未来に続くエピローグC「戦友」

クルツと共に自室に引き上げてきた宗介は、呆然として椅子に座り、低い天井を見上げていた。
見かねたクルツが、いつもの軽い調子で話しかけた。
「おい、ソウスケ。お前、カナメちゃんと何かあったんじゃねえか?」
「む…ああ…」
宗介は半ば放心状態のまま、ポツリポツリと話し始める。
テッサとの事、かなめに説明して謝罪した事、だがなぜかかなめが怒りだした事。
宗介の話を静かに聞いていたクルツが、しばらく考えた後呟いた。
「なるほど…」
「理解できるか?」
宗介は同僚を真剣なまなざしで見詰めた。
「いいか?よく聞け、ソウスケ。カナメちゃんはお前と常に『ゼロの距離』でいたいんだ。なのにお前が任務だ、機密だって言うたびにそこに『溝』が出来る。話を聞いた限りじゃ、今まで我慢してきたものが今回爆発したってことみたいだな」
「そ…そんなものなのか。俺が、やはり…悪いのか」
「まあ、一概には言えねえけどよ。んで、お前はこれからどーすんだ?」
宗介は考えた。迷うことなどないのだが、しかし……。
「俺は千鳥のところに行かねばならない、だが…」
「だが、何だよ?」
「出撃命令が…ない」
バキィ!
宗介が言った瞬間、クルツのこん身の力を込めた拳が頬にめり込んだ。宗介は吹っ飛び、ベッドにぶつかる。
「な、何を…」
クルツは倒れた宗介の胸倉を掴み、無理やり立ちあがらせて叫ぶ。
「まだわかんねえのか、お前はっ!!いいか、『命令』じゃねえ!『任務』じゃねえんだよっ!お前が…サガラ・ソウスケが何をしたいのか、カナメのために何が出来るのか、よく考えやがれ、馬鹿野郎っ!!」
荒い息を吐いて、クルツはもう一度宗介を突き飛ばす。
「先に行くぜ、ソウスケ。もし、お前が来なかったら…もう『戦友』でも『同僚』でもねえ。お前はただのクズ野郎だ」
そう言い捨て、クルツは振り向きもせずに部屋を出て行った。
宗介は彼の背中を見送りながら、痛む頬をさする。痛みよりも悔しさがこみ上げてくる。
(俺は…どう…すれば、いいんだ?)
自分だってわかっているのだ。かなめのところに行かねばならない。だが…
(千鳥…俺は、俺は…どうすればいいんだ?教えてくれ…)
すがるような視線を天井に向け、目を閉じた宗介の脳裏にいつものかなめの笑顔が浮かんでくる。
「ソースケっ!何やってんのよ、あんたはっ!ホントにもう、馬鹿なんだから」
(千鳥!)
彼女を強く思った瞬間、宗介は駆け出していた。
(千鳥の言う通り、俺は馬鹿だ!『命令』が何だ!?『任務』が何だと言うのだ!?俺は…相良宗介は千鳥かなめを助ける!)
宗介は向う、一路格納庫へと。行かねばならないのだ、守るべきものがそこにあるから……。

<続く>

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