回集まってもらったのは……」
作戦会議中、カリーニンの話しをうわのそらで聞いていた宗介の耳に、意外な言葉が入ってくる。
「チドリ・カナメ…」
「千鳥っ!?」
思わず叫び声を上げた宗介に、一同の視線が集まった。しかし、かまわず宗介はさらに叫ぶ。
「少佐殿!千鳥が、千鳥が何を!?」
カリーニンは厳しい表情で宗介を見詰め、いつもと変わらない声で続けた。
「敵の黒いASに乗っているのが、チドリ・カナメと言ったのだ。聞いてなかったのか軍曹?」
「そ…そんな、馬鹿な…」
呟くなり、宗介は駆け出す。その背中にカリーニンの叱責が飛んだ。
「馬鹿者!どこへ行く気だ、軍曹!会議中だ」
「お、俺は行かねばなりません、少佐!千鳥が、千鳥がっ!!」
「落着け、軍曹」
カリーニンは周囲の者に宗介を抑えつけるように命じ、厳しい口調で決断を下した。
「軍曹、冷静さを欠いた兵士は使い物にならん。今回の作戦には軍曹は使えない、残ってもらおう」
「な…少佐っ!?」
「残ってもらおう、自室で待機しているように」
厳しい表情を崩さないまま、有無を言わさぬ気迫でカリーニンは言った。愕然としたまま、宗介は自室に渋々と戻って行く。
「あ、俺付いてきまーす」
「いいだろう。行きたまえ、ウェーバー軍曹」
宗介の近くにいたクルツが思わず声を上げ、後を追っていった。二人が去った後、カリーニンはその場の一同を見渡し、重々しく告げた。
「以上で作戦会議は終了する。各員、出撃準備にはいるように。解散」
重苦しい雰囲気を残したまま皆が解散した後、マオは残ってカリーニンに詰め寄った。
「少佐、どういうつもり?敵のASは宗介の機体に似ているんでしょ?じゃあ、『あの力』を使うんじゃ…」
食いかかってくるマオに、カリーニンは冷静に答える。
「そうだ、マオ曹長。敵はおそらく『ラムダ・ドライバ』を使うだろう」
「じゃあ、何故?宗介が必要でしょ!?」
「わかっている。私が言ったのはもちろん本心ではない。サガラ軍曹が今回の作戦に欠かせないのも事実だ。後は…『戦友』次第だな」
カリーニンはそう言って、マオから離れ去って行った。一人残されたマオは呆然とした顔で呟いた。
「戦友…クルツの事?じゃあ…余計に心配だわ…」
<続く>